SGLT2阻害薬「フォシーガ」 左室駆出率を問わず慢性心不全患者の治療薬として使用可能に 添付文書を改訂
左室駆出率にかかわらず慢性心不全の治療薬として使用可能に
アストラゼネカと小野薬品工業は、選択的SGLT2阻害薬「フォシーガ錠5mg、10mg」(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)について、既承認の慢性心不全の「効能又は効果に関連する注意」に記載の「左室駆出率」に関する記載を削除、およびそれに関連する情報を追記し、日本における電子化された添付文書を改訂した。
フォシーガはこれにより、左室駆出率を問わず慢性心不全患者の治療薬として使用できるようになった。
日本で承認されているフォシーガの効能・効果は、「2型糖尿病」、「1型糖尿病」、「慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)、および「慢性腎臓病(ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)」。
主な変更点は以下の通り――。
- 「効能又は効果に関連する注意」の項の慢性心不全における「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。」の記載を削除
- 「臨床成績」の項に、左室駆出率の保たれた慢性心不全患者を対象とした国際共同第3相試験「DELIVER試験」の結果を追記
心不全は多くの場合、心臓が収縮するごとに送り出される血液量の割合の測定値である左室駆出率によって、駆出率低下をともなう心不全(HFrEF)(左室駆出率が40%以下)、駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)(左室駆出率が41%~49%)、駆出率が保持された心不全(HFpEF)(左室駆出率が50%以上)といったいくつかの種類に分類される。心不全患者の約半数はHFmrEFまたはHFpEFで、予後を改善する薬物治療の選択肢がほとんどないのが現状だ。
今回の電子添文の改訂は、上記のDELIVER試験の結果にもとづき変更された。DELIVER試験は、2型糖尿病の有無を問わず、左室駆出率が40%超の心不全患者の治療として、フォシーガの有効性をプラセボとの比較で評価するようにデザインされた、国際共同、無作為化、二重盲検、並行群間比較、プラセボ対照、イベント主導型第3相試験。
フォシーガは、基礎治療[SGLT2阻害薬の併用を除く、糖尿病や高血圧を含むすべての併存疾患に対する各地域における標準治療]への追加治療として1日1回投与された。同試験は、駆出率が40%超の心不全患者を対象に実施された最大の臨床試験であり、6,263例の患者が実薬群とプラセボ群に無作為化された。
フォシーガ錠5mg フォシーガ錠10mg 添付文書 医療従事者向けガイド 患者向医薬品ガイド (医薬品医療機器総合機構)
関連情報
- SGLT2阻害薬「フォシーガ」が心腎イベントの発現率を低下 慢性腎臓病(CKD)に起因する医療費を減少
- SGLT2阻害薬「フォシーガ」が左室駆出率にかかわらず心血管死・心不全悪化を抑制 SGLT2阻害薬のより広範な使用を支持
- SGLT2阻害薬「フォシーガ」が心不全患者の心血管死リスクを抑制 すべての左室駆出率で死亡リスクを低下
- 糖尿病薬のSGLT2阻害薬のうち腎保護作用がもっとも強いのはどれか? 日本人のリアルワールドデータ分析