若年層・ビジネスパーソンを取り込む「スマホ完結型」予約とは

2026.04.28
prev
「電話が繋がらないから別のクリニックにした」……日中に電話できない働き盛りの患者が受診を断念する理由のひとつが、診療時間内にしか使えない電話予約です。スマホで検索し、そのまま予約まで完結できる体制を整えることは、若い世代やビジネスパーソンという新たな患者層を取り込む集患戦略として有効です。本記事では、スマホ完結型予約の設計方法と運用のポイントを解説します。

【執筆者】Nsワーカー
 介護士として勤務しながら准看護師資格を取得後、民間病院での臨床経験を積み正看護師へ。現在は大学病院に勤めて10年以上となる現役看護師。育児中のワーキングファザーでもあり、看護・医療・育児に関連した記事を100件以上執筆。高評価を多数いただいており、正確さと読みやすさを大切にしたライティングを心がけている。

電話予約しか対応していないクリニックが取りこぼしている患者層

 クリニックの予約方法が電話予約や受付での次回予約のみの場合、診療時間外に患者が予約できないことで、来院するはずだった患者を取りこぼしている可能性があります。

診療時間内に電話できないビジネスパーソンの実態

 時代とともに年齢や性別を問わず働く人が増え、診療時間内に電話で予約を取ることが困難な人も多くいます。夜中に具合が悪くなり翌日の予約を今すぐ取りたい患者、疾患のことをずっと調べていて寝る前に受診意欲が高まる患者など、「受診したい」と思うタイミングは様々です。翌日に電話で予約するというアクションをとるまでに、受診意欲が低下してしまうこともあります。

患者のクリニック選びで「予約のしやすさ」が重視される理由

 現在の患者が重視するのは「体験の質」です。待ち時間の少なさ、WEB予約の可否、スタッフの接遇など、診療以外のプロセスが「良いクリニック」を定義する重要な指標となっています。24時間対応の予約インフラは、「今すぐ予約したい」という熱量を逃さないために必須といえます。

スマホ完結型予約の仕組み —LINEが主役になる理由

 WEB予約に加えてLINEを予約の入口として組み込むことで、患者の予約のしやすさはさらに向上します。WEB予約は既に多くのクリニックで導入が進んでいますが、クリニックのホームページを検索したり、ブックマークを開いたりというひと手間がかかります。普段日常的に利用しているLINEから予約ができることで、患者の予約の取りやすさはさらに大きく向上します。

LINEが「スマホ完結」に向いている理由

 LINEは国内で最も利用されているSNSのひとつであり、2023年6月末時点で国内ユーザー数は9,500万人を超え、日本の人口の70%以上が日常的に利用しています。若年層だけでなく、60歳以上のシニア層の多くも利用しており、年代を問わず馴染みのあるツールとして広く認識されています。また、新たなアプリをダウンロードする必要がなく、患者が既に使い慣れているという点が大きな強みです。

 さらに、新型コロナウイルスをきっかけに「クリニックも予約をして行くもの」という認識が一般的になり、選定の際に「予約の手軽さ」が重要視されるようになりました。LINEは24時間いつでも利用可能であり、人々が使い慣れていることから、予約や情報を発信する媒体として運用するクリニックが増えています。

4つの予約取得方法とその違い

LINEを活用した予約の取得方法は大きく4つに分類できます。

① リッチメニューからWEB予約ページへ誘導する方法

 クリニックのLINE公式アカウントのリッチメニューに、WEB予約ページへのリンクを設置する方法です。友達登録をしている患者は、WEB予約をするためにクリニックのホームページを検索する手間が省略でき、普段利用しているLINEから手軽に予約ページにアクセスできます。

② 自動返信機能でWEB予約ページへ誘導する方法

 患者が「予約」などあらかじめ設定されたキーワードを入力すると、予約フォームのURLを自動的に返信する方法です。スタッフが個別に確認・返信する必要はありません。

③ LINEトーク形式で予約を完結する方法

 LINE上でトークのやり取り(自動応答)を通じて予約を進める方法です。LINEから離れることなく予約が完結するため、WEBで予約すること自体にハードルを感じている患者にとっても利用しやすい点がメリットです。

④ WEB予約後に通知のみLINEで受け取る方法

 WEB上の予約ページで予約を取得したあと、予約日時などの通知のみをLINEで受け取る方法です。クリニックのLINE公式アカウントを開設する手間がなく、既存のWEB予約システムをそのまま活用できます。

WEB予約との使い分け —新規患者にはWEB、リピーターにはLINE

 WEB予約とLINE予約は、用途に応じて使い分けることが効果的です。クリニックのホームページや検索経由で初めて来院する新規患者は、WEB予約で対応します。一方、一度来院してLINE友達登録をした既存患者は、LINEから直接予約・変更・キャンセルができる動線を作ることで、再来院のハードルを大きく下げることができます。

 LINEは日本人口の7割以上が利用しているため、新たなアプリのダウンロードやログインが不要な患者が多く、ホームページを検索する手間も省けます。24時間予約が可能なLINEを活用した予約方法は、新規の集患だけでなく再診率の向上も期待できます。

LINE予約がビジネスパーソン・若い世代に響く3つの理由

①情報登録の負担が少ない —LINE認証で次回以降は入力不要

 患者がWEBで予約を取る際、名前や生年月日などの情報を入力したり、予約システムのアカウントを作成したりする必要がありますが、LINE認証することで入力の負担を軽減できます。一度アカウントを作成したら、次回以降の情報入力も不要です。日中忙しいビジネスパーソンにとって、この手間の削減は予約のハードルを大きく下げます。

 また、患者マイページから予約履歴を確認したり、予約の変更やキャンセルを自分で操作できるようになるため、電話での問い合わせも減らすことができます。家族の予約を代理で取る際なども、ひとつのアカウントで対応できる場合があり、小児科や高齢者層にも使いやすい設計のシステムが増えています。

②仕事の合間に予約・変更・キャンセルがLINEで完結

 電話連絡を避ける傾向にある若い世代や日中忙しい30〜40代への連絡手段として、LINEは適切といえます。患者は普段使い慣れているLINEから、予約の取得・変更・キャンセルを自分のタイミングで完結できます。

 電話予約では、スタッフとのやり取りの中で電話の聞き間違いや「言った言わない」のトラブルが生じることもありますが、LINEを活用した予約システムではこうしたトラブルを防ぐ効果もあります。

③リマインドの高開封率が無断キャンセルを防ぐ

 患者は予約の前日や当日に、LINEでリマインドメッセージを受け取ることができます。メールやDMなどのツールに比べて、LINEはメッセージが見られやすい傾向にあります。

 医療機関にとって患者の予約忘れや当日キャンセルは運営上の大きな課題ですが、LINE予約システムではリマインド通知を自動送信することで、患者が予約を忘れるリスクを減少させることができます。

 患者の来院忘れや無断キャンセルを防ぐだけでなく、定期受診や予防接種の時期のお知らせなどにも活用でき、再診促進の手段として LINE通知は有効です。

LINE友達登録が「かかりつけ化」を加速させる

友達登録が再診の動線になる仕組み

 クリニックの予約動線にLINEを組み込むと、患者のLINE友達登録を促進できます。これにより、予約だけでなく、今後の予約や診療に関する重要な情報をLINEで提供でき、患者との接点を増やすことができます。

 予約リマインドや接種スケジュールのお知らせなど、複数の通知を自動で配信することも可能です。たとえば、予約前日には来院リマインドを、一定期間経過後には再診を促すメッセージを送るといった設計も行えます。

 LINEを活用した予約システムは、予約の取りやすさやリマインド機能など患者の負担を大きく軽減します。こうした予約に関するストレスの軽減は、クリニックへの信頼感が高まるとともに、患者のリピート率や口コミによる集患にも良い影響を与えることが期待できます。

お知らせ配信・リマインドで定期受診を促す

 LINEのメッセージ配信を活用することで、休診情報や予防接種のお知らせなどを患者に届けやすくなります。患者との関係を深めるとともに、集患対策としても効果が期待できます。

 LINE公式アカウントは、月間200通までのメッセージ配信であれば無料で利用可能です(コミュニケーションプラン)。登録患者数が増えた段階で、月額5,000円(税別)からの有料プランへの移行が必要になりますが、集患・再診促進の手段として費用対効果を検討できます。

予約→問診→診察のLINE完結が患者体験を高める

 LINEでWEB問診の利用を促すことで、患者は来院後のステップが少なくなり、クリニック側もどのような症状で来院するのかを事前に把握できます。

 予約から問診入力、リマインド受け取りまでをLINEひとつで完結できる体制を整えることで、患者との信頼関係を築き、かかりつけクリニックとして定着してもらうための動線作りにつながります。

導入時の3つの注意点 —失敗しない設計のために

①友達登録を促すための院内設計

 患者にLINE予約システムを利用してもらうためには、まずクリニックのLINE公式アカウントに友達登録をしてもらう必要があります。友達登録自体は難しい操作ではありませんが、患者によっては抵抗を感じる方もいます。ホームページ上に手順をわかりやすく記載したり、受付にLINE友達登録のPOPを設置したりするなど、工夫が重要です。

②メッセージ配信の上限と料金プランの確認

 LINE公式アカウントの無料プランでは月200通までの配信に制限されています。お知らせ配信だけでなく、患者へのリマインド通知も1通としてカウントされます。クリニックの予約にLINEをどのように活用するか検討したうえで、プランを選択するようにしましょう。

③LINE・WEB・電話の「ハイブリッド運用」が必要

 WEBでの操作に苦手意識のある患者であっても、普段から使っているLINEであればWEB予約に対するハードルが下がる傾向があります。ただし、LINEを使いこなせない患者への対応も必要なため、電話予約との併用を前提とした「ハイブリッド運用」が現実的です。LINE・WEB・電話の3つを組み合わせることで、全世代の患者に対応できる予約体制が整います。特に、スマートフォンを持っていない高齢患者や、操作に不安のある患者に対しては、電話予約の窓口を残しておくことが重要です。

 一方で、LINEは若年層だけでなく高齢者にも馴染みのあるツールとして広く認識されていることから、段階的にWEB・LINEの利用比率を高めていくことで、全世代の患者に対応しながらスタッフの電話対応負担を徐々に軽減していくことができます。

まとめ

 電話予約のみのクリニックは、診療時間内に電話できないビジネスパーソンや若い世代を取りこぼしている可能性があります。LINEを予約の入口として組み込むことで、24時間いつでも予約が取れる体制を整えられ、情報登録の負担軽減・仕事の合間の予約完結・リマインドによるキャンセル防止という3つの効果が期待できます。

 また、LINE友達登録をきっかけに患者との接点を継続的に持てるようになることで、再診率の向上やかかりつけ化にもつながります。電話・WEB・LINEのハイブリッド運用を前提に、自院の患者層に合った導入設計を進めることが成功のポイントです。

 自院の課題に合わせて、取り組みやすいところから一歩ずつ進めていただければ幸いです。

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新特集記事

よく読まれている記事

関連情報・資料