1型糖尿病患者の胃腸障害に糞便微生物移植が有効か
1型糖尿病患者の胃腸障害に糞便微生物移植が有効か
中等度から重度の糖尿病性胃腸障害を有する1型糖尿病患者に対する糞便微生物移植(fecal microbiota transplantation;FMT)は、安全で有効と考えられるとする論文が、「eClinicalMedicine」1月号に掲載された。オーフス大学(デンマーク)のKatrine Lundby Høyer氏らが、プラセボ対照ランダム化二重盲検法によるパイロット試験の結果として報告した。
糖尿病性胃腸障害は、嘔気・嘔吐、膨満感、腹痛、便秘、下痢、便失禁などを来す、生活の質(QOL)低下につながる疾患。
慢性高血糖による自律神経障害、それによる腸内細菌叢の変化、ガスの増加、および全身性炎症などが関与する病態と考えられており、1型糖尿病患者の最大4人に1人に影響を及ぼすとする報告もある。
現在、食事療法や消化管運動賦活薬、一部の抗菌薬などによる治療が行われているが、症状を十分管理できないことが少なくない。
一方、いくつかの研究から、糖尿病患者では腸内細菌叢の乱れが生じており、FMTがそれを改善する可能性が示されている。この知見を根拠としてHøyer氏らは、糖尿病性胃腸障害の症状をFMTが抑制し得るとの仮説のもと、本研究を実施した。
中等度から重度の胃腸障害のある成人1型糖尿病患者20人(年齢中央値46歳〔四分位範囲32~52〕、女性14人、糖尿病罹病期間中央値31年〔同19~36〕)を、ランダムに1対1の2群に分類。
FMT群には健康なドナーの糞便を処理した50g(個数にして平均25個)のカプセル、プラセボ群には同様の形状・数量のカプセルを、それぞれ経口投与した。
その4週間後、安全性の確認および糞便サンプル採取に続き、非盲検下で全員に対してFMTカプセルを経口投与した。主要評価項目は、介入後のグレード2以上の有害事象の数とし、副次評価項目は胃腸症状およびQOLとした。
まず安全性については、グレード2以上の有害事象は合計26件報告された。内訳は、FMT群が4人、7件、プラセボ群は5人、19件であり、群間に有意差はなかった。最も一般的な有害事象は、下痢、膨満感、および腹痛だった。介入に関連する重篤な有害事象は報告されなかった。
有効性については、症状スコア(過敏性腸症候群〔IBS〕の消化器症状評価尺度〔GSRS-IBS〕)が、FMT群では中央値58(四分位範囲54〜65)から同35(32〜48)に低下していたのに対して、プラセボ群では64(55〜70)から56(50〜77)への低下にとどまり、有意差が認められた(P=0.01)。
また、QOLへの影響(IBS-ISで評価)も、FMT群では中央値108(101~123)から140(124~161)に改善し、プラセボ群は77(53~129)から92(54~142)への変化にとどまった(P=0.02)。
症状に対する患者の自己評価(PAGI-SYM)も、FMT群は中央値42(28~47)から25(14~31)へと改善し、プラセボ群は47(31~69)から41(36~64)への改善だった(P=0.03)。
著者らは、「われわれの研究は、糖尿病性胃腸障害に対してFMTが有望な治療選択肢となる可能性を示している」と述べている。なお、数人の著者が製薬・医療機器関連企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。
[HealthDay News 2025年1月13日]
Copyright © 2025 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock