機能性表示食品は効果があるか 従業員食堂で大豆食品を自由摂取させるとLDL-CやHbA1cが低下
従業員食堂で大豆食品を選択できるようにするとLDL-Cなどが低下
大豆・大麦・緑茶に含まれる成分は、無作為化比較試験により有効性が示され、消費者庁による表示制度である特定保健用食品・機能性表示食品として認められている。しかし、実生活での現実的な摂取による効果は、十分に検証されていない。
そこで金城学院大学、福岡女子大学、浜松医科大学の研究グループは、従業員食堂で日常生活で自由に摂取した機能性食品による心血管代謝値への影響について、実生活データを用いて検討した。
研究グループは、利用者が料理やその組み合わせを自由に選択できるカフェテリア方式の従業員食堂で、機能性食品(大豆製品、大麦ごはん、高カテキン緑茶)の健康効果に関する情報を卓上ポップに掲示した食環境により、機能性食品の摂取回数と心血管代謝値(BMI、収縮期血圧、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、HbA1c)がどう変化するかを検証した。
その結果、大豆製品の摂取が1回増えると、LDL-Cは0.16mg/dL低下した。さらに、大麦ごはんの摂取が1回増えると、収縮期血圧は0.11mmHg低下、HbA1cは0.003%低下する傾向が示された。
「機能性食品による心血管代謝値の改善は、従業員食堂での自由な摂取でも得られることが示唆されました。研究の結果は、日本企業での労働者の健康の維持増進に役立つことが期待されます」と、研究グループでは述べている。
電子清算システムを利用し男性890人を対象に機能性食品を評価
研究グループは、2018年10月~2019年6月に健康診断を受診し、機能性食品の提供が開始された2019年7月以降に食堂を利用し、2019年10月~2020年9月にふたたび健康診断を受けた男性890人を対象に検討した。
食堂はカフェテリア方式で運営され、使用されている全ての食器に献立情報と紐づいたICチップが埋め込まれていた。利用者は、定食や一品料理などを自由に選び、喫食した後に食器を載せたトレーごと清算用の自動読み取り機に置き、従業員IDカードで支払う。
食堂に、それぞれの食品の機能性に関する卓上ポップを設置した。大豆製品・大麦ごはん・高カテキン緑茶の摂取について、追跡時の健康診断の受診前12週間の累積喫食回数を個人ごとに算出した。
心血管代謝値としてBMI、収縮期血圧、LDL-C、HDLコレステロール、中性脂肪、HbA1cのデータを使用。食堂で機能性食品の提供が開始される前の健康診断データと、提供開始後の健康診断データとの変化量を評価した。
追跡時の12週間前からの機能性食品の累積摂取回数と心血管代謝値の変化量との関連を一般線形モデルにより、年齢、飲酒、喫煙、運動、服薬、エネルギー摂取量、他の機能性食品の摂取回数(大豆、大麦、または緑茶)を調整して検討した。さらに、追跡開始時の目的変数の値を調整して解析した。
日本人間ドッグ学会の判定区分表を参考にして、各心血管代謝値の高リスク群と低リスク群に層化した分析、欠損値を多重代入法で補完した感度解析も行った。
大豆製品の摂取が1回増えると、LDL-Cは0.16mg/dL低下した(p<0.05)。追跡開始時のLDL-C値を調整した場合、関連は減弱したが(-0.12mg/dL、p=0.08)、高リスク群に限定するとより強い関連が示された(-0.18mg/dL、p=0.06)。
大麦ごはんの摂取が1回増えると、収縮期血圧は0.11mmHg(p=0.10)、HbA1cは0.003%(p=0.08)低下した。これらの関連は追跡開始時の目的変数の値を調整すると消失したが、血圧低リスク群では収縮期血圧は低下していた(-0.13mmHg、p=0.06)。
「従業員食堂で、機能性食品を使用した献立を導入し、卓上ポップにその機能性を表示することで、労働者の自らの意思により機能性食品が摂取され、心血管代謝値が改善することが示唆されました」と、研究グループでは述べている。
研究は、金城学院大学生活環境学部の白井禎朗助教、福岡女子大学国際文理学部の佐久間理英准教授、浜松医科大学健康社会医学講座の中村美詠子准教授らによるもの。研究成果は、「Food & Function」に掲載された。
金城学院大学生活環境学部
福岡女子大学国際文理学部
浜松医科大学健康社会医学講座
Association between functional foods and cardiometabolic health in a real-life setting: a longitudinal observational study using objective diet records from an electronic purchase system (Food & Function 2022年1月31日)