産官学が連携して次世代の食事指導を開発 1人ひとりに適した食を提案・提供する「個別化・層別化栄養」 栄養研などが事業を開始

2024.02.13
 医薬基盤・健康・栄養研究所と15機関は、1人ひとりに適した食を提案・提供する「個別化・層別化栄養」の実現を目指す事業を開始した。

 近年は、食の効果の個人差を考慮することや、健康のための機能性が求められるようになっている。そこで事業では、同研究所を代表機関とし、精密栄養学(Precision Nutrition)の社会実装を目指す。

1人ひとりに適した食事を提案 ライフステージにも対応した「精密栄養学」

 医薬基盤・健康・栄養研究所などは、1人ひとりに適した食を提案・提供する「個別化・層別化栄養」の実現を目指す事業を開始した。

 これまでの栄養学は、栄養不足の解消を目指し、集団から得られたデータをもとに一般化された栄養摂取基準を作ってきた。

 一方で、同じ食品を摂取しても、その効果は人によって異なることが明らかになっている。そのため近年は、食の効果の個人差を考慮することが求められるようになってきた。時代の変化とともに、食に健康のための機能性も求められるようになっている。

 そこで同研究所は、遺伝子、生活スタイル、腸内細菌、ライフステージなどに応じて、1人ひとりに適した食事の提案を行うことで健康社会の実現を目指す「精密栄養学(Precision Nutrition)」の重要性を提唱している。

出典:医薬基盤・健康・栄養研究所、2024年

3つのテーマで研究・開発を展開 精密栄養学の実用化を目指す

 この事業「Precision Nutritionの実践プラットフォームの構築と社会実装」は、参画する15機関[九州大学、京都大学、コラゾン、島津製作所、食の安全分析センター、新南陽商工会議所、東京農業大学、Noster、樋口松之助商店、プレシジョンヘルスケア研究機構、ヘルスケアシステムズ、堀場製作所、森永乳業、山口こうじ店、早稲田大学]と連携して実施するもの。

 医薬基盤・健康・栄養研究所を代表機関とし、精密栄養学(Precision Nutrition)の社会実装に向けて、以下の3つのテーマで研究・開発を展開するとしている。

テーマ (1) 消費者とつなぐポータルサイト構築
 消費者の参加登録や自身のデータ確認などができるオンラインシステムを構築する。また、アプリやWebサイト、サブスクリプション、店舗での実地販売など社会実装性のあるシステムを用い、消費者の健康効果が期待できる食材とその食材を摂取した際の効果に関する結果を提供できるシステムの開発・検証を行う。

テーマ (2) 食の効果を予測・診断するシステム開発
 生体サンプルや食品などを対象に、食の効果を予測・診断するためのシステムを開発する。また、食の効果の予測・診断のためのキットや受託サービスなどの製品化などの実用化を進める。

テーマ (3) 代替食品・レシピの開発
 食の効果を最大化するための食品やレシピの開発を行う。とくに、機能性が期待される有効成分を多く含有する食品やレシピなどを開発し、食の効果が得られにくい人に提案・提供できるように、食品やサプリメントなどとしての製品化を進める。

出典:医薬基盤・健康・栄養研究所、2024年

1万人超の日本人から収集したデータを解析 次世代の食事を開発

 この事業に期待される効果として、「食の効果の個人差をもとに個別化・層別化し、人々がより効率的に食で健康効果を得られる、"次世代の栄養摂取"ができる社会の実現」を挙げている。

 内閣府科学技術・イノベーション推進事務局は、各省庁での研究開発の成果を社会課題解決などに橋渡しするためのプログラムとして、2023年より研究開発と、Society5.0との橋渡しプログラム「BRIDGE」を開始している。

 同研究所ではこれまで、1万人を超える日本人から収集した、(1) 食事、運動、睡眠などの生活習慣や、(2) 健康診断や疾患歴など健康状態に関するデータ情報とともに、(3) 便、血液、唾液などのサンプルから腸内細菌叢や代謝物、免疫パラメーターなどを測定し、健康維持や増進に関わる有用菌や、有用代謝物の同定、それらを培養・生産する技術開発を行ってきた。

 これらの知見やノウハウを活かし、今まで「腸内細菌の迅速測定システム」「有用代謝物の定量」「AIを用いた食の効果の予測システム」などの技術開発を進めてきた。

 こうした厚生労働省や同研究所の施策により培ってきた技術を基盤に、「BRIDGE」では技術の高度化や最適化を行う大学や、社会実装を担当する民間企業と連携して事業を展開するとしている。

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 (NIBIOHN)
研究開発とSociety5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE) (内閣府)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

脂質異常症の食事療法のエビデンスと指導 高TG血症に対する治療介入を実践 見逃してはいけない家族性高コレステロール血症
SGLT2阻害薬を高齢者でどう使う 週1回インスリン製剤がもたらす変革 高齢1型糖尿病の治療 糖尿病治療と認知症予防 高齢者糖尿病のオンライン診療 高齢者糖尿病の支援サービス
GLP-1受容体作動薬の種類と使い分け インスリンの種類と使い方 糖尿病の経口薬で最低限注意するポイント 血糖推移をみる際のポイント~薬剤選択にどう生かすか~ 糖尿病関連デジタルデバイスの使い方 1型糖尿病の治療選択肢(インスリンポンプ・CGMなど) 二次性高血圧 低ナトリウム血症 妊娠中の甲状腺疾患 ステロイド薬の使い分け 下垂体機能検査
NAFLD/NASH 糖尿病と歯周病 肥満の外科治療-減量・代謝改善手術- 骨粗鬆症治療薬 脂質異常症の治療-コレステロール低下薬 がんと糖尿病 クッシング症候群 甲状腺結節 原発性アルドステロン症 FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症 褐色細胞腫

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料