糖尿病のある方の災害対策 ~事前の備えが患者さんの命を救う~
能登半島地震や南海トラフ地震臨時情報などを受け、災害対策の必要性が今改めてクローズアップされています。2016年の熊本地震を経験し、能登半島地震でも現地で支援された西田健朗先生と川浪美保先生に、医療者および糖尿病のある方に対するアンケート調査の結果もふまえながら、糖尿病における災害対策のあり方についてお話を伺いました。

熊本中央病院
糖尿病・内分泌・代謝内科
部長
西田健朗 先生

熊本中央病院
糖尿病看護認定看護師
川浪美保 先生
※この記事は「糖尿病リソースガイド」が制作し、株式会社三和化学研究所発行『Precious Voice no.7』に掲載されました。
Q. 熊本地震でのご経験では、どのようなことに困りましたか。
(敬称略)
西田 まず患者さん、特に1型糖尿病患者さんとの連絡手段です。電話が通じにくくなり、患者さんの状況がなかなか把握できませんでした。また避難所に行ってみると、ちゃんとした食事がとれない時のインスリンの調整ができていない患者さんも多く、「注射針や消毒綿が足りない」「インスリンを保管する冷蔵庫がない」と焦っている方もいました。「災害時は針をくり返し使って構わない」「インスリンは常温でも1カ月は大丈夫」といった知識を事前に伝えることができておらず、普段から教育することの重要性を痛感しました。
川浪 最初の地震は木曜日の夜で、金曜日は何とか外来を開け、患者さんもほぼ来院できていたのですが、土曜未明に起きた本震は揺れがひどく、停電もありました。土日は災害対応にあたり、翌月曜日に外来を開けたものの、来院できた患者さんも少なく、スタッフも被災して半分以下という状況でした。来院できた患者さんには非常電源を使いながら採血したり、1週間分の薬を処方したりしましたが、来院できない患者さんと連絡を取ることが難しかったです。