【新型コロナ】医療従事者の9割はビタミンDが欠乏 コロナ禍で骨粗鬆症や骨折のリスクが上昇?
ビタミンDが不足すると骨粗鬆症のリスクが上昇
研究は、国立成育医療研究センターの「ナショナルセンター職員における新型コロナウイルス感染症の実態と要因に関する多施設共同観察研究」グループによるもの。研究成果は、「BMJ Nutrition, Prevention & Health」にオンライン掲載された。
新型コロナの最大の特徴は、ウイルス側の感染性および病原性の変化に加え、感染者(ホスト側)の年齢や基礎疾患などによる病状の多様性にある。
そこで研究グループは、ホスト側のる感染症のかかりやすさや重症化要因を評価するために、感染防御能力低下、動脈硬化、耐糖能異常、肝・腎機能障害、栄養低下、骨髄機能低下のスクリーニング調査を行った。
2021年3月1日~5日に、同センターのハイリスク医療従事者361人(男性87人、女性274人)を対象に調査した。なお、2021年1月8日~3月21日に首都圏4都県に緊急事態宣言が発令されていた。
その結果、顕著に異常がみられたのはビタミンDであり、性別・年齢を問わず多くの研究参加者で不足していた。ビタミンD不足・欠乏状態は、臨床検査(SRL)の基準値により判定された。
屋内生活が増え日光浴が足りていないのが原因か?
医療従事者による新型コロナの感染防御対策や、長期間の室内生活が、紫外線の吸収低下をまねいたことが原因のひとつとして考えられる。
これまでの研究では、新型コロナの流行前から、日本人を含むアジア人の70%にビタミンDが不足していることが指摘されていたが、今回の研究では90%の研究参加者はビタミンDが欠乏していた。
感染対策や、長期間の室内生活が、紫外線の吸収低下をまねいたおそれがある
ビタミンDには多様な生理作用があり、細胞の分化・増殖や免疫機構、骨代謝と深く関わっている。
「ビタミンD不足では、感染の防御能力の低下に加え、骨代謝の低下と運動不足(骨への刺激の不足)による骨粗鬆症や、それに起因する骨折への注意が必要となります」と、研究グループでは述べている。
活性化する前のビタミンD3は、体内のコレステロールから皮膚で紫外線を受け合成されるか、経口摂取(食事、サプリメント)により腸管で吸収され補充される。さらに、肝臓と腎臓を経由して活性型となり、生体内で作用する。
活性化されるまでの経路でビタミンDを補充する方法はまちまちだが、日光(紫外線)の曝露、経口摂取、それに加え薬剤(活性型ビタミンD3製剤)の補充により、免疫能力の改善、骨粗鬆症の予防が期待される。
「今回は医療従事者を対象とした調査結果ですが、コロナ禍で長期間の屋内生活をしている人は、適度の日光浴やビタミンDの補充(食事・サプリメント・薬剤)をし、ビタミンD不足による、感染防御能力の低下、骨代謝の低下と運動不足(骨刺激不足)による骨粗鬆症や、骨折への注意が必要です」と指摘している。
国立成育医療研究センター
Serious vitamin D deficiency in healthcare workers during the COVID-19 pandemic (BMJ Nutrition, Prevention & Health 2022年1月4日)