糖尿病の高齢者のフレイルを予防するために食事の多様性が重要 地域在住の高齢者1357人を調査 長寿医療センター
高齢期における糖尿病の食事・栄養ケアはフレイル予防を加味することも重要
65歳以上の日本人の8.7%が該当するフレイルの特徴は、▼体重減少、▼疲労感、▼歩行速度の低下、▼筋力の低下、▼活動量の低下など。糖尿病患者にフレイルが多いことが知られており、低栄養・高血糖・低血糖などがフレイルと関連している。
糖尿病の食事療法により、厳しいエネルギーコントロールなどの過度な管理を行った結果、フレイルが引き起こされることがある。高齢期における糖尿病の食事・栄養ケアは、フレイル予防を加味することも重要となる。
そこで、東京都健康長寿医療センター 認知症未来社会創造センターの早川美知氏らは今回、地域在住高齢者を対象に調査を行い、高齢糖尿病患者でフレイル予防のための食生活について検討した。
研究グループはこれまで、糖尿病と食品摂取の多様性の低下の組み合わせにより、高齢者のフレイルの有病率が増加することなどを明らかにしている。
食事の評価の簡便な方法として「食品摂取の多様性スコア(DVS:Dietary Variety Score)」を使用。DVSは、高齢者の栄養疫学研究で広く使用されており、DVSが高い人は穀物エネルギーの比率が低く、タンパク質と微量栄養素の摂取量が大幅に多いことや、フレイルの人は有意に得点が低いことなどが報告されている。
DVSが低く食事の多様性が低いと、エネルギー、タンパク質、ビタミンの摂取量が少なくなり、フレイルの発生に関連すると考えられる。
▼肉類、▼魚介類、▼卵類、▼大豆・大豆製品、▼牛乳、▼緑黄色野菜、▼海藻、▼イモ類、▼果物類、▼油脂類の10食品について、「毎日食べる」を1点、それ以外を0点とし、10点満点で評価した。10品目のうち5品目(肉類、魚介類、卵類、大豆・大豆製品、牛乳)がタンパク質源として構成され、残りの5品目(緑黄色野菜、海藻、イモ類、果物類、油脂類)はビタミンとミネラルの供給源として構成されている。
糖尿病があり食事の多様性が低いとフレイルは5倍超に増加
研究グループは今回、65歳以上の地域在住高齢者1,357人を対象に、糖尿病の既往歴の有無と食品摂取の多様性が高い群と低い群の組み合わせとフレイルの関係を検討した。
その結果、フレイルの割合は糖尿病がありDVSが低いともっとも高くなった。糖尿病がなくDVSが高い群で3.6%、糖尿病がなくDVSが低い群で6.7%、糖尿病がありDVSが高い群で6.7%、糖尿病がありDVSが低い群で12.2%という結果になった。
さらに、性別や年齢、体格指数、既往歴、飲酒習慣の影響などを統計学的に調整したうえで、フレイル発生のリスクを調べたところ、糖尿病がありDVSが低い群の、糖尿病がなくDVSが高い群に対するオッズ比は5.03となった。糖尿病がありDVSが低いと、フレイルの起こりやすさは5倍超に上昇することが示された。
これまで、タンパク質、ビタミンA、葉酸、ビタミンD、および総エネルギーの摂取量が少ないことが、高齢者のフレイルと関連していることなども報告されている。
「糖尿病で食事の多様性が低いとフレイルの発生リスクが高くなることが示された。糖尿病の高齢者は、糖尿病のない高齢者と比較して、栄養不良の状態になる可能性が高いことも分かっている。糖尿病の高齢者の食事管理は、厳格な食事制限から、年齢とともにフレイル予防にも着目していく必要がある」と、研究者は指摘している。
「食事多様性スコアを使用した栄養介入が、現在一般的に用いられている栄養指導と同じくらい有効であるかどうかを調べるために、これからも研究を続ける」としている。
東京都健康長寿医療センター 認知症未来社会創造センター
Low Dietary Variety and Diabetes Mellitus Are Associated with Frailty among Community-Dwelling Older Japanese Adults: A Cross-Sectional Study (Nutrients 2021年2月16日)