【新型コロナ】唾液でウイルスを5分で迅速検査 感度・特異度90%以上を達成 新型コロナにもPOCTを 大阪大学

2021.06.30
 大阪大学は、人工知能(AI)とナノポアの融合技術の開発により、唾液の5分間計測で、新型コロナウイルスを90%以上の感度・特異度で診断できる手法を開発したと発表した。
 開発したAIナノポア技術は、新型コロナの臨床現場での即時診断と、スクリーニング検査に活用されることが期待される。

AIとナノテクノロジーの融合により高速・高精度検査が可能に

 新型コロナウイルスの蔓延を防止するために、ワクチンと治療薬とともに、迅速で精度の高い検査法が必要とされている。現在使われているPCR検査は、検査のスピードと精度に課題がある。

 早さと精度の両方を満たす新型コロナウイルス検査法がないことが、病院での即時診断や、多くの人が集まる場所でのスクリーニング検査の大きなハードルとなっている。

 そこで、大阪大学の研究グループは、1個のウイルスを電気的に検出して識別する革新的技術を開発した。1個のウイルスを電流で計測できるナノポアと、電流波形を学習する人工知能(AI)を融合させることで、1個のウイルスを高速・高精度に識別することに成功した。

 ナノポアはウイルスより大きな直径を持つ貫通孔。貫通孔は、電解質で満たされ、貫通孔を流れるイオン電流を計測して機械学習することで、1個のウイルス性状を読みとる。

 開発したAIナノポア技術により、新型コロナウイルス患者の唾液検体の5分間の計測で、感度90%、特異度96%を達成した。

 研究は、大阪大学産業科学研究所の谷口正輝教授、同大学微生物病研究所の松浦善治教授(現:感染症総合教育研究拠点拠点長・特任教授(常勤))、同大学大学院医学系研究科の朝野和典教授(現:大阪府立健康安全基盤研究所理事長)らの研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「Nature Communications」に掲載された。

AIナノポア技術による新型コロナウイルス検査の原理
電流波形を機械学習する

出典:大阪大学産業科学研究所、2021年

新型コロナウイルスのPOCT、スクリーニング検査への応用に期待

 研究グループは、このAIナノポアにより、培養されたSARS、MERS、SARS-2、229Eコロナウイルスを高精度に識別し、唾液検体を5分間計測するだけで、陽性・陰性を感度90%・特異度96%で検査できることを実証した。

 また、培養された新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスA型の高精度な識別にも成功した。この技術は、異なるウイルスをAI学習することで新規の病原体検出法も迅速に構築することが可能であり、今後起こりうる新興感染症に素早く対応できると期待されるとしている。

 この検査法を用いた大規模フィールドテストを2021年の春のセンバツ高校野球で実施し、PCR検査との一致率100%も達成した。

 検査室ではなく、臨床現場で、ポータブルな装置やキットを用いて短時間で高精度な検査ができる臨床現場即時診断(POCT)が求められている。「本研究成果により、新型コロナウイルスの臨床現場即時診断とスクリーニング検査の実現が期待されます」と、研究グループは述べている。

大阪大学産業科学研究所
Combining Machine Learning And Nanopore Construction Creates An Artificial Intelligence Nanopore For Coronavirus Detection(Nature Communications 2021年6月17日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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