東京栄養サミット2021 アクションプラン 「食:健康的で持続可能な食料システムの構築」に向けて行動を開始
低栄養と過栄養が同時にある「栄養不良の二重負荷」を解消するために
農林水産省は、2021年12月に開催された「東京栄養サミット2021」に関連し、アクションプランと食関係者の取り組みに関するレポートを公開した。
いまだ世界の多くの国や地域が、飢餓・貧困の撲滅に向けて努力を続けている一方で、日本のような飢餓・貧困を脱した国では、過栄養と低栄養が同時に存在する新たな栄養課題「栄養不良の二重負荷」が拡大している。
「栄養不良の二重負荷」とは、過体重・肥満・食事が関連する2型糖尿病や循環器疾患などの慢性疾患にみられる「過栄養」と、やせ・フレイル・サルコペニア・発育阻害・貧血・微量栄養素の欠乏などの「低栄養」が個人や世帯、集団のなかで同時にみられること。
個人でも、生涯のなかで低栄養と過栄養の時期がそれぞれある場合もある。たとえば、中年期には食べ過ぎや運動不足で肥満やメタボのリスクが高かったのが、高齢になってから十分な食事を摂れなくなり、体重が減り、心身が弱った状態であるフレイルや、筋力が低下するサルコペニアのリスクが高まる人は多い。
日本人の食の経験は世界の栄養改善に役立てられる
この新たな課題である「栄養不良の二重負荷」を解消するために、官民一体の栄養改善が必要として、賛同する日本の食関係の企業による、健康的で持続可能な食料システムの構築に向けた行動を開始する。
この二重負荷に苦しむ国では、肥満や2型糖尿病などの生活習慣病を予防・改善するために、栄養バランスを意識した食習慣をつくることで、誰もが健康で安心して生活できる社会を築くことができるとしている。
日本がすでに取り組んでいる栄養課題への取り組みも多く、そうした経験のなかには海外の国や地域で活用できるヒントが多くある。
たとえば、日本では明治時代以降、栄養改善運動に呼応して、日本の食の伝統である発酵技術を生かしながらも適度に欧米食を取り入れ、調理や保存法を工夫し、「うま味」を活用した「おいしい健康な食事」へ改良してきた。
これは、食品産業が海外の技術を取り入れながらイノベーションを起こすことによって実現されたもので、健康的な食事が手ごろな価格で、広く国民に提供されてきた。
日本では、学校給食・栄養教育や、民間企業による食品開発と供給など、栄養改善について優れた知見が蓄積されている。また、肥満や2型糖尿病など、過栄養と栄養不足が同時に関わる慢性疾患にも、さまざまなレベルで取り組んできた経験がある。
そうした経験を、栄養不足や栄養バランス不良に苦しんでいる途上国・新興国を助けるためにも役立てようというものだ。
民間企業のアイデアとイニシアティブにも期待
「栄養不良の二重負荷」を解消するために、官民が連携した取り組みが必要となる。日本が培ってきた技術と知見を活かして、民間企業のアイデアとイニシアティブをもとに、国民の栄養状態を改善するために食品を供給するなど、栄養改善事業(ビジネス)を推進するための枠組みとして、「栄養改善事業推進プラットフォーム(NJPPP)」が立ち上げられた。
日本の食関連の企業活動に関わるすべての人々(ステークホルダー)は、これまでの経験をふまえ、東京栄養サミットの成果のひとつである「食:健康的で持続可能な食料システムの構築」の実施に向けて、次の点を重視して行動するとしている。その進捗状況は、次回の栄養サミットのときに、ふたたび共有される。
行動計画を示している企業や教育機関・研究機関などは、計62団体に及び、農林水産省のサイトで公開されている。
食料システムの変革
食関連産業のイノベーションの推進
個人の栄養に関する行動変容の促進
途上国・新興国の栄養改善への支援
農水省のサイトには、上記のアクションプランに加えて、このアクションプランに賛同する62の食関係の団体・企業から発表された、健康的で持続可能な食料システムの構築に向けた行動計画が報告されている。
栄養改善事業推進プラットフォーム(NJPPP)
誰一人取り残さない 日本の栄養政策 ~持続可能な社会の実現のために~ (厚生労働省)