加糖飲料が2型糖尿病と心血管疾患のリスクを上昇 世界で毎年220万人の糖尿病の原因に
糖質が加えられた高カロリーの清涼飲料の摂取により、世界で毎年220万人が2型糖尿病(T2D)を、120万人が心血管疾患(CVD)を新たに発症しているという推計を、米タフツ大学が発表した。
研究グループは、1990年と2020年の184ヵ国のデータをもとにSSBに起因する2型糖尿病および心血管疾患に対する国別・地域別負担を推定した。
加糖飲料により世界で毎年220万人が2型糖尿病を発症
糖質が加えられた高カロリーの清涼飲料の摂取により、世界で毎年220万人が2型糖尿病(T2D)を、120万人が心血管疾患(CVD)を新たに発症しているという推計を、米タフツ大学が発表した。
糖質の多い飲料(SSB)は血糖値を急上昇させ、長期間にわたり定期的に摂取していると、体重増加、内臓脂肪の増加、肝臓や骨格筋のインスリン抵抗性、さらに世界で主要な死亡原因となっている2型糖尿病や心臓病に関連する多くの代謝障害を引き起こすとしている。
研究は、米タフツ大学フリードマン栄養科学政策学部のDariush Mozaffarian氏らによるもの。研究成果は、「Nature Medicine」に掲載された。
研究グループは、1990年と2020年の184ヵ国のデータをもとにSSBに起因する2型糖尿病および心血管疾患に対する国別・地域別負担を推定した。
その結果、SSBは2020年に、世界で220万件の新規の2型糖尿病症例を引き起こし[95%不確実性区間 2.0~2.3]、120万件の新規の心血管疾患症例を引き起こしたことが示された[同 1.1~1.3]。これは、それぞれ全症例の9.8%と3.1%を占めるとしている。
SSBに起因する負担の割合は世界的に、女性よりも男性で、高齢者よりも若年成人で、高学歴成人よりも低学歴成人で、農村部成人よりも都市部成人で、それぞれ高くなった。
SSBにより大量の糖質を短時間に摂取することで、肝臓の脂肪合成が活性化され、肝臓と筋肉の異所性脂肪の沈着と代謝機能障害が促され、さらにSSBは食事中の他の健康的な食品に置き換えられる可能性があり、それらの不足によって害が及ぼされる。過剰な脂肪蓄積と代謝機能障害は、炎症性サイトカインを活性化し、高血圧、脂質異常症、糖尿病のリスクを高める。これらのリスク要因はすべて、アテローム性動脈硬化症とプラークの不安定化を促進し、虚血性心血管イベントの一因となるとしている。
加糖飲料の広告規制や課税など公衆衛生上の対策が必要
「SSBは、とくに低・中所得国で盛んに宣伝され販売されている。これらのコミュニティでは、有害な食品が消費されているだけでなく、健康への長期的な影響への対処が不十分な場合が多い」と、Mozaffarian氏は言う。
SSBに起因する負担の割合がもっとも高い地域は、ラテンアメリカとカリブ海諸国(2型糖尿病 24.4%、心血管疾患 11.3%)、サハラ以南アフリカ(2型糖尿病 21.5%、心血管疾患 10.5%)としている。とくにサハラ以南アフリカは、1990~2020年にSSBに起因する2型糖尿病(+8.8%)と心血管疾患(+4.4%)の発症率の増加がもっとも大きかった。
SSBの広告規制や課税など、公衆衛生上の多面的なアプローチが必要とされており、すでに一部の国では、この方向での対策が講じられる。メキシコは、SSBの国民1人あたり消費率が世界でもっとも多い国のひとつで、2014年にそうした飲料への課税を導入した。初期の調査では、この課税はとくに低所得者層での消費削減の効果をもたらしたことが示唆されている。
「とくに消費量が多く、健康への影響が深刻なラテンアメリカやアフリカの国々では、さらに多くの対策を講じる必要がある」と、Mozaffarian氏は指摘している。
研究は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、米国心臓学会(AHA)、メキシコ国立科学技術評議会の支援を得て行われた。
New Study Links Millions of Diabetes and Heart Disease Cases Globally to Sugary Drinks (タフツ大学 2025年1月6日)
Burdens of type 2 diabetes and cardiovascular disease attributable to sugar-sweetened beverages in 184 countries (Nature Medicine 2025年1月6日)