充実管理加算とは? ―評価のしくみと自院が取り組むべき準備

2026.04.23
 令和8年度診療報酬改定では、従来の外来データ提出加算の見直しとして、「充実管理加算」といわれる評価体系が導入されました。これにより、外来診療の評価は「何を実施しているか」から、「ガイドラインに準拠した診療が行われているか」「実績として管理できているか」へと大きくシフトしています。慢性疾患では、診療の継続だけでなく、その結果をどのように可視化し、データとして示すかが重要になります。この記事では充実管理加算についての基本的な説明から医療機関として何を目指し、どのように対応していくべきかを解説します。

【執筆者】五十嵐萌子
外科医。大学病院に勤務。医療DXや電子カルテ活用、慢性疾患診療について執筆。現場医師の視点から、診療の質向上と業務効率化の両立をテーマに情報発信している。

充実管理加算とは何か

 令和8年度診療報酬改定では、生活習慣病管理料を中心に、外来診療の評価体系の見直しが行われました。その中核となるのが、診療実績データの提出に基づく評価の導入です。

 いままで「外来データ提出加算」とされていたものが「充実管理加算」と名称が変更になり、さらにその中でも複数の区分(加算1・2・3)に分かれています。この区分は実績の高い医療機関ほど高い評価を受ける構造となっています。特に、集計期間における実績値が、届出を行う医療機関全体の中で上位20%(加算1)、上位50%(加算2)に入ることが要件とされており、慢性疾患管理において一定の相対評価的な要素が導入された点が特徴です。

 また、この見直しに伴い、外来データ提出加算における「外来様式1」が大幅に再設計されています。調査項目の簡素化とともに、データに基づく評価を推進するための項目が整理され、より実態に即した形へと見直されました。すなわち、日常診療で入力している内容や検査結果そのものが、そのまま評価に直結する構造へと移行しています。

対象疾患

 評価の対象となるのは、生活習慣病管理料で扱われる「脂質異常症」「高血圧症」「糖尿病」の3疾患です。

 これらの評価は疾患ごとに独立して行われるとされており、いずれも検査頻度や外来継続率といった指標が重要になってくる予想です。また、糖尿病については眼科・歯科との連携実績が評価指標に含まれることが示唆されており、地域の医療機関との連携体制の構築が重要になります。

 さらに、生活習慣病では複数の疾患を併存する患者も少なくありません。どの疾患を主病として管理するかによって適用される区分が変わる可能性があり、院内で主病登録の考え方を統一しておくことも重要です。

 これらの診療データは、見直された外来様式1に対応した形で提出され、その実績に応じて評価が変動する仕組みとなっています。

各疾患の評価指標は?

 今回の評価体系では、各疾患の具体的な指標の詳細は今後の通知で明文化される部分もありますが、既に示されている方向性から、一定の傾向は読み取ることができます。

 例えば、定期的な検査が適切に実施されているか、患者が継続的に通院できているか、ガイドラインに沿った治療が行われているかといった点は、いずれの疾患においても共通する評価の軸となります。

 糖尿病においては、HbA1cの測定頻度や合併症管理の実施状況、高血圧では血圧管理の継続性、脂質異常症では定期的な採血と治療継続の状況など、疾患ごとの特性に応じた評価が想定されます。

 いずれも「やっているか」ではなく「継続的に管理できているか」が問われてくるでしょう。

 また今回の改定は、診療データの提出と管理実績の評価を軸としたものですが、その先には、治療結果そのものを評価する仕組みへの移行も見据えられています。例えば、HbA1cの改善率や腎機能低下の抑制といったアウトカム指標が評価に組み込まれる可能性もあり、今回の制度はその前段階と捉えることができます。

必要な対応と準備

1.記録の標準化とデータ整理

 外来診療に関するデータを、継続的かつ適切な形式で遅延なく提出するためには、記録のばらつきの抑制、診療内容の整理、フォーマットの統一が求められます。特に非常勤医師が関わる医療機関では、記録様式の統一は不可欠です。自院でどのように診療データが記録されているか、データとして抽出・整理できる状態になっているか確認しましょう。

 すでに電子カルテを導入済みであれば新しい「外来様式1」に対応できるか、未導入であれば記録様式の統一が必要になります。また、この評価は一定期間の実績の蓄積を前提とした構造であるため、早期にデータ提出体制を整備した医療機関ほど有利になる可能性があります。

2.スタッフ教育

 複数の慢性疾患を有する患者において、どの疾患を主病として管理するか、またデータ提出時のフォーマットをどのように扱うかなど、スタッフ間での認識を統一しておくことが重要です。

 こうした整理は、診療の効率化だけでなく、非常勤医師への円滑な引き継ぎにもつながります。結果として、評価に必要なデータの取りこぼしを防ぐための基盤となります。これらの準備は、単なる加算対応にとどまらず、診療の標準化と質の安定化にも直結します。

3.継続受診率の改善

 今回の評価体系では、どの疾患においても継続受診率が評価要素となります。そのため、単にデータを整備するだけでなく、患者が継続的に通院できる環境を整えることも求められます。例えば、予約方法の見直しや次回受診の明確化、フォロー体制の整備などを通じて、通院の継続を支える仕組みを構築していく必要があります。

 電子カルテや予約方法の導入コストが必要となる場合もあるため、すべての医療機関が無理に上位区分を目指すべきかについては慎重な判断も必要です。現在の患者層や診療体制に応じて現実的な範囲で対応していくことが重要であり、あわせてシステム導入や運用整備にかかるコストと自院の状況とのバランスを見極める視点が不可欠です。評価向上のみを目的とした過度な投資ではなく、日常診療の効率化や継続的な運用が可能かという観点から判断することが、結果として持続可能な対応につながります。

経過措置について

 改定資料では、既に外来データ提出加算の届出を行っている医療機関について、経過措置として一定期間、上位区分(加算1相当)の評価がなされる取り扱いが示されています。

 また、外来データ提出加算の届出医療機関数は、令和6年3月時点では62施設にとどまっていましたが、その後約1年で1,500施設を超えるまでに増加しており(出典:中医協 総―17.10.17 外来(その2))、先行して対応を進める医療機関は急速に増えつつあります。

 こうした流れを踏まえると、現時点で自院がデータ提出体制に対応できているかを確認することが、今後の対応の出発点となります。

まとめ

 令和8年度診療報酬改定では、慢性疾患外来の評価が大きく変化しました。「充実管理加算」は、慢性疾患診療の質を可視化し、医療機関ごとの差を明確にする仕組みです。

 その中で、診療データの管理と活用は不可欠となります。電子カルテによるデータ管理は診療の効率化や評価向上にもつながり、結果として経営面での回収にも寄与する可能性があります。まずは、自院の診療データがどのように記録されているかを確認することが、実務対応の第一歩となります。

 今後の慢性疾患外来では、単に診療を行うだけでなく、その結果をデータとして示し、継続的に管理していく体制そのものが評価される時代に入ったといえるでしょう。

参考資料

1. 厚生労働省:中医協 総ー17.10.17:外来(その2)

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