「下肢静脈瘤」を医療機関で治療できると認知している割合は症状のある患者でも3割程度
下肢静脈瘤の症状があり認知していても「進行していく」「病院で治療できる」ことを知る患者は3割程度
6万人を対象とした調査では、「下肢静脈瘤」の認知度は22.4%で、3年前の調査の22.1%とほぼ変わらなかった。症状のある人でも49.1%にとどまり、半数は自身が罹患している可能性の高い病気について知らない状況が示された。「症状経験を有する人」は10.5%で、前回調査の8.8%からやや増加した。
下肢静脈瘤」の疑いがある症状の経験を有する2,475人を対象とした調査では、症状が続いている期間は、「1年~3年未満」20.1%、「3年~5年未満」17.3%、「5年~10年未満」19.0%、「10年~20年未満」13.3%、「20年以上」8.4%となり、78.1%が1年以上症状を抱えており、3年以上症状が続く人も58.0%に上ることが示された。
症状が気になるかについて「そう思う」「ややそう思う」と答えた人は63.9%だが、医師に相談したことがある人は24.7%にとどまっており、症状が気になっていても医師に相談することなく、1人で抱えてしまっている現状が浮き彫りになった。
受診しない理由は、「日常生活での不便がとくにないから」54.4%、「放っておいても改善する、または悪化しないと思ったから」35.2%、「病気だと思わなかったから」28.8%、「体質だから仕方がないと思ったから」23.1%と続き、疾患に対する認知・理解が進んでいない現状が示された。
症状を有し、下肢静脈瘤について知っている人でも、「進行していくこと」「病院で治療できること」を知る人は3割前後。保険適用された低侵襲な治療法があることを知る人は6.7%にとどまった。
治療や手術に求めるのは「痛みの少なさ」「術後のケアの楽さ」
治療や手術に求めることとして、「なるべく痛みが少ないことを最優先にしたい」66.9%、「術後のケアが楽な方がよい」78.0%、を挙げた人が多く、「多少痛みが多くなっても1回の手術で治療を終わらせたい」は35.2%と少ない傾向が示された。
症状により日常生活で困ることや不満に思うこととしては「人前で足を出すのが恥ずかしい」46.6%、「スカートやキュロット、短パンなど足を出す洋服を着るのに抵抗がある」46.1%、「老けて見える」42.7%など、見た目の悩みが上位を占めた。
一方、症状を病院で治療することによって、そうした悩みや不満が解決するとしたら、今後病院で治療を受けたいと思うかという質問に対し、「そう思う」「ややそう思う」が61.5%を占めた。
横浜南共済病院院長補佐で、心臓血管外科部長、循環器センター部長の孟真氏は、下記のようにコメントしている。
「下肢静脈瘤で治療が必要となるケースとしては大きく3つあります。1つ目は、症状があって辛い場合です。慢性的な足のだるさやむくみ、こむら返りなどの症状は、生活の質(QOL)を低下させる原因となります。我慢せず、医療機関を受診されることをお勧めします。2つ目は、重症化してうっ滞性皮膚炎などがおこっている場合です。症状が重くなってからでは回復が長引いたり、皮膚炎の跡が残ったりしますので、できればかゆみがはじまったり色が薄い時期などうっ滞性皮膚炎が軽い時に治療を受けていただきたいと思います。3つ目は、痛みやかゆみなど症状がなくても静脈瘤が目立ってきた場合です。調査では症状をもつ人の半数近くが"人前で足を出すのが恥ずかしい"と答えていたように、足の血管がコブのようになって、見た目に悩む患者さんが大勢います。見た目だけで症状がない場合、必ずしも手術は必要ありませんが、静脈瘤の病型が進行するタイプなのか、心配しないでいいタイプなのかががわかります。気になる場合は医師にご相談ください」。
「今回の調査では症状を抱えていても、下肢静脈瘤という病気について知らないためにそのまま放置している人がいまだ多いことが分かりました」とし、「調査結果をみると、まだまだ知る人は少ないですが、最近は手術が必要な場合でも低侵襲な治療法があります。いろいろな治療方法の中で最適な方法を医師と相談しながら決めることが大切です」と指摘している。「正しい認知と理解を広めていくこと」が課題だという。