【新型コロナ】緊急事態宣言により移動手段は自転車や徒歩に変化 ウォーカブルな都市計画が求められている
緊急事態宣言前後では、郊外都市に住む人々の生活圏はおよそ半減したとしている。
「コロナ禍を経てウォーカブルな都市を実現することで、高齢化をともなう人口減少にあっても、人々の健康な暮らしを支えることができる」と、研究者は述べている。
緊急事態宣言下での行動変化を明らかに 郊外都市でのコロナ禍の人流変化を解明
大阪市立大学の研究グループは、郊外都市での新型コロナの流行にともなう個人の移動行動の変化を調査した。個々人の生活圏が都心部から都市内での移動へと変化しており、およそ半分、距離にして約9.7km減少していることを明らかにした。また、朝夕の時間、駅舎に多くみられていた人流は昼間の公園へと変化がみられ、移動手段は、自動車から自転車や徒歩に変化していたことも分かった。
新型コロナの流行は、生活に大きな影響を与えている。その感染者数の増加に影響を与える要因として、大阪駅などの主要なエリアでの人流データは重要な指標のひとつとして政策立案の場に活用されてきた。しかし、個々人の生活変容を促すためには、個々人の生活行動の変化を把握する必要がある。
そこで研究グループは、大阪府茨木市を事例に、1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月と、その1年前の2019年4月での個々人の移動行動の変化をスマートフォンの位置情報履歴ビッグデータ(Agoop社ポイント型流動人口データ)を用いて調査した。
その結果、緊急事態宣言の外出自粛要請により、郊外都市では、個々人が徒歩や自転車を中心とした生活行動に変化していたことが明らかになった。
2020年4月の緊急事態宣言下では、人流は昼間の公園へと変化し、移動手段は、自動車から自転車や徒歩に変化した
新型コロナの流行が長期化する現在、感染者の急速な増加を抑制するためには、短期的には、緊急事態宣言の発令などで人々の生活行動を抑制する方策が求められる。しかし、中期的には、徒歩や自転車を中心とした「新しい生活様式」を支えるウォーカブルな都市の実現に向けた制度を充実させ、人々の生活行動の変化に即した行動変容を促すことが必要であると考えられるとしている。
研究は、大阪市立大学大学院生活科学研究科居住環境学講座の加登遼助教らの研究グループによるもの。
「市民に生活変容を促す上で、都市空間をデザインすることは、有効な方法のひとつです。近い将来、少子高齢化と人口減少が予測される郊外都市は、コロナ禍を通して、ウォーカブルで歩きやすい都市計画が求められます」と、加登氏は述べている。
大阪市立大学大学院 生活科学研究科
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