低所得の2型糖尿病患者は死亡リスクが高い 若年者で顕著 低収入は血糖管理不良などに影響
低所得の若年の2型糖尿病患者は死亡リスクが高い
糖尿病患者の収入と罹患率・死亡率のあいだに逆相関が
低所得の20~39歳の若年の2型糖尿病患者は死亡リスクが高いことが、韓国の20~79歳の成人124万780人を対象とした全国コホート研究で示された。高齢者グループ(40~59歳および60~79歳)では、死亡リスクは相対的に高いが、所得に関連する格差は若年者グループほど顕著ではなかった。
韓国ソウルの高麗大学校医学部内科のSin Gon Kim氏やNam Hoon Kim氏らによるもの。研究成果は、「JAMA Network Open」に掲載された。
過去の研究で、所得と死亡率のあいだには逆相関があることが示されているが、2型糖尿病の若年成人と高齢成人の所得レベルによる健康アウトカムの格差についてはよく分かっていない。
そこで研究グループは、韓国国民健康保険公団(NHIS)の、後ろ向き全国コホート研究に参加した、2008年1月1日~2013年12月31日に2型糖尿病と診断され2019年12月31日まで追跡された20~79歳の成人(60万4,975人)と、年齢と性別が一致した糖尿病のない対照群(63万5,805人)を対象とした、2023年1月1日~2024年8月27日の医療データを解析した。
平均年齢(SD)は56.9(11.8)歳で、男性は62万6,176人(50.5%)だった。全死因死亡、心血管疾患死亡、がん死亡のリスクを、参加者の所得に応じて推定し、健康保険料にもとづき3つのレベル(低、中、高)に分類した。ロジスティック回帰分析とCox比例ハザード回帰分析を、年齢グループ(20〜39歳、40〜59歳、60〜79歳)ごとに実施した。
その結果、全体的に2型糖尿病群では糖尿病のない対照群と比較し、収入が低いほど死亡リスクは高くなった。糖尿病のない対照群と比較した全死亡率の調整オッズ比は、高所得の2型糖尿病サブグループでは1.47[95%CI 1.44~1.50]、中所得では1.79[同 1.75~1.83]、低所得では2.03[同 1.99~2.08]だった
とくに若年者で所得と死亡リスクのあいだの逆相関が顕著で、2型糖尿病の低所得者と高所得者を比べた全死因死亡率の調整ハザード比は、20~39歳では2.88[95%CI 2.25~3.69]、40~59歳では1.90[同 1.81~2.00]、60~79歳では1.26[同 1.23~1.29]となった[年齢群間のリスク比の比較ではP <.001]。
若年者での所得関連の格差のパターンは、心血管疾患による死亡率で示され、がんによる死亡率では少なかった。また、20~39歳の低所得者と高所得者の2型糖尿病サブグループのリスク比は、60~79歳の患者よりも高かった[P <.001]。
「収入は個人の健康に影響を与える重要な社会経済指標となる。過去の研究でも、糖尿病患者の収入と罹患率あるいは死亡率のあいだに逆相関が示されている。低収入は、血糖管理不良、合併症や心血管リスク因子の不十分な管理のリスクが高いことと関連している」と、研究者は述べている。
「若年者での2型糖尿病の発症率と有病率は世界中で増加している。若年発症の2型糖尿病患者は血糖管理が不良で、糖尿病合併症のリスクが高い傾向がある。これは若年者の生物学的特徴によるものもあるが、行動要因の影響も大きい。そのため、社会経済的地位が健康結果に与える影響は、これらの個人でより顕著になる可能性がある。所得に関連する若年層の健康格差を減らすために、社会経済的支援が必要とされている」としている。
Income-related disparities in mortality among young adults with type 2 diabetes (JAMA Network 2024年11月12日)
Income-Related Disparities in Mortality Among Young Adults With Type 2 Diabetes (JAMA Network Open 2024年11月12日)