GLP-1受容体作動薬が精神疾患の悪化リスクを抑制する可能性

糖尿病患者は一般集団に比較し、うつ病や不安症のリスクが高いことが知られており、自殺による死亡が多いとする報告もある。一方、近年になりGLP-1RAが認知機能や薬物使用障害などに対して保護的に働くという報告、または逆にうつ病や不安症などのリスクを増大させるという報告もあり、一貫したエビデンスは得られていない。このような背景から、Taipale氏らは、スウェーデンの全国電子医療データベースの大規模サンプルを用いた検討を行った。
2009~2022年に糖尿病用薬が処方されていて、うつ病または不安症の診断歴がある9万5,490人(平均年齢50.6±12.3歳、女性59.7%)を解析対象として、GLP-1RA処方の有無と精神疾患の悪化との関連を解析した。交絡因子の影響を低減するために個人内デザインを用いて、同一個人内における薬剤の使用期間と非使用期間の間でアウトカムを比較した。主要評価項目は精神疾患の悪化であり、精神科入院、精神疾患による14日以上の欠勤、自傷行為による入院、自殺による死亡から成る複合エンドポイントを設定した。副次評価項目は、うつ病または不安症の悪化、物質使用障害の悪化、および自傷行為とした。
解析対象者のうち5万2,385人(54.9%)がうつ病、7万7,819人(81.5%)が不安症と診断されており、3万4,714人(36.4%)はそれら双方の診断が記録されていた。GLP-1RAが処方されていた患者は2万2,480人(23.5%)であり、内訳はセマグルチドが最多で1万3,445人だった。5.2±3.9年の追跡期間中、3万2,638人に主要評価項目である精神疾患の悪化が1回以上認められた。
GLP-1RAの処方は、処方なしとの比較において精神疾患悪化リスクの低下と関連していた。薬剤別に見ると、セマグルチド(調整ハザード比〔aHR〕0.58〔95%信頼区間0.51~0.65〕)とリラグルチド(aHR0.82〔同0.76~0.89〕)で有意なリスク低下が認められた一方、エキセナチド(aHR1.01〔0.69~1.46〕)とデュラグルチド(aHR1.01〔0.85~1.20〕)では有意な関連は認められなかった。
副次評価項目については、セマグルチドはうつ病(aHR0.56〔0.44~0.71〕)、不安症(aHR0.62〔0.52~0.73〕)、物質使用障害(aHR0.53〔0.35~0.80〕)の悪化リスク低下と関連し、リラグルチドはうつ病(aHR0.74〔0.64~0.87〕)の悪化リスク低下と関連していた。またGLP-1RA全体として、自傷行為(aHR0.56〔0.34~0.92〕)のリスク低下と関連していた。
論文の共著者の1人である同大学のMarkku Lähteenvuo氏は、「これはレジストリに基づく研究であるため、GLP-1RAがどのような機序で精神状態に影響を及ぼすのかを探ることはできないが、関連性は非常に強いものだった。アルコール摂取量の減少、体重減少に伴うボディーイメージの改善、血糖コントロールの改善に伴う症状の緩和といった要因に加え、脳の報酬系の機能変化などの神経生物学的メカニズムも関与している可能性が考えられる」と考察している。
なお、2人の著者がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。
[HealthDay News 2026年3月25日]
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