電子カルテ市場の動向と注目メーカー

2026.05.19
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 診療所の電子カルテ普及率が55%を超え、政府は2030年までに100%普及を掲げています。クラウド型を中心にメーカー間の競争が激化するいま、「どの製品を選ぶべきか」と迷うクリニック経営者は少なくありません。本記事では電子カルテの市場動向とともに、代表的なメーカーの価格・特徴を紹介します。選定時のチェックポイントもあわせて解説しますので、導入・買い替えの判断にお役立てください。

【執筆者】Nsワーカー
介護士として勤務しながら准看護師資格を取得後、民間病院での臨床経験を積み正看護師へ。現在は大学病院に勤めて10年以上となる現役看護師。育児中のワーキングファザーでもあり、看護・医療・育児に関連した記事を100件以上執筆。高評価を多数いただいており、正確さと読みやすさを大切にしたライティングを心がけている。

電子カルテ市場の最新動向

普及率の現状と政府目標

 厚生労働省が公表した令和5年の医療施設調査によると、一般病院における電子カルテの普及率は65.6%、一般診療所では55.0%に達しました。政府は「医療DX令和ビジョン2030」のもとで電子カルテの全国普及を推進しており、2030年までに概ねすべての医療機関で電子カルテを導入する目標を掲げています。厚生労働省は未導入の小規模診療所向けに「標準型電子カルテ(導入版)」の開発を進めており、無料もしくは低コストでの提供が想定されています。

クラウド型シフトの加速

 市場で最も大きなトレンドは、オンプレミス型からクラウド型への移行です。「クラウド型であること」が、サーバー設置が不要で初期費用を抑えられる手軽さ、メンテナンスやバージョンアップをベンダーに任せられる運用負担の軽さ、そして災害時にもデータが安全に保護されるBCPの観点が支持されています。
新規開業クリニックを中心にクラウド型の採用が急速に広がっています。

注目メーカーの特徴と選び方

Medicomシリーズ(ウィーメックス)

 ウィーメックスが提供するMedicomシリーズは、1972年に日本初の医事コンピューターを発売して以来、50年以上にわたり医療機関のIT化をリードしてきたブランドです。クリニック向けには、完全クラウド型の「Medicom クラウドカルテ」とハイブリッド型の「Medicom-HRf Hybrid Cloud」など3製品を展開しており、クリニックの規模や運用方針に応じて最適な導入形態を選べます。

 「Medicom クラウドカルテ」は、電子カルテ25年の開発実績と200名以上の開業医への調査から生まれた完全クラウド型×レセコン一体型の電子カルテです。Basicプランなら初期費用0円・月額24,800円〜(税別)で導入でき、最短5営業日で利用を開始できます。

クラウド型電子カルテシステム Medicom クラウドカルテ| メディコム | ウィーメックス株式会社

 カルテ入力内容から算定可能な項目を自動で抽出するAI自動算定機能を搭載。カルテ記載と同時にリアルタイムでチェックがかかるため、診療後の手戻りを防ぎます。

 レセプトチェックでは診療基本情報・算定ルール・病名整合性・投与量/投与期間・診療日の5つのアシスト機能が正確な請求を支援します。文書作成機能も標準装備されており、カルテ情報と自動連携して文書を作成できるため、医師の事務負担を軽減します。

 オプションのWeb予約・問診管理システム「Medicom 診療支援」を連携すれば、予約から問診・診察・会計までの業務をシームレスに一元化できます。

 一方、「Medicom-HRf Hybrid Cloud」は「クラウドの先にある潜在能力を引き出す」をコンセプトに、オンプレミスの安定した操作性とクラウドの利便性を融合させた製品です。通常時は院内サーバーでスピーディに操作し、障害発生時にはクラウド上のアプリケーションへ自動切り替えできる「MedicomCloud 運用継続サービス」により、災害時や故障時にも診療を止めません。

ハイブリッド型電子カルテシステム Medicom-HRf Hybrid Cloud | メディコム | ウィーメックス株式会社(旧PHC株式会社)

 院外からのカルテ閲覧・入力にも対応しており、スマートフォンやタブレットからいつでもどこでもカルテ操作が可能です。ユーザーごとの検索履歴を学習して入力候補を最適化する学習機能や、タブメニューの並び順・表示内容をユーザー/端末ごとにカスタマイズできる柔軟性も備えています。

 Medicom-HRシリーズで約170社との機器連携を実現した対応力で、検査機器や画像診断装置との接続が多いクリニックにも適しています。

 Medicomシリーズ共通の強みは、全国174拠点(販売代理店・保守サポート提携先含む、2025年12月時点)に広がるサポート体制です。ウィーメックス・販売代理店・保守サービス会社の三位一体のネットワークにより、導入前のコンサルティングから稼働後のアフターサービスまで、訪問・電話・リモート・チャットの各チャネルで手厚い支援が受けられます。また、オンライン資格確認50,000件以上・電子処方箋20,000件以上の導入実績を持ち、標準型電子カルテ開発ワーキンググループ(デジタル庁)にも参画するなど、医療DXの最前線に立つ存在です。

 ※「Medicom クラウドカルテ」はプランによりサポート体制が異なります。詳細はウィーメックスまでお問い合わせください。
 ※診療所向け電子カルテシステム診療所シェアNo.1に関する出典:株式会社富士経済「2025年版 医療・ヘルスケア・製薬DX関連市場の現状と将来展望」 より2024年実績 金額ベース 診療所向け電子カルテ(オンプレミス型/クラウド型)

エムスリーデジカル

 医師向けプラットフォーム「m3.com」を運営するエムスリーグループの電子カルテです。ORCA連動型(月額11,800円〜)とレセコン一体型(月額24,800円〜)の2プランがあり、いずれも初期費用0円から導入できます。AI自動学習機能を搭載しており、よく使う処置行為が自動でセット化されるなど、使い込むほど医師の診療パターンに合わせて入力候補が最適化されます。

 タブレットでの手書き入力や音声入力にも対応しているため、医師の入力負担を大きく軽減します。iPadやスマートフォンからのアクセスも可能で、訪問診療やオンライン診療との相性も良好です。オンライン診療・Web問診・キャッシュレス決済まで一元管理できる「デジスマ診療」との連携機能も、新規開業クリニックに選ばれる理由の一つです。

HOPEシリーズ(富士通Japan)

 IT大手の富士通Japanが提供するHOPEシリーズは、大規模病院から診療所まで幅広い医療機関に対応する電子カルテです。クラウド型・オンプレミス型の両方を展開しており、検査システムや画像診断システム、薬局システムなど幅広いシステムとの連携が可能です。

 高いシステム統合性と安定性に定評があり、大規模かつ複雑な業務フローを持つ医療機関に適した設計です。富士通のIT基盤を活かした信頼性とセキュリティも評価されています。

その他の注目製品

 その他にも特徴的な製品があります。

 モバカルネット(NTTプレシジョンメディシン)は在宅医療に特化したクラウド型カルテで、モバイルからの訪問診療記録や訪問看護指示書の一括作成など、訪問診療特有の業務を強力に支援します。初期費用200,000円〜・月額50,000円〜と他のクラウド型製品に比べてやや高めですが、NTTグループのセキュリティ技術による安心感と災害時のデータ復旧体制が整っている点が評価されています。

 CLIUS(DONUTS)は初期費用200,000円〜・月額12,000円〜で導入でき、オンライン診療機能を標準搭載しています。年次統計・診療時間分析・リピート率分析など多角的な経営分析機能も充実しており、データに基づいた集患や経営改善に取り組みたいクリニックに適しています。

 Dynamics(ダイナミクス)はオンプレミス型ながら初期費用220,000円・月額13,200円(いずれも税込)と非常に安価で、コストパフォーマンスを最重視するクリニックにとって魅力的な選択肢です。訪問先でのデータ閲覧やスマートフォンからの参照にも対応しています。

メーカー選定の5つのチェックポイント

1.クラウド型かオンプレミス型か

 標準化対応を見据えると、自動アップデートに対応でき初期費用も抑えられるクラウド型が主流です。メンテナンスやバージョンアップもベンダーが行うため運用負担が大幅に軽減される一方、インターネット環境に依存するため通信の安定性を事前に確認する必要があります。カスタマイズの自由度を重視する場合やセキュリティポリシーが厳格な法人にはオンプレミス型やハイブリッド型も有力な選択肢です。

2.レセコン一体型か分離型か

 新規開業であれば、操作画面が統一されデータ連携のトラブルが起きにくい一体型が合理的です。既存レセコンを使い続ける場合はORCA連動型などの分離型を選び、互換性を事前にメーカーへ確認しましょう。一体型はカルテとレセプト間の整合性が保たれやすく、入力の二度手間やヒューマンエラーによる請求ミスの軽減にもつながります。

3.サポート体制と導入実績

 サポート窓口の対応時間(休日・夜間を含むか)、緊急時のリモートや訪問対応の可否、同じ診療科での導入実績を確認しましょう。m3.comの調査でも「導入サポート」は購入の決め手第4位(6.1%)にランクインしています。特にITに不慣れなスタッフが多いクリニックや初めての電子カルテ導入では、きめ細やかなサポートが不可欠です。地方のクリニックでは近隣にフィールドサポート拠点があるかも重要な判断材料になります。

4.外部システムとの連携性

 予約・問診・画像診断・検査機器・調剤薬局・会計システムなど、使用中またはこれから導入予定のシステムとの連携可否を導入前に必ず確認してください。とくにオンライン診療システムとの連携は、今後ますます重要性を増す領域です。HL7 FHIRなどの標準規格への対応状況も、地域医療連携や将来の拡張性を左右するポイントです。

5.5年間の総コスト(TCO)で比較する

 初期費用だけでなく、月額利用料・保守費用・バージョンアップ費用・端末リプレース費を含めた5年間の総コストで判断することが鉄則です。クラウド型は初期費用が安い反面、月額利用料が継続的にかかります。オンプレミス型は初期投資が大きいものの月々の費用は比較的少額です。5年間で試算すると両者の差が想定ほど大きくないケースもあるため、複数メーカーから見積もりを取って比較しましょう。費用の詳細は別記事「電子カルテの導入費用相場【2026年版】」で解説しています。

7.まとめ

 電子カルテ市場はクラウド型を中心に急速に変化しております。自院の診療科目・規模・IT環境・将来の展望に照らして最適な製品を見極めることが重要です。本記事の5つのチェックポイントを活用しながら複数メーカーから見積もりを取り比較検討してください。IT導入補助金も活用しながら、後悔のない導入判断を行いましょう。

参考URL一覧

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