植物性食品中心の「低炭水化物ダイエット」で2型糖尿病患者の死亡リスクが低下
Hu氏らは、米国内の看護師を対象に実施されている「Nurses' Health Study;NHS」と、医療従事者対象の「Health Professionals Follow-up Study;HPFS」という二つの大規模コホート研究のデータを用いて、低炭水化物ダイエットと生命予後との関連を検討した。約34年間(13万9,407人年)の追跡中に1万101人(NHSで女性7,224人、HPFSで男性2,877人)が2型糖尿病を発症し、そのうち4,595人の死亡が記録されていた。1,389人が心血管死、881人ががん死だった。
研究参加者の食事スタイルに関しては、数年おきに実施されていた食事調査にもとづき炭水化物摂取状況をいくつかの指標で評価した。それらの指標の一つは、炭水化物の総摂取量が少ないほどスコアが高いというもの(total low-carbohydrate score;TLCDS)。他の指標は、動物性食品中心の食事スタイルか(animal low-carbohydrate score;ALCDS)、植物性食品中心か(vegetable low-carbohydrate score;VLCDS)などによって、低炭水化物ダイエットの質を評価するもの。
低炭水化物ダイエットの評価結果と死亡リスクとの関連を解析すると、炭水化物総摂取量が少ない人の方が死亡リスクの低いことが分かった。ただし、低炭水化物ダイエットの質の評価結果との関連を見ると、動物性食品中心の低炭水化物ダイエットをしている人では、有意な死亡リスクの低下が認められなかった。具体的には、TLCDSが10点高い場合の全死亡リスクのハザード比(HR)は0.87(95%信頼区間0.82~0.92)〕、VLCDSが10点高い場合にはHR0.76(同0.71~0.82)〕と、ともに有意であるのに対して、ALCDSが10点高い場合はHR0.95(同0.90~1.00)と非有意だった。
この結果にもとづき著者らは、「われわれの研究結果は、2型糖尿病の管理のために炭水化物の摂取を制限するという現行の推奨事項を支持するものだ。また、低炭水化物ダイエットによる健康上のメリットの評価には、栄養素や食品のバランスが重要であることも示唆している」と述べている。
近年、低炭水化物ダイエットの減量および血糖改善効果が注目されている。低炭水化物ダイエットは、ケトン体産生を目的とするより厳格な糖質制限である「ケトジェニック食」に比べれば負担なく続けやすい。ただし、今回の研究では、TLCDS上位20%の人の摂取エネルギー量に占める炭水化物の割合は、約40%だった。この点について、米国の栄養と食事のアカデミーのスポークスパーソンであるJulie Stefanski氏は、「約40%という割合は、厳密な意味での低炭水化物ダイエットより多い。糖尿病患者は炭水化物の摂取量に注意する必要があることは確かだが、栄養面で優れている植物性食品を十分に摂取するためには、その制限を緩やかにするという考え方も必要ではないか」としている。
[HealthDay News 2023年3月24日]
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