アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」をFDAが承認 認知症の進行と認知機能の低下を抑制

2023.07.11
 米国食品医薬品局(FDA)が、アルツハイマー病治療薬として、「レカネマブ(LEQEMBI)」注射100mg/mL溶液について、フル承認に向けた生物製剤承認一部変更申請(sBLA)を承認したと、エーザイとバイオジェンが発表した。

 米国における適応症は、アルツハイマー病(AD)の治療であり、レカネマブによる治療は、臨床試験と同様、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の患者で開始することとしている。

ADのフル承認を取得した世界初かつ唯一の治療薬に

 レカネマブは今回の承認により、アルツハイマー病(AD)の進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせることを示す、フル承認を取得した世界初かつ唯一の治療薬となった。

 レカネマブは、アミロイドベータ(Aβ)の可溶性(プロトフィブリル)および不溶性凝集体に対するヒト化IgG1モノクローナル抗体。

 レカネマブは、この進行性のADを治療するために、継続的に蓄積されるもっとも神経毒性の高いAβ(Aβプロトフィブリル)をターゲットとして除去し、既存のプラークを除去する。

 エーザイが開発および薬事申請をグローバルに主導し、同社の最終意思決定権のもとで、エーザイとバイオジェンが共同商業化・共同販促を行うとしている。

認知症スコアを27%抑制 軽度認知症でのADLでは37%のベネフィット

 「レカネマブ」は臨床試験で、多様な人種・民族、併存疾患や併用治療薬、ADによる軽度認知障害(MCI)と軽度ADなど、米国メディケア受給者に一般化可能な集団で、臨床的に意義のある認知・機能低下を抑制することが示された。

 「レカネマブ」のフル承認は、エーザイの大規模グローバル臨床第3相検証試験であるClarity AD試験のデータにもとづいている。

 主要評価項目は、全般臨床症状の評価指標であるCDR-SBであり、レカネマブは臨床的認知症尺度のスコアであるCDR-SBでの18ヵ月時点の臨床症状の悪化をプラセボと比較して27%抑制した。

 また、副次評価項目のひとつである、衣服の着脱、食事、地域活動への参加など当事者様が自立して生活する能力を介護者が評価するADCS MCI-ADLでは、有意に37%のベネフィットが認められたとしている。

レカネマブ(LEQEMBI) 米国での適応症および重要な安全性情報

適応症 レカネマブの適応症はアルツハイマー病(AD)の治療であり、レカネマブによる治療は、臨床試験と同様、ADによる軽度認知障害または軽度認知症の患者において開始すること。
重要な安全情報 警告:アミロイド関連画像異常(ARIA)
  •  レカネマブなどのアミロイドβ凝集体に対するモノクローナル抗体は、浮腫を伴うARIA(ARIA-E)およびヘモジデリン沈着を伴うARIA(ARIA-H)として特徴づけられるアミロイド関連画像異常(ARIA)を引き起こす可能性がある。ARIAの発現率と発現タイミングは治療法によって異なる。ARIAは通常、治療の初期に発現し、また無症候性であるが、まれに生命を脅かす重篤な事象が発生することがある。このクラスの薬剤による治療を受けた患者において、1cmを超える重篤な脳内出血が観察されることもあり、その中には致死的なものも含まれる。
  •  アポリポタンパク質Eε4(ApoEε4)ホモ接合体:レカネマブを含むこのクラスの薬剤で治療を受けたApoEε4ホモ接合体である患者(ADの約15%)は、ヘテロ接合体や非保有者の患者と比較して、症候性や重篤、および画像判定による重度のARIAを含むARIAの発現率が高くなる。ARIA発現のリスクを知るために、治療開始前にApoEε4ステータスの検査を実施する必要がある。検査の前に、処方医は遺伝子型毎のARIAの発現率と遺伝子型テスト結果の意味について患者と話し合う必要がある。処方医は、遺伝子型テストが実施されない場合でも、レカネマブで治療できることを患者に知らせる必要がある。ただし、患者がホモ接合体でARIAのリスクが高いかどうかは判断できない。
  •  レカネマブによる治療の開始を決定する場合には、ADの治療におけるレカネマブのベネフィットとARIAに関連する重篤な有害事象の潜在的リスクを考慮すること。
警告・注意事項 アミロイド関連画像異常
  •  レカネマブは、ARIA-EおよびARIA-Hを引き起こす可能性がある。ARIA-Eは脳浮腫や脳胞液貯留として、ARIA-Hは微小出血や脳表ヘモジデリン沈着症としてMRIで観察される。ARIAは、アルツハイマー病患者で自然に発現することがある。アミロイドβ凝集体に対するモノクローナル抗体に関連したARIA-Hは、一般にARIA-Eの発現に伴って生じる。ARIA-HとARIA-Eは一緒に発現する可能性がある。
  •  ARIAは通常、治療の初期に発現し、また無症候性であるが、まれに痙攣、てんかん重積状態など、生命を脅かす重篤な事象が発生することがある。ARIAに関連する症状として、頭痛、錯乱、視覚障害、めまい、吐き気、歩行障害などが報告されている。また、局所的な神経障害が生じることもある。ARIAに関連する症状は、通常、時間の経過とともに消失する。
副作用
  •  Clarity AD試験において、レカネマブ投与中止に至ったもっとも一般的な副作用はARIA-H(微小出血)であり、レカネマブ投与群の2%(15/898例)に対し、プラセボ投与群は1%未満(1/897例)だった。
  •  Clarity AD試験において、レカネマブ投与群(N=898)の5%以上で報告され、プラセボ投与群(N=897)より2%以上高い発生率であった主な副作用は、Infusion reaction(レカネマブ:26%、プラセボ:7%)、ARIA-H(レカネマブ:14%、プラセボ:8%)、ARIA-E(レカネマブ:13%、プラセボ:2%)、頭痛(レカネマブ:11%、プラセボ:8%)、中枢神経系の表在性シデローシス(レカネマブ:6%、プラセボ:3%)、発疹(レカネマブ:6%、プラセボ:4%)、および悪心・嘔吐(レカネマブ:6%、プラセボ:4%)だった。

CMS announces new details of plan to cover new Alzheimer’s drugs (メディケア メディケイド 2023年6月22日)
Eisai Presents Full Results Of Lecanemab Phase 3 Confirmatory Clarity Ad Study For Early Alzheimer’S Disease At Clinical Trials On Alzheimer’S Disease (Ctad) Conference (エーザイ 2022年11月30日)
Large Aggregates Are the Major Soluble Aβ Species in AD Brain Fractionated with Density Gradient Ultracentrifugation (PLOS ONE 2012年2月15日)
Lecanemab, Aducanumab, and Gantenerumab — Binding Profiles to Different Forms of Amyloid-Beta Might Explain Efficacy and Side Effects in Clinical Trials for Alzheimer’s Disease (Neurotherapeutics Article 2022年10月17日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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