【欧州糖尿病学会(EASD 2024)ダイジェスト4】 糖尿病・生活習慣病管理の最新情報

2024.09.25
 欧州糖尿病学会年次総会(EASD 2024)が、2024年9月9日~13日にスペインのマドリードで開催された。発表された研究のダイジェストをご紹介する。

  1. 糖尿病と診断されていない非糖尿病者も多くは高血糖に
    リアルタイムCGMで「血糖値140mg/dL超が1日に3時間」を確認
  2. 勤勉さのレベルが低い2型糖尿病患者は心血管疾患リスクが高い
    患者の性格特性も糖尿病管理に影響
  3. 時間制限ダイエットは2型糖尿病リスクのある成人の血糖管理を改善
    食事時間を1日8時間内に制限
  4. 生活が夜型の人は2型糖尿病リスクが46%高い
    食事や運動などの行動タイミングが代謝障害と関連
  5. 音声分析により2型糖尿病を高精度にスクリーニングできることが判明
  6. 体内時計の乱れによる心拍変動の減少は糖尿病患者の死亡リスクを2倍に高める
【 欧州糖尿病学会(EASD 2024)ダイジェスト 】

糖尿病と診断されていない非糖尿病者も多くは高血糖に
リアルタイムCGMで「血糖値140mg/dL超が1日に3時間」を確認
 糖尿病のない人に持続血糖モニター(CGM)を使用したところ、そうした非糖尿病者の多くは長時間、血糖値が高い状態にあることが、米ボストン大学の研究で示された。研究グループは、第3世代フラミンガム心臓研究のデータを使用。平均年齢は58.5歳の対象者を、正常血糖群(n=560)、糖尿病前症群(n=463)、糖尿病群(n=152)に振り分け、対象者は腕または腹部に7日間以上、リアルタイムCGMである「Dexcom G6 Pro」を装着した。
 その結果、正常血糖(高血糖あるいは高HbA1c値が確認されていない)の参加者は、血糖値が正常域(70~140mg/dL)に収まった時間が87.0%に上ったが、140mg/dLを超えた時間が1日に平均3時間(12.1%)あり、180mg/dLを超えた時間も15分以上(1.2%)あった。
 血糖値が正常域に収まった時間は、糖尿病前症群では77.1%、糖尿病群では46.2%だった。
 「非糖尿病者の多くが、これまで考えられていたよりもずっと長い時間、血糖値が高い状態にあることが分かった。糖尿病の既往歴のない人々がCGMをより広く利用できるようにするべきだ。CGMに対し関心をもつ非糖尿病者は増えており、CGMセンサーの大手2社であるデクスコムとアボットは、店頭で購入できるCGM製品を発売したばかりだ。CGMで得たデータを適切に解釈できるようにするため、血糖値の"正常"範囲を知ることも重要になっている」と、同大学のニコール スパルタノ氏は述べている。
Defining Continuous Glucose Monitor Time in Range in a Large, Community-Based Cohort Without Diabetes (Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2024年9月11日)

勤勉さのレベルが低い2型糖尿病患者は心血管疾患リスクが高い
患者の性格特性も糖尿病管理に影響
 患者の性格特性が2型糖尿病の管理に与える影響は大きく、勤勉さのレベルが低い2型糖尿病患者は、糖尿病とも関連が強い心血管疾患を発症するリスクが高いという観察研究の結果を、韓国のソウル国立大学医学部などが発表した。
 英国バイオバンクに2006~2010年に登録された2型糖尿病患者8,794人を2021年まで追跡し、性格と心理的性質を外向性・協調性・誠実性・開放性・神経症傾向という5つの因子で評価。平均約13年間の期間中に、2,110人が心血管疾患を発症した。
 解析した結果、勤勉さは心血管疾患を発症リスクの減少と関連しており、この特性を示す患者は期間中に全種類の心血管イベントを経験する可能性が7%低かった。勤勉さは、心臓発作の可能性の10%低下、虚血性脳卒中の17%低下、心房細動の8%低下、心不全の16%低下ともそれぞれ関連していた。
 「勤勉さは誠実さのあらわれであり、規律正しい行動パターンなどを特徴とする。この特性をもつ患者は喫煙率が低く、身体的に活動的である傾向が高い。勤勉な性格に関係なく、健康的な生活スタイルは依然として有益だ」と、研究者は述べている。
Association between personality, lifestyle behaviors, and cardiovascular diseases in type 2 diabetes mellitus: a population-based cohort study of UK Biobank data (BMJ Open Diabetes Research & Care 2024年9月10日)

時間制限ダイエットは2型糖尿病リスクのある成人の血糖管理を改善
食事時間を1日8時間内に制限
 食事の時間帯を1日8時間に制限し、16時間の断食時間を設けると、食事の時間が早い・遅いに関係なく、2型糖尿病のリスクのある成人の血糖管理が大幅に改善することが、英マンチェスター メトロポリタン大学が、15人の運動不足の男女(平均年齢52歳、BMI 28、HbA1c 5.7%)を対象に実施したランダム化クロスオーバー試験で示された。TRE(食べる時間を1日8時間内に制限するが、何を食べるかは制限しない)は、2型糖尿病のリスクがある人のインスリン感受性とHbA1cを改善するとしている。
 習慣的な食事スタイル(食事時間が1日14時間以上におさまっている)と比較して、TREでは、正常血糖値の範囲内で過ごした時間が平均3.3%増加し、血糖変動マーカーである平均絶対血糖値(MAG)が10.8mg/dL、変動係数(CV)が2.6%、平均血糖変動幅(MAGE)が7.2mg/dL、それぞれ減少した。

生活が夜型の人は2型糖尿病リスクが46%高い
食事や運動などの行動タイミングが代謝障害と関連
 生活が夜型の人は、朝型の人に比べて、BMI・腹囲周囲径が高く、体脂肪が多く、2型糖尿病を発症する可能性が約50%高いことが、オランダのライデン大学医療センターが「オランダ肥満疫学研究」の一環として、5,000人以上(平均年齢 56歳、平均BMI 30、女性 54%)を平均6.6年間追跡した調査で示された。
 後期クロノタイプ(就眠と起床の時間が遅い、対象者の20%)の人は中間クロノタイプ(60%)の人と比較して、2型糖尿病リスクが46%高いことが示された。「生活スタイルだけでは、クロノタイプと代謝障害の関係を完全に説明できないが、後期クロノタイプの人は中期クロノタイプの人に比べて、BMIが0.7、ウエスト周囲径が1.9cm、内臓脂肪が7㎤、肝臓脂肪含有量が14%、それぞれ高いことが示された。食事や運動などの行動タイミングと代謝障害の関連についても解明する必要がある」と、同センターポスドク研究員のJeroen van der Velde氏は述べている。

音声分析により2型糖尿病を高精度にスクリーニングできることが判明
 AI(人工知能)を使用した音声分析により、2型糖尿病を高精度にスクリーニングできることが判明したと、ルクセンブルク保健研究所が発表した。音声を平均25秒間記録し、年齢、性別、BMI、血圧値などの基礎データとともにAIアルゴリズムで解析すると、男性で71%、女性で66%の精度で2型糖尿病に罹患しているかを判別できることが、607人の成人を対象に実施した試験で示された。
 このAIアルゴリズムにより、最大6,000ヵ所の詳細な音声特性をキャプチャし、ピッチ、強度、トーンの変化などさまざまな音声の特徴を分析し、糖尿病患者と非糖尿病者の違いを識別。
 「このモデルは、60歳以上の女性や高血圧患者でとくに優れたパフォーマンスを発揮することが分かった。質問票にもとづくADAリスクスコアとの一致率は93%で、音声分析と広く受け入れられているスクリーニングツールのパフォーマンスは同等であることが実証された」と、同研究所精密医療部門のGuy Fagherazzi氏は述べている。

体内時計の乱れによる心拍変動の減少は糖尿病患者の死亡リスクを2倍に高める
 体内時計の乱れによる、毎日の心拍数(HR)の正常な変動の乱れは、1型および2型糖尿病患者の21年間の死亡リスクの大幅な上昇と関連していることが、イタリアのピサ大学の研究で示された。24時間の心拍数変動の減少は、心血管疾患による死亡リスクの2倍上昇と関連しており、睡眠中の心拍数の低下が不可能な場合はリスクが39%増加することが判明した。「日内心拍数の変動障害は、糖尿病の既往歴の長い患者によくみられ、細小血管疾患や心血管疾患、全死因死亡の長期リスク増加と関連しているが、24時間の血圧と心拍数のモニタリングにより、比較的安価に特定できる」と、同大学のLorenzo Nesti氏は述べている。

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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