【新型コロナ】コロナ禍で「熱中症」が東京では増加傾向 ステイホームにともなう暑熱順化の遅れか
1日当たりの熱中症搬送者数を予測し、実測値と比較することで、コロナ禍の熱中症への影響について検討した。
東京都では、屋内・屋外ともに、例年よりも増加傾向にあり、とくにお盆期間中の屋内搬送者数が予測値を大きく上回った。
コロナ禍によるステイホームにともなう暑熱順化の遅れや体力低下により、同じ作業を行った場合でも多くのエネルギーを消費し体温が上昇しやすくなるなどの理由が考えられる。
熱中症の搬送者数 昨年は東京都で屋内・屋外ともに増加
名古屋工業大学などの研究グループは、東京都、大阪府、愛知県、宮城県を対象に、気象データとシミュレーション技術により、コロナ禍が2020年に、熱中症の搬送者数にどう影響したかを調査した。
研究は、名古屋工業大学、東北大学サイバーサイエンスセンター、東京電機大学の研究グループによるもの。1日当たりの熱中症搬送者数を予測、実測値と比較することで、コロナ禍の熱中症への影響について検討した。
気象情報にもとづいた熱中症搬送者数の予測技術を用いることで、気象の影響を取り除いた、気象の影響や人の暑さ慣れなどの要素を含めた比較が可能となる。研究グループは、人口動態も考慮した予測値も示した。
その結果、東京都では、屋内・屋外ともに、例年よりも増加傾向にあり、とくにお盆期間中の屋内搬送者数が予測値を大きく上回った。推定式では急激な気温の変化を十分考慮できないことに加え、コロナ禍による帰省の自粛や、ステイホームによる体力低下などが複合的に影響している可能性がある。
コロナ禍によるステイホームにともなう暑熱順化の遅れや体力低下により、同じ作業を行った場合でも、多くのエネルギーを消費し、体温が上昇しやすくなるなどの理由が考えられる。
一方、大阪府、愛知県では、屋外からの搬送者は、お盆時期ではステイホームによる搬送者数の減少がみられたが、その他の時期については、屋内・屋外搬送者数ともに変化はみられなかった。
コロナ禍によるステイホームの影響か
2013年~2020年の月ごとの東京都、大阪府、愛知県、宮城県の熱中症搬送者数をみると、2020年の搬送者数は、7月は例年に比べ減少したが、8月では多くなった。
ただし、熱中症の患者および搬送者数は、気象の影響が大きいため、7月の搬送者数の減少がコロナ禍の影響なのか、年ごとの気象の違いなのかは分からなかった。
そこで研究グループは、気象データと計算シミュレーション技術を融合する技術を開発。気象条件から、スーパーコンピュータにより深部体温変化・発汗量を推定、人口およびその年齢分布等を考慮して、熱中症搬送者数を予測するというものだ。この手法により、気象の影響を取り除いた比較が可能になる。
各都府県の熱中症搬送者数を予測したところ、大阪府、愛知県、宮城県では、ほぼ同様の傾向となり、屋内搬送者は、1日当たりの平均誤差が大阪では5.4人/日、愛知で5.0人/日、宮城で2.1人/日であり、予測式とよく一致した。
このことから、ステイホームの影響で屋内にとどまる人の割合が多くなり、屋内からの熱中症搬送者では、例年と傾向は変わらないことが分かった。屋内の搬送者の7割程度が高齢者であり、そのため搬送者数はステイホームの影響を受けなかったと考えられる。
一方、屋外搬送者では、お盆明けなど予測値を上回った日があった。また、人口動態を考慮した予測値をみると、お盆時期でのみよく合致しており、コロナ禍によるステイホーム(外出の自粛)の影響がみられた。
熱中症リスクの低減に向けた啓発活動が必要
東京都では3府県と異なる傾向となり、とくにお盆期間中の屋内で予測値を大きく上回る結果になった。また、屋外でも予測値を上回る傾向となった。
コロナ禍による帰省の自粛、また3府県と同様、ステイホームによる体力低下などが複合的に影響している可能性がある。加えて、東京都は他の3府県と比べて、お盆前が比較的涼しく、その時期にお盆時期に急に暑くなったこともあり、推定値との相違が多くなった可能性がある。
「東京都以外では、屋外の搬送者数は、暑熱順化の問題もあり、ほとんど変化していません。屋内での搬送者数は、コロナ禍の影響をほぼ受けていないと考えられます」と、研究グループでは述べている。
「一方、東京都は、屋内・屋外ともに例年よりも増加傾向にあります。コロナ禍による帰省の自粛や、ステイホームによる体力低下などが複合的に影響している可能性があります」としている。
「今後、熱中症リスクの低減に向けた啓発活動に利用していくこと、また、救急搬送される患者数の推定などへの応用が期待されます」とまとめている。
コロナ禍の影響でとくにお盆期間中の屋内で予測値を大きく上回る結果に
名古屋工業大学
東北大学サイバーサイエンスセンター
東京電機大学