「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」を改訂 最新のエビデンスなどを追加 日本糖尿病学会
糖尿病の病態に応じて治療薬の最善の選択をすることを重要視
日本糖尿病学会は、「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」を公表した。
日本での2型糖尿病治療アルゴリズム作成のコンセプトとして、糖尿病の病態に応じて治療薬を選択することを最重要視し、エビデンスと日本での処方実態を勘案している。
今回の改訂は、2023年4月に持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」が上市されたことをひとつのきっかけとしたもの。主な改訂点は次の通り――。
- Fig. 2の「Step 1:病態に応じた薬剤選択」で、肥満[インスリン抵抗性を想定]の最後にチルゼパチドが追記された。
- インスリン分泌不全、インスリン抵抗性は、糖尿病治療ガイドにある各指標を参考に評価し得るという文言は、改訂前より記載されてあったものたが、より病態を正確にとらえるための情報として、「インスリン抵抗性はBMI、腹囲での肥満・内臓脂肪蓄積から類推するが、HOMA-IR等の指標の評価が望ましい」という内容が追記された。
- 「Step 2:安全性への配慮」で、「例2)腎機能障害合併者」では、「グリニド薬を避ける」と記載されていた箇所に「腎排泄型の」が追記され、「例3)心不全合併者」では、ビグアナイド薬、チアゾリジン薬を避ける(禁忌)、と記載されていた順番が、「チアゾリジン薬、ビグアナイド薬」に入れ替えられた。
- Fig. 2の最下段に、目標HbA1cを達成できなかった場合は、Step 1に立ち返り、と記載されていたのが、「冒頭に立ち返り、インスリン適応の再評価も含めて」と改められた。
- 別表では、チルゼパチドについて追記されたのに加え、考慮すべき項目に、「特徴的な副作用」と「効果の持続性」の2つが追記された。
なお本文でも、チルゼパチドや特徴的な副作用など、図、別表の改訂に関する追記に加えて、アルゴリズムの図には記載されていないが、考慮すべき併存疾患として、第2版から非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が取り上げられた。
さらに、インスリンの絶対的適応と相対的適応、血糖コントロール目標での熊本宣言2013や高齢者糖尿病の血糖コントロール目標などについても詳細が追記された。
日本での糖尿病診療の向上に貢献することを期待
日本糖尿病学会はこれまで、糖尿病診療に必要なアップデート事項を適宜コンセンサスステートメントとして刊行していくことを決め、「コンセンサスステートメント策定に関する委員会」を設置。2020年にその第1報として「糖尿病患者の栄養食事指導」をテーマに作成し、2022年に第2報として「2型糖尿病治療アルゴリズム」をテーマに作成した。
いずれも、日本での糖尿病診療に関する考え方を、テーマごとにできうる限り日本も含む新しいエビデンスにもとづきとりまとめたもので、同学会では「最善の糖尿病診療を行ううえで活用していただきたい」としている。
「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」についても、「コンセンサスステートメントが、日本での糖尿病診療の向上に貢献することを期待するとともに、新しいエビデンスを加えながら、より良いものに進化し続けていくことを改めて願っている」と述べている。
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