iPS細胞由来膵島細胞を移植する医師主導の治験を開始 1型糖尿病治療の新たな選択肢を開発 京都大学医学部附属病院

2024.10.03
 京都大学医学部附属病院糖尿病・内分泌・栄養内科の矢部大介教授らは、膵島移植が適応となる1型糖尿病患者を対象とした、iPS由来膵島細胞シートの安全性を確認するための医師主導の第1/1b相試験を、肝胆膵・移植外科と連携し2025年1月より開始する。

 将来的に、糖尿病領域における移植医療のドナー不足解消に貢献し、患者の新たな治療選択肢となることを目指すとしている。

iPS由来膵島細胞シートを移植移植し安全性を評価する医師主導治験を開始

 京都大学医学部附属病院糖尿病・内分泌・栄養内科の矢部大介教授らは、膵島移植が適応となる1型糖尿病患者を対象とした、iPS由来膵島細胞シートの安全性を確認するための医師主導の第1/1b相試験を、肝胆膵・移植外科と連携し2025年1月より開始する。

 iPS細胞由来膵島細胞(iPICs:iPS cell-derived pancreatic islet cells)は、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)と武田薬品工業の共同プログラムである「T-CiRA」での研究を経て見出された膵内分泌前駆細胞集団で、大量培養が可能としている。このiPICsを、糖尿病モデル動物に移植すると、血糖値が正常化し、有意な耐糖能の改善を得られることを確認している。

 今回の医師主導治験では、OZTx-410移植にともなうヒトでの安全性を評価することを目的としている。治験で使用する「OZTx-410」は、オリヅルセラピューティクスで開発したiPICsを均等に分散した薄層のシート状製品。非臨床試験では、同品に起因する明らかな毒性や腫瘍化は認められておらず、そのため膵島移植が適応となる1型糖尿病患者でも同様の効果を期待できとしている。

 膵島移植は、2020年に保険収載され、日本で公的保険を用いて受けることができるようになったが、慢性的なドナー不足により、年間数例程度の実施にとどまっている現状がある。

 膵島移植を実施しても、インスリン投与が必要なくなるインスリン離脱のためには、複数回の移植が必要であり、ドナー不足を解消するための新たな治療選択肢の開発が望まれている。

 日本には10~14万人の1型糖尿病患者がいると推計されているが、うち10%程度は、血糖コントロールが不安定なBrittleタイプであり、無自覚低血糖の危険性がある。

治験計画の概要

治験課題名 膵島移植が適応となる1型糖尿病患者を対象にOZTx-410(同種iPS細胞由来膵島細胞シート)の安全性を評価する第1/1b相試験
治験の目的 膵島移植の適応となる1型糖尿病被験者にOZTx-410を移植し安全性を評価する
治験の内容 全身麻酔下でOZTx-410を被験者の腹部皮下に移植する。移植したOZTx-410が機能しているあいだは、免疫抑制剤を投与する。
対象疾患 1型糖尿病
対象被検者 内因性インスリン分泌能が廃絶しており、専門的治療によっても血糖変動の不安定性が大きく血糖管理が困難な、膵島移植の適応となる1型糖尿病患者
  •  5年以上前に1型糖尿病と診断され、インスリン依存状態の期間が5年以上継続している20歳以上65歳未満の男女
  •  体重が80kg以上または体格指数(BMI)が30以上、腎機能が悪化している患者などは除く
実施予定人数 3人
観察期間 移植後5年間
治験実施体制 治験責任医師:糖尿病・内分泌・栄養内科 教授 矢部大介
実施診療科:糖尿病・内分泌・栄養内科、肝胆膵・移植外科(移植手術)
iPS細胞の提供:京都大学iPS細胞研究財団
治験製品(OZTx-410)提供:オリヅルセラピューティクス株式会社
治験の支援 この治験は、下記機関の支援を受けて実施される。
  •  国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
    橋渡し研究プログラム シーズF「iPS細胞由来膵島細胞を用いた1型糖尿病に対する細胞治療開発」
    (代表:オリヅルセラピューティクス株式会社 伊藤 亮、橋渡し研究支援機関:京都大学)
  •  オリヅルセラピューティクス株式会社

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