日本初の「全世代対応型遠隔メンタルヘルスケアシステム」 若年者のメンタルヘルスに焦点 精神・神経医療研究センターなど

2022.11.07
 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)などは、思春期を主とした若年者のメンタルヘルスに焦点を当てた、いつでもどこでも誰でもアクセスできる全国規模の全世代対応型遠隔メンタルヘルスケアシステム「KOKOROBO-J」の開発に着手した。

 児童・思春期から成人までのライフコースを通じて、メンタル不調の予防、メンタル不調者の早期手当、必要な人への医療への橋渡しを行う、いつでもどこでも誰でもアクセス可能なシステムを目指す。同世代やピアサポーターとの交流、地域支援者への相談アクセスまでをサポートする。メンタルヘルスケアが当たり前の社会を醸成するとしている。

精神疾患は誰でも罹患しうる一般的な病気

 健康とメンタル不調・精神疾患発症には連続性があり、精神疾患は誰でも罹患しうる一般的な病気(common disease)だが、新型コロナの流行以前より、十分に社会に浸透していなかった。

 研究グループは、このような理解が当たり前のこととして、社会に浸透することが、メンタル不調や精神疾患の予防や早期治療に欠かせない課題と考えられるとしている。

 また、諸外国と比べ、種々のサービスが提供されているが、メンタルヘルスサービスへのアクセスが十分でなく、必要な人に必要な情報が必要な時に容易に届かないことも課題とされている。

 こうした背景のなか、新型コロナが流行し、とくに思春期で、うつ病、不安障害が増加し、2020年小中高生の自殺者も過去最大となった。子供の精神的幸福度(こころの幸福度)は、OECDに加盟する先進国の中で37/38番目ときわめて低く、身体的幸福度がOECD加盟国中1位であるのと対照的であり、若い世代へのメンタルヘルス対応が不可欠となっている。

 メンタルヘルスは、WHOによって「単に精神疾患にかかっていない状態を意味するのではなく、日々のストレスをやりすごし、他者と関わり、自分らしい行動選択のできる健康的な状態」と定義されている。これを維持する有効なメンタルヘルスケアシステムを開発し、社会に実装することで、思春期などの若年者のメンタルヘルスを改善・向上することが研究の目的としている。

出典:国立精神・神経医療研究センター、2022年

メンタルヘルスケアが当たり前の社会を醸成

 ウィズ・ポストコロナで、メンタル不調の予防はもとより、将来のウェルビーイングにも影響する、思春期を主とした若年者のメンタルヘルスへの早急な対応が求められている。

 そこで研究グループは同拠点で、こころの幸福度(メンタル・ウェルビーイング)の向上をゴールとして、その達成にむけて、日本初のメンタルヘルスプラットフォームを構築することとした。

 プラットフォームでは、全世代対応型遠隔メンタルヘルスケアシステム「KOKOROBO-J」を入口に、同世代やピアサポーターとの交流、地域支援者への相談アクセスなども一元化し、メンタルヘルスケアが当たり前の社会を醸成するとしている。

 「KOKOROBO-J」は、児童・思春期から成人までのライフコースを通じて、メンタル不調の予防、メンタル不調者の早期手当、必要な人への医療への橋渡しを行う、いつでもどこでも誰でもアクセス可能な全世代対応型遠隔メンタルヘルスケアシステムで、モデル地域/学校で実証し、全国で利用可能にする。

 プラットフォームで、自分にあった対処法と相談方法などを見つけ、「メンタルヘルス」を維持して、充実した日常生活を送り、自分らしい人生を全うできる社会の実現を目指す。

 また、児童・思春期から成人までの個々のライフステージを俯瞰したライフコースデータ基盤を構築し、リスク予測因子や介入予防法の開発はもとより、メンタル・ウェルビーイングの高い人生を実現し、健康寿命の延伸をはかるとしている。

拠点名称
全世代対応型遠隔メンタルヘルスケアシステム(KOKOROBO-J)によるメンタルヘルスプラットフォームの開発・社会実装拠点
参画機関
(大学) 九州大学、鳥取大学、大阪公立大学、京都大学、名古屋大学、杏林大学、慶應義塾大学、東京大学、横浜市立大学、千葉大学、東北大学
(企業) 第一生命保険株式会社、株式会社QOLead、サスメド株式会社、株式会社テックドクター、株式会社アクセライ、
(NPO) メンタルケア協議会、東京メンタルヘルス・スクエア
拠点代表者
プロジェクトリーダー:竹田和良 (国立精神・神経医療研究センター 情報管理・解析部 室長)
副プロジェクトリーダー:根本 敦 (第一生命保険株式会社 経営企画部 フェロー、国立精神・神経医療研究センター 情報管理・解析部客員研究員予定)
拠点設置責任者
中込和幸(国立精神・神経医療研究センター 理事長)
拠点ビジョン
いつでもどこでも誰でもアクセス可能なメンタルヘルスプラットフォームを開発・社会実装し、メンタルヘルスケアが当たり前の社会を醸成し、個々のライフステージを俯瞰したメンタル・ウェルビーイングの高い人生を実現し、健康寿命延伸をはかる。

オンラインメンタルヘルスケア KOKOROBO(ココロボ)
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 情報管理・解析部

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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