座位だけでなく仰臥位でも血圧を測定してリスク評価 CVDリスクと独立して関連
血液は重力によって体の下方に溜まりやすいため、立位、座位、仰臥位などの状態に応じて自律神経系が働き、血圧を適切に維持している。Giao氏は、「座位の血圧のみが測定されているとしたら、仰臥位で血圧が上昇している場合のリスク上昇が見逃されている可能性がある」と述べている。
その可能性を検証するため同氏らは、一般住民のアテローム性動脈硬化リスク因子に関する大規模疫学研究「ARIC研究(Atherosclerosis Risk in Communities Study)」のデータを用いた解析を行った。解析対象者は1万1,369人で、1987~1989年の研究参加登録時の平均年齢が54歳、女性が56%を占めていた。CVDの発症は、2011~2013年の第5回調査まで、25~28年追跡し把握した。
ARIC研究では参加登録時に、座位と仰臥位の血圧値が診察室内で測定されている。130/80mmHg以上を高血圧と定義すると、座位測定で高血圧と判定された人の74%が、仰臥位測定でも高血圧に該当した。一方、座位では高血圧に該当しない人の16%が、仰臥位では高血圧に該当していた。
座位および仰臥位ともに130/80mmHg未満の群を基準として、座位と仰臥位双方の測定結果が高血圧だった群は、座位での血圧値の影響を調整後、冠状動脈性心疾患(CHD)発症ハザード比(HR)が1.60であり、CHDによる死亡はHR2.18、脳卒中はHR1.86、心不全はHR1.83、全死亡はHR1.43だった。また、座位では高血圧に該当せず、仰臥位では高血圧と判定された群のCVDリスクは、座位と仰臥位の双方が高血圧判定基準を満たす群と同様にハイリスクだった。なお、降圧薬が処方されている場合の薬剤のタイプの違いは、これらのリスク上昇に影響を与えていなかった。
Giao氏は、「われわれの研究結果は、心臓病や脳卒中の既知のリスク因子を有する場合、座位のみでなく仰臥位でも血圧を測定してリスクを評価することが、将来的なメリットにつながる可能性のあることを示唆している」と述べている。また、「日常生活で血圧をコントロールする努力は、仰臥位で睡眠中の血圧を下げるのに役立つのではないか。今後の研究で、診察室で測定した仰臥位での血圧値と、夜間睡眠中の血圧値の乖離の有無を検討する必要があるだろう」と付け加えている。
なお、本研究の限界点として、「解析対象が中年期成人のみであるため、高齢者など他の年齢層も含めた解釈の一般化はできない可能性がある」としている。また、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。
[HealthDay News 2023年9月13日]
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