[高血圧・肥満・喫煙・糖尿病]は日本人の寿命を縮める要因 4つがあると健康寿命が10年短縮 NIPPON DATA90

2025.02.05
 ▼高血圧、▼肥満、▼喫煙、▼糖尿病のすべてがあてはまる人は、健康寿命が男性で9.7年、女性で10.1年、それぞれ短くなることが、東京科学大学、東邦大学、滋賀医科大学の研究により明らかになった。

 ▼血圧値を管理する、▼血糖値を管理する、▼健康的な体重を維持する、▼タバコを吸わないといった対策が、健康寿命を延ばすために必要であることがあらためて示された。

 研究成果は、検査結果を使った生活指導や、診療での生活習慣改善・治療の動機づけ、各自治体の健康づくり活動への応用が期待される。

高血圧・肥満・喫煙・糖尿病は日本人の健康寿命を縮める要因

 ▼高血圧、▼肥満、▼喫煙、▼糖尿病のすべてがあてはまる人は、健康寿命が男性で9.7年、女性で10.1年、それぞれ短くなることが、コホート研究「NIPPON DATA90」に参加した6,569人を20年間追跡した、東京科学大学、東邦大学、滋賀医科大学による研究で明らかになった。

 健康日本21では、「日常生活に制限があること」が不健康と定義されている。NIPPON DATA 90では、基本的日常生活動作を評価するための尺度のひとつである「カッツ日常生活動作」が用いられている。

 健康寿命(HLE)は、先進国で広く使用されている健康指標だが、非感染性疾患(NCDs)のリスク因子の組み合わせとの関連についてはよく分かってない。

 そこで東京科学大学、東邦大学、滋賀医科大学の研究グループは、NIPPON DATA90の20年間の追跡データを分析し、全国300地区の6,569人を対象に、日本人での血圧、肥満度、喫煙状況、糖尿病の組み合わせが、65歳健康寿命に与える影響を明らかにした。

 NIPPON DATA90の対象者は、1990年に国が実施した循環器疾患基礎調査および国民栄養調査の参加者で、全国から無作為抽出された300地区の一般住民。5年ごとの追跡調査で、生死と死因の追跡、および日常生活動作(ADL)、生活の質(QOL)などが調査されている。

 その後、65歳以上の参加者に対して、1995年と2000年に日常生活活動に関する調査を実施し、多相生命表を使用して、組み合わせ固有のHLEとその95%信頼区間(CI)を算出した。

4つの危険因子のすべてがあると健康寿命は10年短縮

 その結果、血圧が160/100mmHg以上のII/III度高血圧、体格指数(BMI)が30以上の肥満、喫煙習慣、糖尿病のすべてが該当する男性の65歳時のHLEは12.9年[95%CI 12.9〜13.0年]になり、これら危険因子をまったくもたない男性の22.6年[同 22.4〜22.8年]に比べて、9.7年短いことが示された。

 同様に、4つの危険因子のすべてが該当する女性の65歳時のHLEは16.2年[同 15.9~16.5年]になり、これら危険因子をまったくもたない女性の26.3年[同 26.3~26.3年]に比べて、10.1年短いことが示された。

日本人における血圧、肥満度、喫煙状況、糖尿病の組み合わせによる65歳時の健康寿命(HLE)
出典:東京科学大学、2025年

 研究グループは、日本人集団での非感染性疾患の主要危険因子である血圧、肥満度、喫煙状況、糖尿病の集積度に応じた65歳健康寿命を、192通りの体系的なチャートとして示した。

 なお、肥満度については、低体重が健康寿命の短縮に影響を及ぼすことも示された。低体重は、病気による体重減少を反映している場合も考えられる。

 肥満については、普通体重と同程度の健康寿命であることが示されたが、この結果は、日本人では肥満者の割合が欧米に比べて少ないため、明確な影響があらわれにくかった可能性があるとしている。

日本からエビデンスを発信

 研究は、東京科学大学大学院保健衛生学研究科公衆衛生看護学分野の月野木ルミ教授、東邦大学医学部社会医学講座医療統計学分野の村上義孝教授、滋賀医科大学NCD疫学研究センターの三浦克之教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Epidemiology」にオンライン掲載された。

 研究グループは、「研究成果は、健診結果をもとにした保健指導や診療における生活習慣の改善および治療への動機づけに役立つことが期待されます。また、健康日本21(第三次)にもとづき、各自治体が実施するさまざまな健康づくりの取り組みでも、本研究成果が効果的に活用されることが見込まれます」と述べている。

 今後の展開としては、「本研究で用いたNCDsの主要危険因子以外にも、健康寿命に影響を与える要因は多岐にわたることが知られています。今後もこれらの要因が健康寿命に与える影響について検討を進め、得られた知見をもとに、世界的な長寿国である日本からエビデンスを発信し続けていきたいと考えています」としている。

NIPPON DATA
東京科学大学大学院保健衛生学研究科
滋賀医科大学NCD疫学研究センター
Comprehensive assessment of the impact of blood pressure, body mass index, smoking, and diabetes on healthy life expectancy in Japan: NIPPON DATA90 (Journal of Epidemiology 2025年1月11日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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