【新型コロナ】感染拡大の第1波で高血圧症、2型糖尿病、脂質異常症の患者の受診頻度は一時的に減少
第1波期間中に医師が長期間処方をして受診タイミングを調整した可能性
研究は、カリフォルニア大学の津川友介助教授、東京大学医学部附属病院・救急集中治療部の大沢樹輝氏、ヴィアトリス製薬、ミナケア、TXP Medicalの共同研究グループによるもの。研究成果は、「BMJ Open」にオンライン掲載された。
この後ろ向きコホート研究は2018年3月1日~2020年5月31日に実施され、対象となったのは男性6,856人(66%)、女性3,490年(34%)、平均年齢は57.5歳だった。属性は、高血圧症が8,051人(78%)、2型糖尿病が1,532人(15%)、脂質異常症が4,059人(39%)。
解析した結果、2020年3月、4月、5月での、慢性疾患患者(新型コロナウイルス流行以前から高血圧症、2型糖尿病、脂質異常症のいずれかの疾患で通院歴のある患者)の医療機関の平均受診回数は、3月の1.9回から、4月には1.7回に減少(p<0.001)し、5月には1.8回に回復していた。
月に1度も受診をしなかった患者の割合は、3月の15%から4月に24%に増加(P<0.001)し、5月に9%に減少した。新型コロナの流行の拡大、それにともなう緊急事態宣言の発令が4月の受診抑制につながったが、緊急事態宣言が解除された5月には感染拡大前のレベルに回復した。
この期間の薬剤処方量をPDC(対象期間における薬剤処方割合)を指標に評価したところ、慢性疾患患者のPDCは2020年3月87%、4月87%、5月85%となり、流行の前後で臨床的に意義のある差はみられなかった(3月vs4月 P=0.45)。その一因として、第1波流行期間中、医師は慢性疾患の治療に不可欠な薬剤をより長期間に処方し、意図的に受診のタイミングを調整した可能性が推察される。
早期に緊急事態宣言を発令した7都道府県の医療機関に通っている慢性疾患患者について、医療機関の平均受診回数は、2020年3月2.0回、4月1.7回、5月1.9回だった。月に1度も受診をしなかった患者の割合はそれぞれ14%、25%、7%となった。
統計的有意差は認められなかったものの、早期に緊急事態宣言が発令され新型コロナの影響が大きかった7都道府県では、その他の地域と比較して、慢性疾患患者の医療機関の平均受診回数の減少傾向および月に1度も受診しなかった人の割合の増加傾向はより顕著だった。
「高血圧症、2型糖尿病、脂質異常症は、心疾患や脳血管疾患、慢性腎臓病などのリスク因子で、持続的に管理される必要があるため、長期に医療機関への受診が行われなかった場合には、将来的な健康状態に悪影響を与える可能性がある。新型コロナの流行下で医療機関への受診頻度が低下しても、これらの慢性疾患を適切に管理する戦略の策定および仕組みの構築が求められる」と、研究者は述べている。
Physician Visits and Medication Prescriptions for Chronic Diseases During the COVID-19 Pandemic in Japan(BMJ Open 2021年7月8日)
東京オリンピック競技大会に関連した新型コロナウイルス感染症発生状況(速報)(国立感染症研究所 2021年8月20日)