CGM(持続血糖値モニター)の14日間のデータにより1型糖尿病患者の合併症を予測 DCCTのデータを機械学習で解析

2025.01.22

 CGM(持続血糖値モニター)の14日間のデータにより、1型糖尿病患者の神経障害、網膜症、腎症の発症を予測できることが、米バージニア大学がDCCTに参加した1型糖尿病患者1,441人のデータを機械学習の手法を用いて解析した研究で示された。CGMにより取得したデータを活用すれば、糖尿病合併症の予防を向上できるとしている。

 「今日の糖尿病治療では、CGMの使用が増加している。DCCTで得られた成果の重要性は変わらないものの、新たにCGMで取得したデータをもとに糖尿病管理を評価する指標が求められている」と、研究者は指摘している。

DCCTのデータを機械学習で解析 14日間の仮想CGMトレースを作成

 CGM(持続血糖値モニター)の14日間のデータにより、1型糖尿病患者の神経障害、網膜症、腎症の発症を予測できることが、米バージニア大学がDCCT(Diabetes Control and Complications Trial)に参加した1型糖尿病患者1,441人のデータを機械学習の手法を用いて解析した研究で示された。

 研究は、同大学糖尿病技術センター所長のBoris Kovatchev氏らによるもので、同大学医療システムが発表した。研究成果は、「Diabetes Technology & Therapeutics」に掲載された。

 「最長10年間にわたり実施され、1993年に成果が発表されたDCCTにより、強化インスリン療法により1型糖尿病の細小血管合併症のリスクを軽減できることが実証され、HbA1cが合併症リスクを予測するためのゴールドスタンダードとして確立された」と、Kovatchev氏は言う。

 一方、CGMは現在、1型糖尿病およびインスリン療法を受けている2型糖尿病患者のための標準治療の一部になっており、CGMで得られた指標は糖尿病管理でHbA1cを強力に補完するものになっている。

 そこで研究グループは今回、DCCTで得られたデータセットを機械学習の手法を用いて解析し、試験のすべて参加者を対象とした14日間の仮想CGMトレースを作成することを試みた。DCCTのデータは、米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)のアーカイブから取得した。

CGMで取得したデータにより糖尿病管理を評価する指標が必要

 その結果、血糖値が70~180mg/dLにおさまったTIR(time in range、目標範囲内時間)に加え、CGMで測定された他の時間(140mg/dL超、180mg/dL超、250mg/dL超)も、HbA1cを使用する標準的なアプローチと同様に、神経障害、網膜症、腎症の発症を正確に予測するための優れた予測因子になることを明らかした。

 DCCTの参加者は、1ヵ月あるいは3ヵ月ごとにHbA1c値が測定され、さらに3ヵ月ごとに血糖プロファイルが取得された。

 DCCTに参加した1型糖尿病患者のTIRは、強化療法群(n=711)では60%以上、従来療法群(n=730)では40%未満と推定され、神経障害、網膜症、腎症の発症あるいは進行のリスクと関連していた(P値<0.0001)。

 ポアソン回帰分析では、TIRが元になったHbA1cのデータと同様に、CGMのデータは網膜症と微量アルブミン尿を予測するのに有用であることが示された。

 「今日の糖尿病治療では、CGMの使用が増加している。DCCTで得られた成果の重要性は変わらないものの、新たにCGMで取得したデータをもとに糖尿病管理を評価する指標が求められている」と、Kovatchev氏は指摘する。

 「長期にわたる大規模なCGMデータと、その評価が不足していることは、糖尿病の臨床と管理に多くの影響を及ぼしている。CGMは現状では、薬物療法の効果を評価するためにはあまり使われていないという課題もある」。

 「DCCTの研究規模で、HbA1cの検査に加えてCGMを実施して調査しようとすると、膨大な費用と時間が必要になる。臨床試験を仮想化し、高度なデータサイエンスの手法を駆使し、古くて不十分なデータを補完することが、実行可能な次善策かもしれない」としている

Continuous Glucose Monitor Data Predicts Type 1 Diabetes Complications (バージニア大学医療システム 2025年1月15日)
The Virtual DCCT: Adding Continuous Glucose Monitoring to a Landmark Clinical Trial for Prediction of Microvascular Complications (Diabetes Technology & Therapeutics 2025年1月8日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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