糖尿病を完治させる治療薬を開発 異常幹細胞を標的とする糖尿病治療の実現に向けて 滋賀医科大学など
膵島を再生し糖尿病を完治することは理論的に可能
滋賀医科大学とマーチャント・バンカーズは、産学連携により糖尿病治療薬の開発を推進する創薬ベンチャーとしてバイオジップコードを設立。同大学に設置した再生医療開拓講座(共同研究講座)の特別教授である小島秀人氏を中心に、糖尿病を完治する治療薬の開発に取り組んでいる。
滋賀医科大学ではすでに、小島特別教授を中心に、2013年に生化学・分子生物学講座、再生・修復医学部門をスタートし、また2016年には医学部附属病院内に再生医療室を開設し、細胞調整室を作り、再生医療としての臨床基盤を整えてきた。
これまでに、膵島の分化を誘導する転写因子NeuroD遺伝子ならびにβ細胞の増殖因子ベータセルリンを、ヘルパー依存型アデノベクターに組み込み、糖尿病動物に投与し、明らかな肝障害を示さず、血糖値は正常化、ブドウ糖負荷試験での血糖反応、インスリン反応ともに正常との差を認めないところまで改善させることに成功するなど、成果を生んでいる。
研究は、遺伝子治療により、膵島という臓器を丸ごと肝臓内で再生させ、インスリン依存型糖尿病を完治させることが理論的に可能であることを示した、世界ではじめての画期的なものとしている。
「糖尿病を完治させる治療薬」「細胞標的化技術」の開発に取り組む
小島特別教授は同大学で「糖尿病を完治させる治療薬の開発」「細胞標的化技術の研究開発」の研究に取り組んできた。共同研究講座では、再生医療、とりわけ糖尿病などの難治性疾患の病因と考えられる造血幹細胞を特定するなど、独自に取り組んできた数々の研究を集大成し、これらを完治する治療薬の開発に取組んでいる。
バイオジップコードは、糖尿病の治療法に関する2件の発明(異常幹細胞を標的とする糖尿病治療、幹細胞遊走剤を使用した糖尿病治療、ともに国内特許および国際特許の審査が進行中)の権利を同大学から譲り受けている。
これら発明は、糖尿病が完治しない原因となっている異常な幹細胞を、小島特別教授が発見したことにもとづくもので、その異常な幹細胞をターゲットにすることで、糖尿病の新たな診断薬の開発や、糖尿病を完治させる画期的な医薬品などを開発するのに必要としている。
糖尿病以外の治療薬のリポジショニングも
共同研究講座では、同大学で独自に発見し、治療法を開発してきた技術を応用し、糖尿病・がん・自己免疫疾患などの難治性慢性疾患、多臓器不全ならびに従来の手術療法や薬物療法に治療抵抗性を示す病態に対し、既存薬の効能拡大(リポジショニング)や新薬開発を進めている。
このうち既存薬のリポジショニングは、糖尿病以外の疾患向けに治療薬として発売されている既存薬が、糖尿病を完治させることを、小島特別教授が動物実験で確認・証明し、糖尿病や合併症を完治させる治療薬として開発するもの。
リポジショニングによる開発の場合、既存薬としてヒトでの安全性と体内動態が確認されていることから、臨床試験のうち、健康な成人を対象に安全性と体内動態を確認する第1相試験を行う必要がない可能性もあり、10年以上かかるとされる新薬の開発期間及び開発コストを大幅に削減できると期待している。
この治療薬は、2型糖尿病だけでなく、主に自己免疫が原因に関わり、より完治が難しいとされる1型糖尿病にも適用が可能としている。実際に患者に対して使用するための治験計画を策定し、患者の治療プロトコール作成ならびに実際の治験を実施し、2027年までの発売開始を目指す。
また、同大学が開発を進めている細胞標的化ペプチドを用いた新たな薬物送達技術への応用や医療材料の開発も進め、臨床応用を目指すとしている。
糖尿病や再生医療などの独自の技術とノウハウを活かす
2022年時点で、同大学が出願している特許は9件あり、特許登録や実用化の可能性が高く、他社の特許侵害をすることはないと判断されているという。今後、事業を進めて行く過程で、必要に応じて、これらを補強するために追加の特許出願を行うとしている。基礎研究の進展とともに、製薬会社との提携に向けてステップアップする。
同社はさらに、共同研究講座の協力体制のもと、糖尿病や再生医療など、長年の研究により集積してきた独自の技術やノウハウを活かし、医薬品や健康食品メーカー、研究機関などを対象に、アドバイザリー業務(学術・技術指導など)への取り組みも開始した。
同社の糖尿病完治治療薬をはじめとする各プロジェクトの進捗については、同社のホームページでも随時掲載するとしている。
滋賀医科大学 生化学・分子生物学講座 再生修復医学部門
バイオジップコード
マーチャント・バンカーズ