【新型コロナ】パンデミック中に小児・若年糖尿病患者の入院やケトアシドーシスが増加

2024.02.08
パンデミック中に糖尿病転帰が悪化

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中に、小児ICUへの糖尿病関連入院や糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)などのイベントが、とくに小児や若年の糖尿病患者の間で増加していたことが報告された。米マサチューセッツ大学アマースト校のJamie Hartmann-Boyce氏らが行ったシステマティックレビューの結果であり、詳細は「The Lancet Diabetes & Endocrinology」2月号に掲載された。

 人々のライフスタイルと医療現場を大きく混乱させたCOVID-19パンデミックは、糖尿病患者の疾患コントロールにも影響を与えた可能性が考えられる。Hartmann-Boyce氏らは、システマティックレビューにより、このトピックに関する総括を試みた。

 2020年1月1日~2023年6月7日に、MEDLINEなどの文献データベースに収載された論文から、138件の研究報告を抽出。それらの研究には合計100万人以上の患者が含まれていた。北米や西欧での研究が多く(各39件)、そのほかにアジア(17件)、東欧(14件)、南アメリカ(4件)などから報告されていた。全ての研究は、パンデミック前とパンデミック中で、糖尿病関連イベントの発生状況を比較していた。5件の研究を除いて、何らかのバイアスリスクが観察された。

 6件の研究がパンデミック中の糖尿病患者の全死亡の増加を報告し、13件の研究は糖尿病関連死の増加を報告。また、視覚障害の発生率の上昇を報告した研究が6件存在していた。

 DKAの発生率や重症度については69件の研究報告があり、解析対象が成人または成人と未成年者を区別していない研究では、パンデミック前から変化がないことを示していた。それに対して、解析対象が小児や未成年者の研究の多くがDKAの発生率上昇や重症度の悪化を報告し、とくに糖尿病新規発症症例への影響が強く示唆されていた。また35件の研究から、成人糖尿病患者ではパンデミック中の入院が減少していたが、小児ICUへの糖尿病関連事象での入院は増加していたことが分かった。

 このほかに、糖尿病性足潰瘍(DFU)の発症やDFUによる救急入院(各9件)、下肢切断(20件)への影響も検討されていたが、それらの結果には一貫性が認められなかった。腎不全への影響を検討した研究は抽出されなかった。

 パンデミック中に観察された糖尿病転帰へのマイナスの影響は、全体的に、女性、若年者、人種/民族的マイノリティーで顕著だった。Hartmann-Boyce氏は、「われわれの文献レビューの結果から、全ての糖尿病患者、とくに恵まれない環境にいる糖尿病患者が、パンデミックのような状況においても、必要な薬剤やケアの提供を継続的に受けられるようにすることの重要性を示している」と述べている。

 また同氏は大学発のリリースの中で、パンデミック中に生じた糖尿病管理の乱れの影響が将来的な慢性合併症の増加として現れる可能性に触れ、「10年ほどたった時点で再度、このようなレビューを行う必要があるのではないか」と指摘している。

 なお、2人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

[HealthDay News 2024年2月1日]

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