発症から30年 1型糖尿病患者が語る新連載「インスリンとの歩き方」
糖尿病ネットワークの「DMオピニオン」は、1型糖尿病患者の遠藤伸司さんによる新連載「インスリンとの歩き方」をスタートしました。
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執筆者の遠藤さんは、中学生の頃に1型糖尿病を発症。以来、約30年間の療養生活の中で、留学や進学、就職、そして転職、プライベートまで幅広い経験を積み、なにかと無理をすることもあったようです。
連載では、そんな遠藤さんの半生を、糖尿病——特にインスリン製剤と上手につきあうためのコツやノウハウを中心に、実体験のエピソードを交えて語っていただきます。1型糖尿病患者さんをはじめ、2型糖尿病患者さん、糖尿病医療に携わる方々は、ぜひご一読ください。
第一回 「第1回 あなた、一生、インスリン注射が必要です」
(本文より)
■ 発 症
中学1年生の春だった。入学当初だったので、新しい学生生活への期待でふくらんでいた。校内は桜が咲き誇れ 、緑にも囲まれ、木漏れ日が眩しいほど新鮮な気持ちだった。
そんな気持ちとは裏腹に、僕の体は急激に変わっていった。喉がカラカラに渇くようになり、水を絶えず飲まずにいられなかった。おしっこも頻繁に出るようになった。
電車での通学だったから、喉の渇きやおしっこを我慢できず、途中下車する日もあった。特に満員電車の場合が最悪だった。人ごみを押しのけて降りるのが面倒だったので、おしっこを我慢し、ダッシュで駅のトイレに向かった。間に合ったあ~、尿が漏れないかという緊張と安堵感。中学生にもなって漏らしたら恥ずかしい......そんな心配を抱えて、通学電車に乗るようになっていた。