糖尿病網膜症患者の診断精度の向上へ 「青波長走査型レーザー広角眼底写真」で網膜虚血を非侵襲・簡易に検出

2021.09.15
 糖尿病網膜症の管理では、網膜の血管閉塞による網膜無血管野を発見し、光凝固などを行って網膜新生血管などの重篤な合併症を抑制することが重要となる。

 無血管野の描出には、造影剤の注射をともなう蛍光眼底造影検査が必須となっているが、この検査にはハードルがあり、網膜虚血を確認できず治療が遅れてしまう症例も少なくない。

 そこで東京医科歯科大学などは、青波長の走査型レーザー検眼鏡による広角眼底写真が、造影剤を使用することなく、広範囲の眼底の網膜無血管野を高率に検出できることを示した。

 この方法は、非侵襲的かつ簡易であり、糖尿病網膜症患者の診断精度の向上と重症化の未発見による失明を防ぐことに寄与するとしている。

走査型レーザー検眼鏡による広角眼底画像の精度を検証

 東京医科歯科大学などの研究グループは、青波長の走査型レーザー検眼鏡による広角眼底撮影の単一の眼底写真が、造影剤を使用せずに、広範囲の眼底の網膜無血管野を高率に検出できることを示した。

 糖尿病網膜症は、網膜毛細血管の障害と血管からの血液・血漿成分の漏出を主とする病態から、毛細血管床の閉塞(無血管野の形成)へ進行し、さらに無血管野での網膜虚血により、重篤な合併症である網膜血管新生を生じる。

 網膜虚血と新生血管をともなう増殖期では、網膜光凝固が必要で、増殖前網膜症の段階で網膜無血管領域を早期に発見し、網膜光凝固することで増殖網膜症への進行を抑制することを期待できる。そのため、糖尿病網膜症で網膜虚血を発見することは臨床上非常に重要になる。

 しかし、網膜無血管野をみつけるためにはフルオレセイン蛍光眼底造影検査が必要であり、造影剤の使用が難しい患者がいることや、アナフィラキシーショックなど一定のリスクがともなうという課題がある。また近年、造影剤を使用しないOCTアンギオグラフィーもあるが、眼底の周辺部まできれいな画像を得るのは臨床上困難だった。

 そこで研究グループは、糖尿病網膜症を対象に、赤緑青の3色を有する走査型レーザー検眼鏡(ニデックのミランテ)の青波長の広角眼底画像を通常の蛍光眼底造影検査の所見とともに比較検討した。

 走査型レーザー検眼鏡は、単一または複数のレーザー光による眼底撮影方法で、近年は小瞳孔や眼底の広範囲を一度に撮影できる広角眼底撮影が可能なさまざまな機種が開発されている。

 研究は、ニデックとの同学ジョイントリサーチ講座の研究として行われたもの。ニデックのミランテは、網膜赤道部までカバーする163度の広角眼底撮影と赤緑青の3波長による3色合成カラー画像が得られることが特徴となる。

造影剤なしで糖尿病網膜症での網膜虚血を高率に検出

 その結果、蛍光眼底造影検査で検出された網膜無血管野の約8割以上は青波長のレーザー走査型広角眼底画像でも確認できることが示された。

出典:東京医科歯科大学、2021年

 糖尿病網膜症の進行を示す網膜無血管野を調べるためには蛍光眼底造影検査を行う必要があるが、この検査にはハードルがあり、網膜虚血の存在が確認できず治療が遅れてしまう症例も少なくない。

 今回の研究では、青波長の広角走査型レーザー眼底撮影は、造影剤なしで糖尿病網膜症での網膜虚血を高率に検出できることが示された。また、糖尿病網膜症の無血管野の形成は網膜の広範囲に生じるため、広角眼底撮影の単一画像で無血管野を見落とすことなく簡易に検出できる可能性も示唆された。

 「同方法は非侵襲的かつ簡易であるため、広く糖尿病網膜症患者の診断精度の向上につながり、新生血管のような重篤な合併症を起こす前に無血管野に対する治療を行えることで失明防止に貢献すると考えられます」と、研究グループは述べている。

 研究は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野の大野京子教授と先端視覚画像医学講座の堀江真太郎ジョイントリサーチ講座講師の研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Asia Pacific Journal of Ophthalmology」にオンライン掲載された。

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 眼科学分野
Blue widefield images of scanning laser ophthalmoscope can detect retinal ischemic areas in eyes with diabetic retinopathy(Asia Pacific Journal of Ophthalmology 2021年8月27日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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