「高齢者糖尿病診療ガイドライン2023」を策定 日本老年医学会・日本糖尿病学会
SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬などによる心血管疾患リスク低減なども記載
一般社団法人 日本老年医学会と一般社団法人 日本糖尿病学会は共同で、「高齢者糖尿病診療ガイドライン2023」を策定した。
高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会が2017年に策定した「高齢者糖尿病診療ガイドライン2017」などの後に蓄積された、国内外の新しい高齢者糖尿病のエビデンスなどを反映したもの。
2019年から合同委員会の委員を増員し、2021年から両学会の委員が相互に執筆担当者・査読担当者となり、執筆協力者、SR(システマティックレビュー)担当者ととともに、QまたはCQを設定し、原稿を執筆したとしている。
また、日本糖尿病学会の診療ガイドラインと同様にCQに関してはPICOを設定し、「推奨グレード」を設け、さらにCQに関して合同委員会としてステートメント・解説の確認、推奨グレードの投票を行った。
日本糖尿病学会と日本老年医学会の評価委員や、両学会のパブリックコメントによる修正、また関連する14学会のリエゾン委員による評価などを経て刊行に至った。
今回のガイドラインでは新たな章として「高齢者糖尿病の併存疾患」「さまざまな病態における糖尿病の治療」「高齢者糖尿病をサポートする制度」などが加えられた。
内容の特徴としては、糖尿病と認知症、フレイル、サルコペニアの関連、高齢者総合機能評価の方法、重症低血糖の影響、運動療法や食事療法の有効性について一定のエビデンスが蓄積されつつあることが示されている。
また、高齢者糖尿病でも、新しい糖尿病の治療薬剤であるSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬などが心血管疾患のリスクを低減するという報告や、高齢者2型糖尿病患者のインスリン治療の単純化に関する報告などが記載されている。
両学会では「ガイドラインの目的は、エビデンスに基づいてある治療をどの程度推奨すべきかを示すことだけでなく、不明な診療上の課題を明らかにし、今後の研究の方向を示すことである。特に、75歳以上または認知機能障害やADL低下がある患者のエビデンスは乏しく、さらなる研究が必要である。また、高齢者糖尿病の血糖コントロール目標やカテゴリー分類に関する妥当性に関する研究も重要である」と述べている。
最近では、高齢者糖尿病の治療は、病院の医師、地域のクリニックや在宅医療の医師、医療・介護スタッフの多職種が協働して、地域の社会サービスを活用しながら行うことがますます必要とされている。こうした高齢者糖尿病の社会サービスに関する研究も今後は必要としている。
CQ・ステートメント・推奨グレード一覧
I. 高齢者糖尿病の背景・特徴
II. 高齢者糖尿病の診断、病型
III. 高齢者糖尿病の総合機能評価
IV. 高齢者糖尿病の合併症
V. 高齢者糖尿病の併存疾患
VI. 高齢者糖尿病の血糖コントロール目標・治療方針
VII. 高齢者糖尿病の食事療法
VIII. 高齢者糖尿病の運動療法
IX. 高齢者糖尿病の経口血糖降下薬治療
X. 高齢者糖尿病の注射薬
XI. 低血糖およびシックデイ対策
XII. 高血圧、脂質異常症、メタボリックシンドローム、サルコペニア肥満
XIII. さまざまな病態における糖尿病の治療
XIV. 高齢者糖尿病をサポートする制度
付録