メトホルミンが2型糖尿病と心不全を改善 米研究

2010.01.26
 最近の研究で、メトホルミンが2型糖尿病と重度の心不全のある患者の治療に有用であることが示された。UCLAデイヴィッド・ゲフィン医科大学院の研究者により、米国心不全学会が発行する「Journal of Cardiac Failure」オンライン版に発表された。
 従来の研究で、糖尿病は心不全リスクに加え、心不全患者での死亡リスクを増加させることが示されている。これは、糖尿病により血中のグルコースと脂質が増え、冠状動脈アテローム硬化を促すからだ。アテローム性動脈硬化によって引き起こされる虚血性心疾患において、動脈硬化と血管肥厚はもっとも特徴的だが、心不全患者における血中グルコースと脂質の最適な治療法は確立されていない。
 研究は、包括的な心不全マネジメント・プログラムの開発をめざす14年間におよぶコホート研究として、収縮期心不全が進行した2型糖尿病患者401人(平均年齢56歳)を対象に実施された。その結果、進行した心不全と糖尿病がある患者では、メトホルミンの使用が生存率が改善し、しかも安全であることが示唆された。メトホルミンを投与した患者では、対照群に比べ1年後の生存率が著しく改善していた。*
 従来の研究で、心不全を合併した糖尿病は、無症候性心疾患から症候性心不全まで独立した危険因子とみられ、多発性の要因による死亡の危険因子とみられている。研究では、メトホルミンが心機能を改善する潜在的なメカニズムがあることが示唆された。
 「血糖降下薬の中には心不全に対し悪影響があるものがある。我々の研究では、メトホルミンが従来の治療に比べ安全であるだけでなく、アウトカムを改善する役割を担っていることが示された」と同大学院循環器学部のTamara Horwich助教授は述べている。UCLA循環器内科のGregg Fonarow氏とEliot Corday氏は、メトホルミンがシグナリング機構(AMP活性化プロテインキナーゼ)の活性化に関与し、心筋機能が改善する可能性を示唆している。
 「米国だけで心不全を合併する2型糖尿病患者は200万人以上いる。今回の発見の意義は大きい」とHorwich氏は述べている。
* ビグアナイド薬(BG薬)は2型糖尿病の治療薬として1950年代から使われているが、70年代に副作用として乳酸アシドーシスを起こす可能性が指摘され、一時期処方されることが少なかった。その後、乳酸アシドーシスが高頻度に起こったのは初期に使われたフェンホルミンであり、メトホルミンによる乳酸アシドーシスの発症頻度はフェンホルミンに比べ低いことがあきからになった。現在ではメトホルミンの安全性は再認識されている。1995年頃から米国でメトホルミンが2型糖尿病の治療に有効であるという報告が増え、薬価が安いこともあり、広く使われるようになっている。
Common diabetes drug safe, effective for those with diabetes and heart failure, study finds(UCLA)
Metformin Therapy and Outcomes in Patients With Advanced Systolic Heart Failure and Diabetes
(Journal of Cardiac Failure, published online 16 November 2009)

カテゴリー:ビグアナイド薬

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