⾎糖正常・予備群・糖尿病の3段階で高血圧は心疾患・脳卒中リスクを上昇 軽度の血圧上昇でもリスクに 日本の60万⼈のビッグデータで解明

2021.06.09
 新潟⼤学は、日本の65歳未満の60万⼈の医療ビッグデータの分析により、⾎糖正常、前糖尿病(境界型糖尿病)、糖尿病の3段階で、⾎圧が虚⾎性⼼疾患・脳卒中の発症に及ぼす影響について検討した。
 その結果、これら3段階のいずれでも、収縮期⾎圧120mmHg以上の軽度の⾎圧上昇であっても、虚⾎性⼼疾患、脳卒中発症リスクがともに有意に上昇することを明らかにした。
 ⾎圧値が正常より少し⾼い程度の段階であっても、早期から減塩を含む⽣活習慣改善に取り組むことが重要であることが示された。また、虚⾎性⼼疾患については、⾎圧上昇と糖尿病との相加効果がみられたものの、脳卒中については、そうした相加効果はみられないことも分かった。

⾎圧上昇により⼼疾患・脳卒中リスクは、⾎糖正常、予備群、糖尿病の3段階でどう上昇するかを調査

 ⼼筋梗塞や狭⼼症などの虚⾎性⼼疾患、脳梗塞や脳出⾎などの脳卒中は、⽣活の質(QOL)の低下や健康寿命を短縮させることから、発症予防が重要となる。⾼⾎圧と糖尿病はいずれも、虚⾎性⼼疾患・脳卒中発症のリスクを上昇させるとされてきた。

 しかし、正常値(120/80mmHg未満)と⽐べ、⾎圧の上昇により、虚⾎性⼼疾患・脳卒中発症リスクがどの程度上昇するかを、⾎糖正常、前糖尿病(いわゆる糖尿病予備群)、糖尿病の3つの⾎糖状態で同⼀集団にて詳細に検討した報告はほとんどなかった。

 研究グループは今回、JMDCと共同で、診療報酬請求(レセプト)と健診の⼤規模データを連結して解析した。その結果、いずれの⾎糖の段階でも、収縮期⾎圧120mmHg以上、拡張期⾎圧75mmHg以上から虚⾎性⼼疾患、脳卒中発症リスクが段階的に上昇することが明らかになった。

 また、⾼⾎圧と糖尿病が虚⾎性⼼疾患発症に相加的(加算的)に影響するのに対して、⾼⾎圧が脳卒中発症に与える影響は、⾎糖の段階によらずほぼ⼀定であることが判明した。

 研究は、新潟⼤学医学部⾎液・内分泌・代謝内科研究室の⼭⽥万祐⼦医師、藤原和哉准教授、曽根博仁教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国糖尿病学会(ADA)が発行する学術誌「Diabetes Care」に掲載された。

⾎糖正常・予備群・糖尿病いずれの段階でも、軽度の血圧上昇は虚⾎性⼼疾患・脳卒中のリスクを上昇させる

 研究グループは、健診と健康保険レセプトデータを合わせた分析により、2008年から2016年に健診を受け、3年以上追跡可能だった、過去に虚⾎性⼼疾患、脳卒中の既往のない18~64歳の59万3,196⼈を抽出し、⾎糖の段階別(⾎糖正常、糖尿病予備群、糖尿病)に、カテーテル治療やバイパス⼿術などを要した重症虚⾎性⼼疾患、および⾎栓溶解療法や⾎管内治療など⼊院治療を要した脳卒中の発症を同定した。

 その後、年齢、⾼LDL(悪⽟)コレステロール⾎症、低HDL(善⽟)コレステロール⾎症、喫煙、肥満などの、既知の虚⾎性⼼疾患・脳卒中のリスク因⼦の影響を除いて(補正して)、収縮期⾎圧120mmHg未満、拡張期⾎圧75mmHg未満と⽐較して、⾎圧値の上昇により、どの程度虚⾎性⼼疾患、脳卒中を発症しやすいかを⾎糖の段階別に検討した。さらに、⾎糖の段階と⾎圧レベルを組み合わせた分析を行った。

 その結果、追跡期間(中央値)5.2年に2,240⼈が虚⾎性⼼疾患、3,207⼈が脳卒中を発症した。

 収縮期⾎圧120mmHg未満、拡張期⾎圧75mmHg未満と⽐較すると、どの⾎糖の段階でも、⽐較的軽度の⾎圧値の上昇から虚⾎性⼼疾患・脳卒中発症リスクが上昇することが明らかになった。

 収縮期⾎圧が120mmHg未満と⽐較して、120~129mmHg(正常⾼値⾎圧)では、⾎糖正常、糖尿病予備群、糖尿病で、虚⾎性⼼疾患の発症リスクはそれぞれ2.1倍、1.4倍、1.5倍に上昇し、脳卒中の発症リスクはそれぞれ1.5倍、1.7倍、1.7倍に上昇した。

⾎糖正常、糖尿病予備群、糖尿病のどの段階であっても
⾎圧が上昇すると虚⾎性⼼疾患や脳卒中のリスクは上昇する

⾎糖正常、糖尿病予備群、糖尿病いずれにおいても、⾎圧が上昇すると虚⾎性⼼疾患・脳卒中の発症者数が上昇した。どの⾎圧の段階でも、虚⾎性疾患は脳卒中より糖尿病影響を強く受けることが示された。拡張期⾎圧でもおおむね同様の結果になった。 </div style="font-size: 90%; margin: 0px 30px 0px 30px ;">
出典:新潟⼤学、2021年

糖尿病では収縮期⾎圧が120mmHg未満でも、⾎糖正常・予備群の150mmHgと同程度の虚⾎性⼼疾患の発症が

 さらに、⾎糖の段階と⾎圧値を組み合わせて分析した結果、糖尿病では、収縮期⾎圧が120mmHg未満であっても、⾎糖正常および糖尿病予備群の収縮期⾎圧が150mmHgと同程度に虚⾎性⼼疾患を発症することが判明した。

 また、⾼⾎圧と糖尿病は虚⾎性⼼疾患発症に相加的(加算的)に影響することが明らかになり、⾎糖正常で収縮期⾎圧が120mmHg未満と⽐較して、糖尿病かつ収縮期⾎圧150mmHg以上では、虚⾎性⼼疾患発症リスクは8.4倍に上昇した。

 ⼀⽅で、⾼⾎圧が脳⾎管疾患発症に与える影響は、⾎糖の段階によらず、約5倍程度とほぼ⼀定であることが判明した(⾎糖正常で収縮期⾎圧が120mmHg未満と⽐較して、⾎糖正常、糖尿病予備群、糖尿病の収縮期⾎圧が150mmHgにおける脳卒中リスクはそれぞれ5.0倍、4.4倍、5.6倍)。拡張期⾎圧でも収縮期⾎圧と同様な傾向が明らかになった。

⾎圧と⾎糖の段階別の虚⾎性⼼疾患(A)、脳卒中(B)の累積発症率(カプラン・マイヤー解析)

⾎糖正常、糖尿病予備群、糖尿病いずれでも、⾎圧の上昇にともない虚⾎性⼼疾患・脳卒中の累積発症率は上昇した。どの⾎圧の段階でも、虚⾎性⼼疾患は脳卒中より糖尿病の影響を強く受けることが分かる。拡張期⾎圧においてもおおむね同様の結果になった。

⾎糖と⾎圧の段階別と虚⾎性⼼疾患、脳卒中発症リスクの関連(Cox ⽐例ハザードモデル)

⾎糖正常、糖尿病予備群、糖尿病いずれでも、収縮期⾎圧120mmHg以上、拡張期⾎圧75mmHg以上であると、収縮期⾎圧120mmHg未満、拡張期⾎圧75mmHg未満と⽐較し、虚⾎性⼼疾患、脳卒中発症リスクが上昇することが示された。拡張期⾎圧でもおおむね同様の結果になった。
出典:新潟⼤学、2021年

⾎圧値が正常より少し⾼い段階から介入が必要

 今回の研究では、糖尿病の有無に関わらず、世界の現⾏の診療ガイドラインの診断基準値(140/90mmHg)よりかなり低い⾎圧値から、虚⾎性⼼疾患、脳卒中リスクが有意に上昇することが明らかになった。

 このことは、⾎圧値が正常より少し⾼い程度の段階であっても、早期から減塩を含む⽣活習慣改善に取り組むことが重要であることを示している。

 なお、「今回の研究は、⾎圧が軽度上昇している集団に対して、薬物療法などの治療介⼊を⾏うことで虚⾎性⼼疾患、脳卒中発症のリスクが低下するかを検討したものではないため、今後、⽣活指導や薬物による治療介⼊研究を⾏うことにより、虚⾎性⼼疾患、脳卒中リスクが低下するかを確認する必要があります」と、研究者は述べている。

新潟⼤学医学部⾎液・内分泌・代謝内科
Associations of systolic blood pressure and diastolic blood pressure with the incidence of coronary artery disease or cerebrovascular disease according to glucose status(Diabetes Care 2021年5⽉25⽇)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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