国際腹膜透析学会(ISPD)が在宅透析の普及促進を提唱

2024.11.06
国際腹膜透析学会(ISPD)は、2024年9月26日(木) ~ 9月29日(日)にドバイで開かれたISPD 2024/国際腹膜透析医学会2024にて、国際腎臓学会(ISN)とISPDとの共同マニフェストについて言及し、在宅透析の世界的な普及に向け、改めて呼びかけを行った。ここに至るまでの在宅透析をめぐる国際的な学会や団体の動きを簡単に振り返るとともに、共同マニフェストの内容を紹介する。

あらゆる国で、在宅での透析を行いやすくするために

 腎臓病患者にとって在宅透析は、通院透析と比べて「個々のライフスタイルを維持しやすい」「治療満足度が高い」「医療スタッフへの依存度が低く自立した生活を送りやすい」等の利点があるが、その利用度は世界的に低いものとなっている。

 

 在宅透析を巡るここ5年の世界的な動向は、以下のような流れだ。

 

 COVID-19によるパンデミックの状況下で通院透析と比較したメリットがクローズアップされ、2020年秋の国際在宅透析会議(IHDR)において、在宅透析の普及促進戦略が議題にあがった。さらに2021年5月、国際腎臓病予後改善機構(KDIGO)のコントラバシーズカンファレンスにおいて、在宅透析の世界的なアクセスと普及を改善する様々な戦略について検討された。そして在宅透析の世界的な普及を促進することを目的に、ISNとISPDが協力して国際在宅透析コンソーシアム(IHDC)を結成し、活動を開始したのは2022年のこと。

 

 こうした団体が積極的に活動を行う流れのなか、2024年4月に開催されたWCN 2024 inアルゼンチン/世界腎臓学会にて、在宅透析の普及促進に向けての活動目標である「IHDCマニフェスト」が作成された。
 ISPDは9月にドバイで開かれたISPD 2024/国際腹膜透析医学会2024で、ISNと共同で作成したこのマニフェストについて改めて言及し、在宅透析の世界的な普及に向けて呼びかけを行った。

 

ISPDはマニフェストについて、次のように述べている(以下、要約)。
※詳細は原文を参照してください。


 私たちは自宅で透析<腹膜透析(PD)及び在宅血液透析(HHD)>を行いやすくするための世界的な取り組みを国際腎臓学会(ISN)と共に進めています。
 在宅透析が普及するためには、障壁となっているものは何かを認識し、それを克服する活動を展開する必要があります。そのためにIHDCは、透析臨床に従事する医療者から成る世界的な運営団体を結成しました。

 

 IHDCは、在宅透析のメリットをより多くの患者にもたらすことを最終的な目標として、それぞれの国・地域の腎臓学会、患者団体、研究者、商業パートナー、医療政策や資金調達の責任者と協力し、アイデア、努力、アドボカシーを世界中で活用していきたいと考えています。

 

 ISPDとISNは、すでにIHDCのマニフェスト(以下に掲載)に署名しています。
 IHDCは、他の団体にもこのマニフェストを読んでいただき、在宅透析の世界的な推進の呼びかけに加わるよう働きかけています。

 

出典:https://ispd.org/ihdc/


国際在宅透析コンソーシアム宣言(IHDCマニフェスト)

※詳細は原文を参照してください。

 

 どんな腎代替療法にも救命の可能性があり、腎代替療法がすべての腎不全患者に利用可能で、かつ行いやすい費用で受けられるようにすることは、世界のどの国においても、重要な優先事項とするべきです。

 

 すでに腎代替療法を利用できている人にとっても、在宅透析には特別な利点があります。

 

 在宅透析(「腹膜透析」および「在宅血液透析」)の環境を整備することにより腎代替療法へのアクセスが世界的に拡大すれば、腎不全治療における患者の体験や医療の質、公平性の向上が期待できます。

 

 本マニフェストは、以下の取り組みによる在宅透析の推進を世界に提唱する公式な宣言です。


  • ■腎不全患者に在宅透析の利点をもっと認識してもらう。
  • ■透析を必要とするすべての腎不全患者とその介護者に対して、在宅透析を含むあらゆる治療選択肢の情報提供を行う。
  • ■あらゆる医療環境において、患者中心の価値観に基づく統合医療の一環として、在宅透析を腎不全患者へ提供する。
  • ■あらゆる医療環境において、計画的であるか緊急であるかに関わらず、腎不全患者が透析の方法を共同意思決定(SDM)に基づいて選択できるようにする。
  • ■患者自身が適切な範囲で透析治療に責任を持てるよう、自己管理を通じて自立を促し、サポートを行う。
  • ■腎臓専門医、看護師、かかりつけ医、栄養士、ソーシャルワーカー、技術者を含む医療従事者に対して、在宅透析についての教育とトレーニングを行う。
  • ■地域のニーズや現実的な経済状況に合わせながら、在宅透析促進の取り組みを支援できるよう、政策立案者、保険会社等の支払者、透析関連企業と連携を深める。
  • ■腎臓病関連の学会、患者支援団体、民間の透析企業と協力し、在宅透析サービスを提供するための国際的な枠組みを構築する。
  • ■政策立案者に対するアドボカシー活動に役立つ政策概要を作成する。
  • ■在宅透析プログラムの継続的な質の向上をサポートするツールと、監査プロセスを作成する。
  • ■インフラにかかる費用を含む透析医療を提供するために必要な総費用を考慮し、その価値に基づいた償還制度の設計が円滑に進むようにする。
  • ■在宅透析に対する公平で公正な償還を確保し、経済的な障壁を取り除くとともに、患者が最適な透析の方法と透析場所を選べるよう積極的に支援する。

出典:https://ispd.org/wp-content/uploads/IHDC-Manifesto-1.pdf

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