健保組合の健全化と医療費抑制への貢献を目指す「健康経営アライアンス」を設立 オムロン・味の素など大手8社
業界を超えて「健康保険組合の財政の健全化」「医療費抑制への貢献」に取り組む
日本は急速に高齢化が進行しており、健康寿命の延伸が大きな課題になっている。健康寿命を縮め、死亡率を高めている要因は、「不健康な食生活」「運動不足」「高血圧」「糖尿病」「肥満」「喫煙」など。
日本の産業界も、「社員の健康増進」「健康保険組合の財政の健全化」「医療費抑制への貢献」の課題に直面している。
こうしたなか健康経営の推進は、企業の生産性向上や医療費の適正化のみならず、社員を企業の財産ととらえる人的資本経営の実践でも重要な経営課題となっている。世界での日本産業界全体の競争力を高めることにもつながるとみている。
こうした社会課題解決に向け、国内大手8社は業界を超えて、健康社会の実現を目指して結集し、アライアンスを設立することを決めた。
今回、「健康経営アライアンス」への参加を発表したのは、味の素、SCSK、オムロン、キリンホールディングス、島津製作所、JMDC、日本生命保険、三井住友銀行の8社。東京大学未来ビジョン研究センターデータヘルス研究ユニットの古井祐司特任教授が協力する。
ソリューション提供企業の叡智を集結
同アライアンスでは、「健康経営の型づくりと成果創出のためのソリューションの共創および産業界への実装」の実現を目指すとしている。
そのアプローチとして、健康経営を実践する企業とソリューションを提供する企業の叡智を集結させる。
具体的には、ヘルスケアデータを活用し、社員の生活習慣病由来の脳・心血管疾患や腎疾患、メンタル不調といった重症化の予測ができる疾病リスクの対処に取り組む。
また、ヘルスケアデータを活用した社員の健康の維持・増進を、アライアンス参画企業が自ら実践しフィードバックするとともに、各社の健康経営に関する製品・サービスをアライアンス内で導入し、新たな開発・実証も行う。
モデルケースとなる成功事例は、アライアンス外にも展開し、アカデミアや省庁とも連携しながら社会実装・海外展開を目指す。
ヘルスケアデータを活用した健康経営
同アライアンスで重視されているのは、「ヘルスケアデータを活用する健康経営」だ。
ヘルスケアデータから、高血圧や糖尿病などの生活習慣病に由来する脳・心血管疾患や腎疾患、メンタル不調のハイリスク者を抽出し、労働生産性改善を含む医療経済効果の視点で対処するとしている。
データを活用することで、リスク因子保有者やハイリスク者への働きかけをしやすくなり、長期休職や退職、医療費高騰のリスクを低減することが期待できる。
JMDCのデータによると、健康診断受診者の80%が何らかの健康課題を有している。年齢にかかわらず長く健康に働き続けられる社会の実現に向け、企業全体の健康経営の実践を底上げするとともに、健康増進・重症化予防に必要なソリューションの開発・社会実装に取り組んでいくとしている。
日本産業界が取り組むべき3つの課題
同アライアンスでは、日本産業界が取り組むべき課題として、以下の3つを掲げている。
(1) 社員の健康増進
日本の高血圧有病者は4,300万人いると推定され、そのうち未治療者は43%。また、厚生労働省によると、2020年~2021年にメンタル不調による休退職者がいた事業所の割合は10.1%で、前年と比べ、約1ポイントの増加傾向にある。
(2) 健康保険組合の財政の健全化
保険料率が、主に中小企業の従業員らが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の平均保険料率10%を超えると、企業健康険組合の存続の利点が薄れるが、すでに全体の約2割(300組合ほど)が10%と同等かそれ以上の料率となり、健康保険組合の財政は健全とはいえない状況になっている。
(3) 医療費抑制への貢献
企業健康保険組合の健全化に取り組むことが、ひいては急増する国家の医療給付費の抑制につながる。
健康経営アライアンス (発起人代表幹事会社:オムロン株式会社)