特定健診・保健指導は効果があるか? 肥満指標はわずかに改善 血糖や中性脂肪も 582万人のデータを解析

2023.01.05
 特定健診で保健指導対象となり、指導を受けた男女では、肥満指標がわずかに改善されたことを、関西大学が明らかにした。血圧、HbA1c、中性脂肪値でも、短期的な改善がみられた。

 関西大学は、厚生労働省より提供を受けた「匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データ(ナショナルデータベース)」より、2014年に特定健診を受診した約582万人のデータを分析した。

日本独自の予防政策である特定保健指導の効果を検証

 関西大学は、特定健診で保健指導対象と指摘された人をそうでない人を比較し、男女ともに肥満指標がわずかに改善されたことを明らかにした。また、血圧、HbA1c、空腹時血糖、中性脂肪にも、短期的な改善がみられた。

 生活習慣病である高血圧、2型糖尿病、脂質異常症は、増加の一途をたどっている。これらの疾患に罹患し動脈硬化が進行すると、循環器疾患の発症リスクが増大する。国民医療費や要介護を抑制するために、生活習慣病の早期の予防と治療が不可欠となっている。

 特定健康診査(特定健診)および特定保健指導は、全国規模で実施されている、海外では類をみない日本独自の予防政策だ。

 特定健診・保健指導で収集したデータは、厚生労働省で蓄積され、匿名化された「匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データ(ナショナルデータベース;NDB)」として研究利用されている。

 研究グループは、このNDBを用いて、特定健診・保健指導により、その後の腹囲・体重などの肥満指標や心血管リスク、生活習慣に改善がみられるかを縦断的に検討した。

 データ分析に際しては、準実験的手法のひとつである、回帰不連続デザインを採用した。

保健指導により1年間で肥満指標・心血管リスクはわずかに改善

特定保健指導により、肥満指標・心血管リスクでは改善がみられたが、効果は経年的には減衰した 20230105-4.jpg 出典:関西大学、2022年  対象となったのは、2014年に特定健診を受診した581万9,041人(男性:349万112人、女性:232万8,929人)。

 このうち、保健指導対象と指摘された人では、1年間で肥満指標がわずかに減少した。ただし、これらの効果は、時間の経過とともに減衰した。

特定健診で保健指導を受けた男女では、肥満指標がわずかに改善
NDBより2014年に特定健診を受診した581万9,041人のデータを解析

  男性 女性
腹囲 -0.27cm (95%信頼区間 [CI] -0.29~-0.26) -0.34cm (同 -0.41~-0.27)
体格指数 -0.07kg/m² (同 -0.075~-0.066) -0.11kg/m² (同 -0.13~-0.10)
体重 -0.21kg (同 -0.22~-0.19) -0.28kg (同 -0.32~-0.24))

 その後、保健指導を受けた人では、保健指導を受けなかった人に比べ、より大きな改善がみられた可能性があるという。

腹囲 -5.0cm (95%CI -5.3~-4.6) -5.7cm (-7.0~-4.4)
体格指数 -1.3kg/m² (-1.4~-1.2) -1.9kg/m² (-2.1~-1.6)
体重 -3.8kg (-4.0~-3.5) -4.7kg (-5.3~-4.0))

 さらに、男女ともに、血圧、HbA1c、空腹時血糖、中性脂肪にも、短期的な改善がみられた。

 保健指導は、男性の血圧、HbA1c、空腹時血糖、中性脂肪、およびHDLコレステロールの改善と関連していたが、女性では関連の大きさはより小さくなった。

 研究は、関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構(RISS)の中尾葉子研究員(リーズ大学心血管代謝研究機構)、本西泰三研究員(関西大学経済学部)らによるもの。研究成果は、「European Journal of Preventive Cardiology」にオンライン掲載された。

関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構 (RISS)
Impact of a national screening programme on obesity and cardiovascular risk factors (European Journal of Preventive Cardiology 2022年11月30日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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