セマグルチドが肝線維化の改善とMASH消失の両方で優越性 過体重・肥満者の3人に1人がMASH
セマグルチド2.4mgが肝線維化の改善とMASH消失の両方で優越性 ノボ ノルディスク
ノボ ノルディスクは、中等度~高度の肝線維化(ステージ2または3)の代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)を有する成人1,200例を対象とした240週間の第3相二重盲検試験で、現在進行中のESSENCE試験のパート1の主要結果を発表した。
同試験は、無作為割付された最初の800例で、標準治療に上乗せしたセマグルチド2.4mgの週1回投与が肝組織(組織学的所見)に及ぼす効果を、72週時にプラセボと比較して評価したもの。
セマグルチド2.4mg週1回皮下注は、「Wegovy」という販売名で市販されているGLP-1受容体作動薬で、その適応症は日本で承認されている「ウゴービ皮下注」とは異なる。「Wegovy」は海外で、BMIが30以上の肥満、BMIが27以上の過体重があり、体重に関連した合併症を1つ以上有する成人、初期BMIが年齢および性別の95パーセンタイル値以上(肥満)である12歳以上の小児での、長期的体重管理のための低カロリー食および運動療法の補助療法としての適応を有している。
同試験では、2つの主要評価項目であるMASHの悪化をともなわない肝線維化の改善、および肝線維化の悪化をともなわないMASHの消失が認められた。72週時に、MASHの悪化をともなわない肝線維化の改善が認められた被験者の割合は、セマグルチド2.4mg投与群で37.0%だったのに対し、プラセボ投与群では22.5%だった。
また、肝線維化の悪化をともなわないMASHの消失が認められた被験者の割合は、セマグルチド2.4mg投与群で62.9%、プラセボ群で34.1%だった。
同試験で、セマグルチド2.4mgの安全性と忍容性のプロファイルは良好であり、これまでのセマグルチド2.4mgに関する試験の結果と一貫していたとしている。
同社は、2025年前半に米国および欧州で、セマグルチド2.4mgにおけるMASHの適応症について、承認申請を行う見込みで、ESSENCE試験の詳細な結果は、2024年に開催される学術集会で発表する予定としている。なお、ESSENCE試験はパート2が継続実施されており、2029年に結果が得られる予定。
代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)は、肝臓に影響を及ぼす深刻な進行性の代謝性疾患であり、適切に管理しないと死に至る可能性がある。全世界で、現時点で過体重または肥満の人々のうち、3人に1人以上がMASHも有しており、MASHを有する人々は2億5,000万人を超えており、進行期にある人々の数は2030年までに倍増すると予想されている。
「ESSENCE試験の結果を受け、セマグルチドがMASHとともに生きる人々の助けとなる可能性があることを大変嬉しく思う。全世界で過体重または肥満の人々の3人に1人がMASHを有している。MASHは健康状態に深刻な影響を及ぼすことから、重大なアンメットニーズがあると言える」と、同社では述べている。
ESSENCE試験は、肝線維化が中等度~高度(ステージ2または3)の成人MASH患者を対象に、セマグルチド2.4mg週1回皮下投与の効果を評価する第3相試験。2つのパートから成る試験で、1,200例をセマグルチド2.4mgまたはプラセボに2:1の比率で無作為に割り付け、標準治療に上乗せして240週間投与する計画としている。
パート1では、無作為割付した最初の800例における72週時の肝生検の組織学的所見がセマグルチド2.4mgの投与により改善するのを検証することを目的としている。パート2では、肝線維化が中等度~高度の成人MASH患者で、セマグルチド2.4mgの投与によりプラセボと比較して240週時における肝関連事象の発現リスクが低下することを検証することを目的としている。
なお、日本では脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、BMI25以上のものが「肥満」と定義され、日本での「肥満症」は、肥満があり、肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測され、医学的に減量を必要とする病態と定義されている。