「飲酒習慣」への簡易介入は高血圧では効果あり 糖尿病患者では効果なし その理由は?

2023.03.02
飲酒習慣に対する実地医家での簡易介入で血圧が低下する可能性

 飲酒習慣のある高血圧患者に対して、プライマリケアレベルで実施可能な簡易介入によって、飲酒量が減り拡張期血圧が低下することを示す研究結果が報告された。一方、糖尿病患者ではそのような効果が認められなかったという。米カイザーパーマネンテ北カリフォルニア病院のFelicia W. Chi氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Open」に1月19日掲載された。

 習慣的な飲酒は血圧や血糖値の管理を困難にし、合併症リスクを高める。飲酒習慣のある患者を禁酒または節酒に導くには、飲酒の弊害について患者に伝え患者の行動変容を促す「簡易介入」を行うか、または専門医へ紹介するという対応がとられる。ただし、高血圧や糖尿病の患者の大半はプライマリケア医で治療を受けており、飲酒習慣に対して前者の簡易介入がなされているケースが多い。これを背景としてW. Chi氏らは、飲酒習慣へのプライマリケアレベルで行われる簡易介入の効果を検討した。

 研究には、北カリフォルニア地方の人口の約3分の1に当たる400万人以上が加入しているカイザーパーマネンテの医療データが用いられ、集団ベースの観察研究として実施された。解析対象は2014~2017年にプライマリケア医を受診し、飲酒習慣に関するスクリーニングで非健康的な習慣と判定された高血圧患者7万2,979人(平均年齢61.6±12.7歳)と2型糖尿病患者1万9,642人(同59.8±12.6歳)。このうち、高血圧患者の45.0%と2型糖尿病患者の42.8%に対して、飲酒習慣に対する簡易介入が行われていた。評価項目は、介入12ヵ月後の飲酒量と、18ヵ月後の血圧とHbA1c、および血圧が3mmHg以上低下した患者とHbA1c8%未満となった患者の割合。

 結果について、まず高血圧患者の飲酒量の変化をみると、簡易介入が行われた群の12ヵ月後の飲酒量は、わずかではあるが非介入群より有意に少なくなっていた。たとえば、飲酒をする日の飲酒量は-0.06ドリンク(95%信頼区間-0.11~-0.01)の差があり、1週間の飲酒量では-0.30ドリンク(同-0.59~-0.01)の差が認められた(なお、「米国民向け食事ガイドライン」には14gの純アルコールを含むアルコール飲料を「1ドリンク」とすると記されている)。

 また、18ヵ月後に拡張期血圧が3mmHg以上低下していた患者の割合は、簡易介入群の方が有意に多かった〔オッズ比(OR)1.05(同1.00~1.09)〕。収縮期/拡張期血圧の変化幅、および収縮期血圧が3mmHg以上低下した患者の割合については、群間差が非有意だった。

 一方、糖尿病患者については、飲酒量、およびHbA1cの変化幅、HbA1c8%未満となった患者の割合のいずれも、介入群と非介入群との間に有意差が認められなかった。たとえば、12ヵ月後に飲酒をする日の飲酒量は介入群が非介入群に対して-0.11ドリンク(-0.24~0.02)、1週間の飲酒量は-0.13ドリンク(-0.79~0.53)であり、18ヵ月後にHbA1c8%未満であることの介入群のオッズ比は1.08(0.99~1.18)だった。

 著者らは、「高血圧患者の飲酒習慣に関する、プライマリケアでのスクリーニングとその結果に基づく簡易介入が、患者のアウトカム改善につながる可能性がある。ただし、2型糖尿病患者に関しては、有意な効果が確認されなかった」と結論付けている。

 なお、2型糖尿病患者では有効性が確認されなかった理由について著者らは、「根底にあるメカニズムは不明」としつつ、HbA1cには疾患重症度、薬物介入の程度、患者の服薬アドヒアランスや飲酒以外の生活習慣など、影響を及ぼす因子が多数存在することの影響を指摘している。また、プライマリケアレベルの短い診察時間内に、それら多くの介入すべき因子に関連する療養指導を行わなければならないという状況も、結果に影響を及ぼした可能性があるという。

 論文ではこれらの考察の上、「糖尿病患者の飲酒習慣に対する介入は、対象者の属性や健康状態を考慮したさまざまなアプローチが必要と考えられる」と付け加えられている。

[HealthDay News 2023年2月7日]

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