【新型コロナ】新規抗ウイルス抗体の創出に成功 変異型を含む広域コロナ属ウイルスの治療薬として期待

2022.02.16
 医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)は、塩野義製薬と共同で、新型コロナウイルスを含む近縁コロナウイルスに関する新規抗ウイルス抗体の同定に成功したと発表した。

 この抗体は、他の多くの抗体医薬とは異なり、変異が入りにくい部位を標的とし、オミクロン株を含む種々の変異株に反応するという。

新型コロナに感染した細胞のみを特異的に排除 種々の変異株に反応

 医薬基盤・健康・栄養研究所が、塩野義製薬と共同で、同定に成功した抗体は、ウイルス粒子そのものではなく、ウイルスの供給元となる感染後の細胞を標的とし、感染者の免疫応答をサポートして、新型コロナウイルスに感染した細胞のみを特異的に排除する。

 また、他の多くの抗体医薬とは異なり、変異が入りにくい部位を標的とし、オミクロン株を含む種々の変異株に反応する。変異が少ない部位は多くの類縁コロナウイルスにも共通の構造を有することから、得られた新規抗ウイルス抗体は、変異型を含む広域コロナ属ウイルスに広く薬効を示すことが期待されるとしている。

 現在、臨床応用されている抗体カクテルなどの中和抗体や、経口用として開発中の低分子化合物は、いずれも軽症からの感染者を対象としている。一方、今回同定された抗体は、中等度以上の重症化リスクの高い患者に投与する抗ウイルス抗体医薬としての開発や、今後起こるかもしれない類縁コロナウイルスのパンデミックの発生時にも広く緊急対応できる「広域型抗ウイルス抗体医薬」としての開発が期待される。

従来の作用機序(中和活性)と異なる新たな作用機序(ADCC活性)により感染細胞を破壊する

出典:医薬基盤・健康・栄養研究所、2022年

ウイルスの供給元となる感染後の細胞を標的に 広域型抗ウイルス抗体医薬として開発

 両者はこれまで、新型コロナウイルスを含む近縁コロナウイルスに広く交差反応性を示し、これまでの中和抗体とは異なるメカニズムで働く有効な治療抗体医薬の創製を目指して共同研究を行ってきた。

 その結果、同研究所の「エピトープ均質化抗体パネル」技術を用い、感染細胞に存在するウイルススパイク(S)タンパク質の中で、アミノ酸変異が頻繁に生じる受容体結合ドメイン(RBD)とは異なる部位(エピトープ)を認識し、ADCC活性を重視した抗体の同定に成功した。

 エピトープは、抗体が結合する標的部分。異なる抗体は、それぞれのエピトープに結合し異なる機能を示す。同研究所が特許技術を有するこのパネルは、標的上のすべての機能エピトープ領域を網羅した、最小個数の抗体群をあらわすもの。

 細胞や病原体に抗体が結合すると、その抗体のFc領域を認識するFc受容体を持ったNK細胞やマクロファージといった免疫細胞が呼び寄せられ、抗体が結合している細胞や病原体を破壊する。この抗体の活性がADCC活性だ。

 研究は、同研究所創薬デザイン研究センターおよび抗体デザインプロジェクト プロジェクトリーダーの永田諭志氏、同バイオ創薬プロジェクト プロジェクトリーダーの鎌田春彦氏らによるもの。「製薬会社とも連携のうえ、さらなる研究を進めてまいります」と、研究者は述べている。

医薬基盤・健康・栄養研究所 創薬デザイン研究センター
医薬基盤・健康・栄養研究所 創薬デザイン研究センター 抗体デザインプロジェクト

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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