GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」と「セマグルチド」を比較 どちらが血糖管理と体重減少の効果が高い? 欧州糖尿病学会

2023.09.27
第59回欧州糖尿病学会(EASD)年次総会

 GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」とGLP-1受容体作動薬「セマグルチド」を比較したランダム化比較試験(RCT)を含む22件の研究を解析した研究が発表された。HbA1c低下および体重減少は、チルゼパチドがセマグルチドを上回った。

GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」はHbA1c低下と体重減少の効果がより高い結果に

 GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド」とGLP-1受容体作動薬「セマグルチド」を比較したランダム化比較試験(RCT)を含む22件の研究を解析した研究が発表された。HbA1c低下および体重減少は、チルゼパチドはセマグルチドを上回った。

 詳細は、ハンブルクで10月2日~6日に開催される第59回欧州糖尿病学会(EASD)年次総会で発表される予定。研究は、ギリシャのテッサロニキ アリストテレス大学臨床研究研究員のThomas Karagiannis氏らによるもの。

 研究グループは、利用可能な22件の試験のデータを組み合わせてメタ解析し、チルゼパチドとセマグルチドの2型糖尿病患者での有効性と安全性を比較した。これまでチルゼパチドとセマグルチドを直接に比較したランダム化比較試験(RCT)は少ない。

 MedlineとCochrane Libraryで、チルゼパチド5mg、10mg、15mgの週1回皮下投与を用量維持、およびセマグルチド0.5mg、1.0mg、2.0mgの週1回皮下投与を用量維持し、それぞれ12週間以上評価したRCTを検索した。

 選択したRCTを含む22件の試験には、1万8,472人の2型糖尿病患者のデータが含まれていた。適格用量のチルゼパチドおよびセマグルチド、プラセボ、およびその他の血糖降下薬を直接比較した試験に限り、メタ解析により、HbA1c、体重、有害事象のリスクに対するそれぞれの影響を比較した。

 その結果、低・中・高の3つの用量でそれぞれ、チルゼパチドはセマグルチドよりも、HbA1cをより減少させた。HbA1c低下の効果がプラセボと比較してもっとも高かったのは、チルゼパチド15mg(平均差はマイナス2.00%)であり、次いでチルゼパチド10mg(マイナス1.86%)、セマグルチド2.0mg(マイナス1.62%)だった。

 プラセボと比較した体重減少はそれぞれの用量で、チルゼパチド15mgはマイナス10.96Kg、10mgはマイナス8.75Kg、5mgはマイナス6.16Kgとなり、セマグルチド2.0mgはマイナス5.24Kg、1.0mgはマイナス4.44Kg、0.5mgはマイナス2.72Kgなった。

 薬物間の比較に関しては、チルゼパチド10mgと15mgの両方が、セマグルチド0.5mg、1.0mg、2.0mgと比較し、体重減少でより効果が高く、チルゼパチド5mgは、セマグルチド0.5mgおよび1.0mgと比較してより効果が高いことが示された。

 チルゼパチドとセマグルチドによる体重変化の主な平均差は次の通り――。

チルゼパチド15mg 対 セマグルチド2.0mg = マイナス5.72Kg
チルゼパチド10mg 対 セマグルチド2.0mg = マイナス3.52Kg
チルゼパチド5mg 対 セマグルチド1.0mg = マイナス1.72Kg

 「チルゼパチドとセマグルチドはともに体重減少の効果があるが、チルゼパチドの3用量は、セマグルチドの3用量に比較しより効果的であり、用量が多いほど2つの薬剤間の差は大きくなった」と、Karagiannis氏は述べている。

 一方、有害事象については、チルゼパチドとセマグルチドのすべての用量で、プラセボと比較して胃腸の有害事象のリスクが増加し、チルゼパチド15mgはリスクがもっとも高く、吐き気 3.6倍、嘔吐 4.4倍、下痢 2倍となった。

 薬物間の比較では、チルゼパチド15mgでは、セマグルチド1.0mgに対し嘔吐が39%増加し、セマグルチド0.5mgに対しては嘔吐が85%増加した。またチルゼパチド15mgでは、セマグルチド0.5mgに対し、吐き気が45%増加した。

 ただし、これらを除くと統計的な有意差はなく、重篤な有害事象のリスクに関しては、チルゼパチド、セマグルチド、プラセボのあいだに有意差はなかった。

 「2型糖尿病患者では、セマグルチド0.5mg、1.0mg、2.0mgと比較して、チルゼパチド5mg、10mg、15mgは、HbA1c低下の効果がより高かった。また、チルゼパチドはセマグルチドよりも体重減少の効果がより高く、高用量で体重減少の効果はより大きくなった。ただし、チルゼパチド高用量(15mg)は、低用量および中用量と比較して、嘔吐などのリスク増加と関連していた」と、Karagiannis氏は結論付けている。

 なお、今回のメタ解析の対象となった22件の試験のうち、チルゼパチドとセマグルチドを比較したRCTは2件で、残りの20件のリアル研究は、両剤のいずれかを一般的な比較対照(プラセボ、基礎インスリン、他のGLP-1受容体作動薬)と比較し、両剤の間接的な比較を行うために使用されたとしている。

 また、セマグルチドは欧州では2型糖尿病および肥満/体重管理の治療薬としてすでに承認されており、チルゼパチドは2型糖尿病の治療薬として承認されており、肥満/体重管理に対する承認申請も出されている。

This is an early release from the Annual Meeting of the European Association for the Study of Diabetes (EASD) meeting in Hamburg, October 2-6.

第59回欧州糖尿病学会(EASD)年次総会
Tirzepatide more effective in blood sugar control and body weight loss than semaglutide, shows meta-analysis of 22 studies (Diabetologia 2023年9月22日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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