パンデミック下の米国で糖尿病患者の血糖管理は悪化していない
Patel氏らは、米国の医療関連データベースであるOptum Labs Data Warehouseに登録されており、民間保険または公的保険(メディケアアドバンテージ)に加入している18歳以上の成人2型糖尿病患者のデータを利用。2019年(135万7,029人)と2020年(136万4,522人)の計2件のコホートを作成。2020年の第10週目までをプレパンデミック期間、第11~48週をパンデミック期間と定義し、それぞれの期間中の患者数や行われた医療行為を両年で比較検討することで、パンデミックによる糖尿病医療への影響を評価した。
各年の第10週目までの外来受診者数、HbA1c検査施行件数、処方箋発行枚数、およびHbA1cレベルなどには有意差はなかった。しかし2020年はパンデミックに入ると、その初期に外来受診者数と検査の施行件数が大幅に減少していた。ただし2020年の48週目に向かって徐々にベースライン近くのレベルに回復していった。
2020年のパンデミック期間中に1回以上外来を受診した患者の割合は、2019年の同時期が87.3%であるのに対して85.0%だった(相対的変化-2.6%)。同様に、HbA1c検査が施行されていた患者の割合は、2019年が81.8%、2020年は76.5%(同-6.5%)、網膜症検査は同順に6.9%、5.6%(同-18.8%)、腎症検査は43.9%、40.1%(同-8.5%)だった。
一方、2020年のパンデミック期間中に処方箋が1回以上発行されていた患者の割合は、2019年の同時期が62.2%であるのに対して64.2%(同3.6%)だった。またHbA1cの検査結果は同順に、7.14%、7.16%(同0.3%)だった。HbA1cは群間差が統計的に有意だったが、著者らはその理由を「サンプルサイズが大きいことによるものであって、ほぼ同等」と述べている。
このほか、2019年に遠隔医療を利用した患者の割合は0.3%に過ぎなかったが、2020年は29.1%に上ったことも明らかになった。
以上より著者らは、「COVID-19パンデミック中に糖尿病外来患者数と検査施行件数の減少が見られたが、医薬品処方状況や血糖コントロールに関しては、パンデミックがマイナスの影響を及ぼしたとするエビデンスは得られなかった」とまとめている。
また、パンデミック中に処方件数が若干増加した傾向があったことに関連して、「糖尿病患者の大規模災害への備えに関するガイドラインでは、災害発生時には医療専門家へのアクセスよりも、まず医薬品を手元に確保することの重要性を強調している。ガイドラインが想定しているそのような状況に類似した状況が、今回のパンデミックで生じていた」と述べている。
[HealthDay News 2021年7月7日]
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