産官学が連携して次世代の食事指導を開発 1人ひとりに適した食を提案・提供する「個別化・層別化栄養」 栄養研などが事業を開始
1人ひとりに適した食事を提案 ライフステージにも対応した「精密栄養学」
医薬基盤・健康・栄養研究所などは、1人ひとりに適した食を提案・提供する「個別化・層別化栄養」の実現を目指す事業を開始した。
これまでの栄養学は、栄養不足の解消を目指し、集団から得られたデータをもとに一般化された栄養摂取基準を作ってきた。
一方で、同じ食品を摂取しても、その効果は人によって異なることが明らかになっている。そのため近年は、食の効果の個人差を考慮することが求められるようになってきた。時代の変化とともに、食に健康のための機能性も求められるようになっている。
そこで同研究所は、遺伝子、生活スタイル、腸内細菌、ライフステージなどに応じて、1人ひとりに適した食事の提案を行うことで健康社会の実現を目指す「精密栄養学(Precision Nutrition)」の重要性を提唱している。
3つのテーマで研究・開発を展開 精密栄養学の実用化を目指す
この事業「Precision Nutritionの実践プラットフォームの構築と社会実装」は、参画する15機関[九州大学、京都大学、コラゾン、島津製作所、食の安全分析センター、新南陽商工会議所、東京農業大学、Noster、樋口松之助商店、プレシジョンヘルスケア研究機構、ヘルスケアシステムズ、堀場製作所、森永乳業、山口こうじ店、早稲田大学]と連携して実施するもの。
医薬基盤・健康・栄養研究所を代表機関とし、精密栄養学(Precision Nutrition)の社会実装に向けて、以下の3つのテーマで研究・開発を展開するとしている。
消費者とつなぐポータルサイト構築 |
食の効果を予測・診断するシステム開発 |
代替食品・レシピの開発 |
1万人超の日本人から収集したデータを解析 次世代の食事を開発
この事業に期待される効果として、「食の効果の個人差をもとに個別化・層別化し、人々がより効率的に食で健康効果を得られる、"次世代の栄養摂取"ができる社会の実現」を挙げている。
内閣府科学技術・イノベーション推進事務局は、各省庁での研究開発の成果を社会課題解決などに橋渡しするためのプログラムとして、2023年より研究開発と、Society5.0との橋渡しプログラム「BRIDGE」を開始している。
同研究所ではこれまで、1万人を超える日本人から収集した、(1) 食事、運動、睡眠などの生活習慣や、(2) 健康診断や疾患歴など健康状態に関するデータ情報とともに、(3) 便、血液、唾液などのサンプルから腸内細菌叢や代謝物、免疫パラメーターなどを測定し、健康維持や増進に関わる有用菌や、有用代謝物の同定、それらを培養・生産する技術開発を行ってきた。
これらの知見やノウハウを活かし、今まで「腸内細菌の迅速測定システム」「有用代謝物の定量」「AIを用いた食の効果の予測システム」などの技術開発を進めてきた。
こうした厚生労働省や同研究所の施策により培ってきた技術を基盤に、「BRIDGE」では技術の高度化や最適化を行う大学や、社会実装を担当する民間企業と連携して事業を展開するとしている。
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 (NIBIOHN)
研究開発とSociety5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE) (内閣府)