【新型コロナ】糖尿病リスクはワクチン未接種者で上昇 感染により糖尿病の発症リスクは2.35倍に

2023.02.16
 新型コロナ感染後の糖尿病の発症リスクは、予防ワクチンの接種を受けていない患者で高いことが、米シダーズ サイナイ 医療センターが2万3,709人を対象に実施したコホート調査で明らかになった。ワクチン接種の利点があらためて示された。

 感染後のオッズ比がもっとも高かったのは糖尿病(オッズ比2.35)で、高血圧(同1.54)、脂質異常症(同1.22)となった。

 感染後の糖尿病リスクは、予防接種を受けた患者(同1.07)では、予防接種を受けていない患者(同1.78)より低かった。

ワクチン接種と感染後の糖尿病の発症リスクとの関連を検証

 研究は、米シダーズ サイナイ 医療センターSmidt心臓研究所のAlan Kwan氏やJoseph Ebinger氏らによるもの。研究成果は、「JAMA Network Open」に2月14日に掲載された。

 新型コロナのパンデミックの初期段階から、感染後に回復した患者で、糖尿病、高血圧、脂質異常症などを新規に発症し、心血管代謝疾患のリスクが上昇することが報告されている。

 感染力が強いが毒性は弱いとされるオミクロン株が優勢だった時期に、感染後に心血管代謝疾患リスクが高い状態が持続するのか、減弱するのか、さらにはワクチン接種がこれらのリスクに関連するのかについてよく分かっていなかった。

 そこで研究グループは、米カリフォルニア州ロサンゼルスにあるシダーズ サイナイ 医療システムで、2020年3月~2022年6月に、新型コロナの感染が確認された平均年齢47.4歳の成人2万3,709人(男性 46%、女性 54%)を対象に、大規模コホート研究を実施した。診断は国際疾病分類(ICD)に従い行った。

 患者の新型コロナの最初の感染の前後に、新たに報告された心血管代謝疾患(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の診断を特定し、感染の90日前と90日後に発生した新規の心血管代謝診断のオッズ比を推定した。

 パンデミック中の医療機関利用の混乱から生じる一時的な交絡因子の影響を除外するため、新規心血管代謝診断のオッズ比を、新型コロナとは関係のないヘルスケア関与のマーカーを示す新規ベンチマーク診断(尿路感染症および胃食道逆流症)のオッズ比と比較した。

 多変量ロジスティック回帰モデルでは、年齢・性別・感染のタイミングを調整しながら、感染90日前と感染後90日で発生した新規心血管代謝診断と新規ベンチマーク診断のオッズ比を推定。

感染後の糖尿病発症率は2.35倍に上昇 予防接種を受けていない患者で高い

 その結果、新型コロナ感染後90日以内に発生した糖尿病、高血圧、脂質異常症、およびベンチマーク診断のそれぞれの新規発症率は、感染前よりも高いことが示された。

 感染後のオッズ比がもっとも高かったのは糖尿病(2.35、95%CI 1.94~2.89、P<0.001)で、続いて高血圧(1.54、95%CI、1.35~1.76、P<0.001)、ベンチマーク診断(1.42、95%CI 1.25~1.61、P<.001)、脂質異常症(1.22、95%CI 1.03~1.47 P=0.03)となった。

 調整多変量モデルでは、新型コロナ感染前と感染後に新規に糖尿病を発症するリスク(ベンチマークと比較)は、有意に上昇した(1.58、95% CI 1.24~2.02、P<0.001) 。しかし、ベンチマーク診断に対する高血圧および脂質異常症のリスクは異なった。

 感染後の糖尿病リスクは、予防接種を受けていない患者(1.78、95%CI 1.35~2.37、P<0.001)の方が、予防接種を受けた患者(1.07、95%CI 0.64~1.77、P=0.80)より高かったが、ワクチン接種状況と糖尿病診断のあいだの相互作用期間は統計的に有意ではなかった(0.59、95%CI 0.34~1.06、P=0.08)。

 年齢、性別、高血圧・脂質異常症などの既存の心血管危険因子による相互作用については証拠が示されなかった。また、オミクロン株の感染に関連する年齢、性別、初発の感染タイミングは、どのモデルでも新型コロナ感染の前後での新規の心血管代謝診断のリスク増加とは関連していなかつた。

新型コロナの予防ワクチン接種の利点をあらためて示唆

 「今回のコホート研究では、新型コロナ感染は糖尿病のリスク増加と関連していることが示され、それはメタ分析の結果と一致していた。今回の結果は、オミクロン株が優勢になった時期にも、そのリスクが持続し、一時的な交絡因子を除外した後でも関連性が残ったことを示唆している」と、研究グループでは述べている。

 「新型コロナ感染後の糖尿病リスクは、予防接種を受けた患者よりも、予防接種を受けていない患者で高く、予防接種の利点があらためて示唆された」としている。

 感染後の糖尿病リスクに寄与するメカニズムは不明のままだが、インスリン抵抗性に寄与する持続的な炎症が経路として考えられるとしている。

 今回の研究の限界として、診断コーディングへの依存、説明されていない交絡因子(感染重症度指数)、および複数の相互作用を検討するには不十分なサンプルサイズと統計的検出力を示している。

 「新型コロナによる心血管代謝性後遺症と、新型コロナワクチン接種が、心血管代謝性疾患のリスクを軽減するかどうかを解明するには、追加の研究が必要」としている。

Association of COVID-19 Vaccination With Risk for New-Onset Diabetes After COVID-19 Infection (JAMA Network Open 2023年2月14日)
Association of COVID-19 Vaccination With Risk for Incident Diabetes After COVID-19 Infection (JAMA Network Open 2023年2月14日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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