糖尿病の薬が脂肪肝に効果

2025.06.30
 SGLT2阻害薬(SGLT2-i)と呼ばれる経口血糖降下薬が、脂肪肝の治療にも有効な可能性を示唆する研究データが報告された。慢性的な炎症をともなう脂肪肝が生体検査(生検)で確認された患者を対象として行われた、南方医科大学南方医院(中国)のHuijie Zhang氏らの研究の結果であり、詳細は「The BMJ」に6月4日掲載された。

 論文の研究背景の中で著者らは、世界中の成人の5%以上が脂肪肝に該当し、糖尿病や肥満者ではその割合が30%以上にも及ぶと述べている。脂肪肝を基に肝臓の慢性的な炎症が起こり線維化という変化が進むにつれて、肝硬変や肝臓がんのリスクが高くなってくる。

 一方、これまでに行われた複数の研究から、尿中へのブドウ糖排泄を増やすことで血糖値を下げるSGLT2-iに、脂肪肝を改善する作用のあることが示されている。

 ただしそれらの研究では、画像検査や血液検査によって脂肪肝の存在が推定される患者を対象としていた。それに対して今回報告された研究は、脂肪肝の中でも慢性炎症が起きている、よりハイリスクな状態である代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)を、生検によって診断した患者を対象に行われた。著者らによると、生検でMASHが確認された患者を対象としてSGLT2-iの効果を検討した研究は、これが初めてだという。

 中国国内の三次医療機関6施設で、MASHと診断された成人154人をランダムに2群に分け、1群をSGLT2-iの一種であるダパグリフロジン(10mg)群、他の1群をプラセボ群として48週間介入した。参加者の平均年齢は35.1±10.2歳で、BMIは29.2±4.3であり、2型糖尿病が45%を占めていた。また、肝疾患の活動性を表すスコア(NAS)は6.0±1.1で、肝線維化ステージはF1が33%、F2が45%、F3が19%だった。

 主要評価項目である、肝線維化の悪化(線維化ステージの進行)をともなわないMASHの改善(NASが2点以上低下、または3点以下になること)は、ダパグリフロジン群では53%、プラセボ群では30%に認められ、前者で有意に多かった[リスク比(RR) 1.73、95%信頼区間 1.16~2.58]。

 また副次評価項目として設定されていた、肝線維化の悪化をともなわないMASHの寛解は、同順に23%、8%[RR2.91、同 1.22~6.97]、MASHの悪化をともなわない線維化の改善は、45%、20%であり[RR2.25、同 1.35~3.75]、いずれもダパグリフロジン群に多く認められた。なお、有害事象によって治療を中止した患者の割合は、1%、3%だった。

 著者らは、「われわれの研究結果は、ダパグリフロジンが肝臓の脂肪化と線維化の双方を改善し、MASHの経過に有意な影響を及ぼす可能性を示唆している。これらの効果を確認するために、より大規模かつ長期間の臨床研究が求められる」と述べている。

[HealthDay News 2025年6月6日]

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