高齢者の要介護化リスクを簡単な3つの体力テストで予測 体力を維持・向上するための生活指導・支援で活用
これらは下肢を中心としたバランス、立ち上がり、歩行能力を反映したテストだ。
65歳以上の高齢者で介護認定歴がない975人を対象とした追跡研究では、合計点数が高い人ほど、期間中に要介護認定を受けた人が多いことを確認した。
「これらの体力テストは、日本各地で行われており、要介護化を予測するうえで有用です。今後は、高齢者の体力を維持・改善するうえで効果的な運動プログラムの開発などが求められます」と、研究者は述べている。
要介護化リスクを3つの簡単な体力テストで予測
日本各地の保健センターなどで行われている高齢者向けの体力テストの測定値を得点化することで、要介護化リスクが高い高齢者を予測できる評価尺度を開発したと、筑波大学が発表した。
高齢者の体力の低下は、要介護状態に陥る(要介護化する)主な要因となる。各自治体では、高齢者の体力を維持・向上するための動機づけ支援や、実施している介護予防プログラムの効果を評価するため、体力測定会が行われている。
▼開眼片足立ち時間、▼タイムド アップ アンド ゴー、▼5回椅子立ち上がり時間は、そのテスト項目として取り入れられている。これらは下肢を中心としたバランス、立ち上がり、歩行能力を反映したテストだ。
開眼片足立ち時間 | 両手を腰にあて、片方の足を床面から離した状態で立ち続けた時間を測定する。 |
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椅子に腰かけた状態から合図とともに立ちあがり、3m前方のコーンを回って再び椅子に腰かけるまでの時間を測定する。 | |
5回椅子立ち上がり時間 | 両腕を胸の前で交差し、椅子に浅く座った状態で合図とともに、椅子から立ち上がって、ふたたび椅子に座る動作を測定する。 |
合計点数が高いほど要介護化のリスクが高い 新たな運動プログラムの開発も
研究は、筑波大学体育系の大藏倫博教授らによるもの。研究成果は、「Geriatrics & Gerontology International」に掲載された。
これまで、これらの体力テストは、テストごとの評価にとどまり、日本人高齢者に適した総合的な評価法の提案はなされていなかった。
そこで筑波大学の研究グループは、日本人高齢者を対象にした長期の追跡研究により、高齢者の要介護化を高い精度で予測可能な、複数のテスト結果を総合した評価尺度を作成した。
対象となったのは2009~19年までに茨城県笠間市で実施した体力測定会に参加した、介護認定歴がない65歳以上の高齢者975人(平均72.8±5.2歳、女性55.4%)。
研究グループは、要介護化の予測に貢献する項目の組み合わせとして、上記の3つの体力テストを統計的に選定した。そして、それら3つのテストの測定値と年齢、性、体格酢指標(BMI)を点数化して足し合わせる、要介護化を予測する評価尺度を開発した。評価尺度の得点幅は0から118点。
予測精度を分析した結果、この評価尺度の合計点数が高い人ほど、追跡期間中(平均で8.6年)に要介護認定を受けた人が多く、とくに41点以上の人は要介護化の高リスク者であることが分かったという。
「今回の研究から、日本各地で行われている開眼片足立ち時間、タイムドアップアンドゴー、5回椅子立ち上がり時間は、高齢者の要介護化を予測する上で有効な体力テストであり、それら3つを組み合わせて点数化すれば、各テストそれぞれで評価するよりも高い精度で要介護化リスクが高い高齢者を識別できることが分かりました」と、研究者は述べている。
「今後は高齢者で、これらの体力要素の維持・改善に効果的な既存の運動種目の検証や、新たな運動プログラムの開発が求められます」としている。
筑波大学体育系
Developing a battery of physical performance tests to predict functional disability in Japanese older adults: A longitudinal study from the Kasama study (Geriatrics & Gerontology International 2024年10月29日)