グルカゴン点鼻粉末剤「バクスミー」 学校の教職員などが使用可能に 糖尿病の児童生徒が重症の低血糖を起こし危険な状態にある場合
4つの条件を満たす場合には教職員などが「バクスミー」を投与できる
こども家庭庁と文部科学省は1月25日に、「学校等における重症の低血糖発作時のグルカゴン点鼻粉末剤(バクスミー)投与について」を発出した。
学校・保育所・幼保連携型認定こども園・放課後児童健全育成事業・放課後子供教室・認可外保育施設・児童発達支援・放課後などのデイサービスなどで、児童生徒などが重症の低血糖発作を起こし、生命が危険な状態にある場合に、現場に居合わせた教職員を含む職員やスタッフが、グルカゴン点鼻粉末剤(バクスミー)の投与を行うことについて、次の4つの条件を満たす場合には、医師法違反とはならないとしている。
- 当該児童などおよびその保護者が、事前に医師から、次の点に関して書面で指示を受けていること。
・ 学校などにおいてやむをえずグルカゴン点鼻粉末剤を使用する必要性が認められる児童などであること
・ グルカゴン点鼻粉末剤の使用の際の留意事項
- 当該児童などおよびその保護者が、学校などに対して、やむをえない場合には、当該児童などにグルカゴン点鼻粉末剤を使用することについて、具体的に依頼(医師から受けたグルカゴン点鼻粉末剤の使用の際の留意事項に関する書面を渡して説明しておくことなどを含む)していること。
- 当該児童などを担当する教職員などが、次の点に留意してグルカゴン点鼻粉末剤を使用すること。
・ 当該児童などがやむをえずグルカゴン点鼻粉末剤を使用することが認められる児童など本人であることを改めて確認すること
・ グルカゴン点鼻粉末剤の使用の際の留意事項に関する書面の記載事項を遵守すること
- 当該児童などの保護者または教職員などは、グルカゴン点鼻粉末剤を使用した後、当該児童などを必ず医療機関で受診させること。
これについて厚生労働省は、「一連の行為の実施にあたっては、児童等のプライバシーの保護に十分配慮がなされるよう強くお願いする」とコメントしている。
グルカゴン点鼻粉末剤「バクスミー」の詳細情報
グルカゴン点鼻粉末剤「バクスミー」は、低血糖を起こした患者の救急処置に用いる薬剤で、血糖値を一時的に上げるグルカゴンを3mg含んでいる。
同剤は、鼻の粘膜から吸収されるため、患者に意識がなく、薬剤を吸い込むことができない時でも使用できるとしている。1回使い切りの薬剤で、室温(30℃以下)で保存することができる。
重症の低血糖発作ついては、該当する児童生徒などが意識を失っている場合も想定されることから、傷病者発生時の対応に準じて、教職員などが連携して、迅速・的確な応急手当(一次救命処置)、緊急連絡・救急要請などを行うことが重要となる。
そのうえで、グルカゴン点鼻粉末剤を使用した場合には、低血糖発作を起こした児童生徒などが受診することとなる医療機関の医療従事者が、使用済みの容器をもとにその投与状況を確認するため、該当する医療従事者または救急搬送を行う救急隊に使用済みの容器を受け渡すとともに、実施した内容を伝えるなどの対応が必要となるとしている。
学校等における重症の低血糖発作時のグルカゴン点鼻粉末剤(バクスミー®)投与について (日本くすりと糖尿病学会 2024年1月27日)