2型糖尿病は脳の老化と認知機能の低下を加速する 診断前から脳に構造的損傷が起きている可能性

2022.06.08
 進行性の2型糖尿病患者では、糖尿病ではない人に比べ、脳の老化が約26%加速することが、米ニューヨーク州立大学による50~80歳の中高年約2万人が登録されたUK Biobankのデータ解析で明らかになった。

 糖尿病の人は、糖尿病のない同年齢の人に比べて、加齢にともなう実行機能の低下が13.1%多く、処理速度の低下は6.7%多かった。

 加齢と2型糖尿病の両方が、作業記憶・学習・柔軟な思考などの実行機能、さらには脳の処理速度の変化に影響しているという。さらに、2型糖尿病と正式に診断される何年も前から、すでに脳に重大な構造的損傷が起きている可能性もある。

UK Biobankの50~80歳の約2万人のデータを解析

 米ニューヨーク州立大学は、典型的な脳の老化と2型糖尿病にみられる老化との関係を評価し、2型糖尿病患者では老化と同様の神経変性パターンがみられるが、進行がさらに速いことを明らかにした。糖尿病での脳の老化に、インスリンによる脳のグルコース調節の不調が関わっている可能性がある。

 さらに、2型糖尿病と正式に診断される前の段階で、すでに脳に重大な構造的損傷が起きている可能性もあるという。糖尿病に関連する脳の変性を早期発見する、より敏感な検査法が緊急に必要とされている。

 研究グループは、UK Biobankに登録された50~80歳の約2万人のデータセットを解析し、通常の老化に加えて、糖尿病が脳に与える影響を評価した。これは、ヒトの寿命全体で利用可能な脳構造と機能に関する最大規模のデータセットで、脳スキャンと脳機能測定が含まれており、健康な個人と2型糖尿病と診断された個人の両方のデータが含まれている。研究グループはこれを使用し、さらに100件近い他の研究のメタアナリシスと比較し、老化だけでなく、糖尿病に特有な脳と認知機能の変性を特定することを目指した。

 「2型糖尿病と認知機能低下を関連付ける強力なエビデンスはすでにありますが、現在、臨床ケアの一環として、包括的な認知評価を受けている患者はほとんどいません。中年に始まる通常の脳の老化と、糖尿病によって引き起こされ、または加速された脳の老化を区別するのは難しい場合があります。今日まで、健康な人の生涯にわたる脳の神経学的変性と、同じ年齢の糖尿病患者でみられる変性と直接比較した研究はありません」と、同大学バイオ医療工学科のボトンド アンタル氏は言う。

 「糖尿病を診断するための日常的な臨床評価は通常、血糖値、インスリン値、体重などに焦点を当てていますが、しかし、2型糖尿病での神経学的影響は、標準的な手段で検出できるようになる何年も前から起きている可能性があります。従来の検査で2型糖尿病と診断されるまでに、患者はすでに不可逆的な脳損傷を被っている可能性があります」としている。

糖尿病の進行は脳の老化の26%の加速と関連

 解析の結果、研究グループは、加齢と2型糖尿病の両方が、作業記憶、学習、柔軟な思考などの実行機能の変化、および脳の処理速度の変化を引き起こすことを明らかにした。

 糖尿病患者は、糖尿病のない同年齢の人と比較して、加齢にともなう影響を超えて、実行機能がさらに13.1%低下し、処理速度はさらに6.7%低下していた。他の研究のメタアナリシスでも、この関連が確認された。2型糖尿病患者は、同じ年齢で同様の教育を受けた健康な個人と比較して、一貫して著しく低い認知能力を示した。

 研究グループはまた、MRIスキャンを使用して、糖尿病のある人とない人のあいだで脳の構造と活動について比較した。年齢とともに、主に腹側線条体と呼ばれる領域で、脳の灰白質が減少することを発見した。これは脳の実行機能にとって重要な部位だ。

 「糖尿病患者は、典型的な加齢にともなう影響を超えて、灰白質がさらに顕著に減少していました。通常の加齢と比較して、腹側線条体の灰白質はさらに6.2%減少しましたが、他の領域でも灰白質は減少していました」と、アンタル氏は指摘している。

 結論として、2型糖尿病に関連する神経変性のパターンは、通常の老化のパターンと強く重複しているが、神経変性はさらに加速していることを示唆された。さらに、脳機能に対するこれらの影響は、糖尿病の罹病期間が長くなるにつれてより深刻になり、糖尿病の進行は脳の老化の26%の加速と関連していた。

糖尿病の診断前に脳の損傷はすでに発生している可能性が

 「今回調査結果は、2型糖尿病とその進行が、脳の老化の加速に関連している可能性を示唆しています。脳でエネルギーの利用可能性が損なわれ、脳の構造と機能に大きな変化が生じている可能性があります」と、同大学コンピュテーショナル脳神経診断研究所のリリアンヌ ムジカパロディ所長は結論付けている。

 「糖尿病が正式に診断される以前に、この損傷はすでに発生している可能性があります。脳イメージングは​​、糖尿病に関連するこれらの神経・認知効果を特定および監視するための、臨床的に価値のある指標を提供できるようになる可能性があります。2型糖尿病の脳ベースのバイオマーカーとその神経認知効果を特異的に標的とする治療戦略についての研究が強く求められています」。

Type 2 diabetes accelerates brain aging and cognitive decline (eLife 2022年5月24日)
Type 2 diabetes mellitus accelerates brain aging and cognitive decline: Complementary findings from UK Biobank and meta-analyses (eLife 2022年5月24日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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