日本肥満学会が「肥満症診療ガイドライン2022」を発刊 肥満症治療薬の適応および評価基準などを追加
「肥満症治療薬の適応および評価基準」などの章を追加
日本肥満学会は2000年に医療を必要とする肥満である「肥満症」の概念を提唱し、肥満症の診断基準を策定した。それ以後、この概念にそった診療を推奨してきた。このほど6年ぶりにガイドラインを改訂し、「肥満症診療ガイドライン2022」として発刊した。
新たに「高度肥満症」、「小児の肥満と肥満症」、「高齢者の肥満と肥満症」、「肥満症治療薬の適応および評価基準」の章が設けられた。肥満と肥満症に関するスティグマの解消を含め、最新の知見が取り入れられている。
新たに設けられた「第1章 肥満症治療と日本肥満学会が目指すもの」を一読するだけでも、肥満症の診断と治療、その目標について最新のエッセンスを知ることができる(序文と第1章は日本肥満学会サイトで、無料で公開されている)。
2016年以降、小児や高齢者の肥満と肥満症を含め、国内外の知見は増えている。日本でも、高度肥満症を対象とした外科療法(減量・代謝改善手術)が保険収載され、肥満症治療薬の臨床開発も進んでおり、日本の肥満症診療は大きな変化を遂げつつある。
日本糖尿病学会・日本肥満症治療学会・日本肥満学会は2021年に、「日本人の肥満2型糖尿病患者に対する減量・代謝改善手術に関するコンセンサスステートメント」を3学会合同で発表した。
長らく変化に乏しかった薬物療法でも、新たな肥満症治療薬の登場が待たれている。肥満症の治療は、従来はエネルギー制限療法や対症療法にとどまっていたが、病因遺伝子の解明にともない特異的な薬剤介入の道が開かれる可能性も期待されている。
肥満と肥満症に関するスティグマへの取り組み
日本人は欧米人に比べ、極端な肥満は少なく、軽度の肥満が多い。しかし、軽度の肥満から、2型糖尿病などの発症率は上昇することが知られている。同学会は、内臓脂肪の蓄積が、健康障害をもたらす病態の中心にあるとして、その重要性を一貫して論じている。
肥満と肥満症の原因には、遺伝(体質)によるものと、環境によるものの両方があり、生育や発達での要因、社会的な要因も含まれる。しかし、必要以上に食習慣などの個人の生活上の要因に帰せられている傾向がみられる。さらに、「自己管理能力が低いから肥満になる」といった偏見も少なくない。
同学会では、「肥満には、社会的スティグマに加え、肥満を自分自身の責任と考える個人的スティグマもあり、医療者と患者のあいだに治療の認識の差がある」と指摘。
こうした肥満に対するスティグマは、心理的負担や社会的不利益をもたらすだけでなく、「自己管理の問題であって、医療を受ける対象ではない」といった誤った理解を引き起こし、適切な治療の機会が奪われるのにつながるとしている。
「"肥満症診療ガイドライン2022"では、肥満症をもつ人の福祉の向上のために肥満学会が目指す社会的な取り組みなどにもふれています。発刊を機に、肥満症の現況と診療の進歩が社会的に広く認知されることを期待しています」と、同学会では述べている。
日本人の肥満2型糖尿病患者に対する減量・代謝改善手術に関するコンセンサスステートメント (日本糖尿病学会)
日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」 目次
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