健診や医療機関で腎臓の検査を受けていない高齢男性は透析のリスクが高い 7万人弱を5年間調査
腎臓の検査を受けていない男性では透析リスクが1.66倍に上昇
研究は、大阪大学キャンパスライフ健康支援センターの芦村龍一特任助教と山本陵平准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
研究グループは、大阪府寝屋川市と共同で、同市の国民健康保険と後期高齢者医療制度の加入者6万9,147人を5年間追跡して調査した。
その結果、過去1年間に健診を受けた人と比較して、健診でも医療機関でも腎臓の検査を受けていない人は、透析に至るリスクが高く(男性1.66倍、女性1.51倍)、とくに75歳以上の高齢男性では、透析リスクは2.72倍に上昇することが明らかになった。
末期腎不全を予防するために、健診でも医療機関でも腎臓の検査を受けていない高齢男性は、健診の受診勧奨の重点対象候補となることが期待されるとしている。
健診全体の受診率も、特定健診は50%、後期高齢者健診は30%と低い
透析治療が必要な末期腎不全を予防するうえで、腎臓病の早期発見が重要となる。健診は生活習慣病に加えて腎臓病の早期発見の役割を担っているが、その受診率は、特定健診は約50%、後期高齢者健診は約30%と低い。
これまで、健診を受けていないと死亡リスクが上昇することは報告されていたが、透析治療が必要な末期腎不全に及ぼす影響については不明だった。
そこで研究グループは、大阪府寝屋川市と共同で、同市の国民健康保険と後期高齢者医療制度の加入者6万9,147人を5年間追跡して調査した。
対象者を、2012年度の健診受診の有無と医療機関での腎臓の検査(尿定性検査と血清クレアチニン検査)の有無にもとづいて、(1)健診あり、(2)健診なし・腎臓の検査なし、(3)健診なし・腎臓の検査ありの3群に分類し、透析のリスクを評価した。
傾向スコアマッチング法を用いて、(1)健診ありと(2)健診なし・腎臓の検査なしの2群の対象者の特徴(年齢など)を揃えて解析を行った結果、男性では、(1)健診あり(5,332人)のうち11人(0.2%)が透析を発症し、(2)健診なし・腎臓の検査なし(5,332人)のうち24人(0.5%)が透析を発症した。
女性では、(1)健診あり(7,573人)のうち6人(0.1%)が透析を発症し、(2)健診なし・腎臓の検査なし(7,573人)のうち9人(0.1%)が透析を発症した。
腎臓の検査を受けていない75歳以上の高齢男性では透析リスクが2.72倍に上昇
多変量解析の結果、男性では、(1)健診あり(9,474人)と比較して、(2)健診なし・腎臓の検査なし(9,833人)の透析のリスクは1.66倍に上昇した。
とくに、75歳以上の高齢男性では、(1)健診あり(2,951人)と比較して、(2)健診なし・腎臓の検査なし(1,412人)の透析のリスクは2.72倍に著しく上昇した。
女性では、(1)健診あり(1万4,145人)と比較して、(2)健診なし・腎臓の検査なし(1万311人)の透析のリスクは1.51倍に上昇した。男性と異なり、75歳以上の高齢女性では、(1)健診あり(4,265人)と比較して、(2)健診なし・腎臓の検査なし(2,809人)の透析のリスクは0.84倍となり、リスクの上昇は認められなかった。
「過去1年間に健診でも医療機関でも腎臓の検査を受けていなかった75歳以上の高齢男性は、透析のリスクが高いことが分かりました。女性については、透析の発症数が少なかったため(2017年度末までの透析発症者数:男性246人、女性124人)、より大規模な研究で評価をする必要があります」と、研究グループでは述べている。
大阪大学キャンパスライフ健康支援センター
Associations of kidney tests at medical facilities and health checkups with incidence of end-stage kidney disease: a retrospective cohort study(Scientific Reports 2021年10月26日)